二人目は母親をガンで亡くしてしまった長男、彼は不遜な男だった。その母親も昔ツナグに依頼して亡き夫に会っていたのだ。不遜な男も死んだ母親に会えることで憎まれ口を叩きながらもツナグの若造の歩美に感謝の言葉をかけた。
三人目は親友だった御園奈津を事故で亡くしてしまい、それを自分の仕掛けた氷の罠の上で自転車で滑ったため死なせてしまったと悔やむ女子高生の嵐。嵐と奈津は演劇部員、文化祭で演じる「鹿鳴館」に向けて練習する中で、主人公の役をめぐって立候補する二人だったが、奈津が選ばれて落ち込む嵐。そして奈津が毎朝通る道に水道水を流して夜中に凍らせて奈津が自転車で来た時に滑ってしまうことを狙った嵐。そして奈津は本当にそこで滑って死んでしまう。そんな奈津に一言聞いてみたくて、そして謝りたくてツナグに会うことを依頼した。ツナグが高校生で、それも同じ高校のアユミ君だったことに驚く嵐、それは歩美にとっても同じだった。同じ高校に通う女子から依頼があるなんて思ってもみなかった。そして奈津はツナグの歩美に最後に伝言を託す。その伝言が「道は凍っていなかったよ」、奈津は嵐が水道をひねって仕掛けをしていたことを知っていたのだ。それでも一晩中知らないふりをして話をした奈津、最後に取り返しのつかないタイミングで歩美を通して伝言した奈津、最後に一生悔いがのこるやり方で仕返しをした奈津。悲しいやら悔しいやら、悔やんでも悔やみきれない嵐だった。
4人目は突然の出会いから同棲することになった女性は日向キラリ、男性は土谷、あまりに素直で純粋なキラリに惹かれる土谷、しかしキラリは自分の生い立ちを話すことはなかった。ある日、結婚を決意した土谷はキラリに結婚指輪を渡す。そしてキラリは失踪した。連絡の取りようもないキラリは7年経っても帰ってこない、土谷はツナグに会いたい、と依頼した。果たしてキラリは死んでいた。本名は鍬本輝子といった。出身は熊本、家出した実家に土谷との結婚を説明しようと乗船したフェリーが沈没したのが死因、しかし名前が違うので土谷は気がつかなかった。ツナグが再会をアレンジしてくれなければ一生土谷はキラリを探し続けたかもしれない。キラリはそう思って再会をしたのだ。
そして最後の話でツナグの謎が明かされる。歩美にツナグの役割を譲ったのは祖母だった。そして歩美の両親が死んでしまった理由も明かされる。
ストーリーはよく練られていて、連作短編集なのに最後のエピソードによってしっかりと一つのお話になるように作られている。同じ筆者の「ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ」は女性っぽい話だと感じたが、このツナグはそうでもない、というよりずっと洗練されている。嵐の話と土谷の話が秀逸だった。
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