目次を紹介すると、種、遺伝と変異、減数分裂、性の決定、進化の仕組み、生命の起源と初期の進化、進化パターンと大絶滅、生物多様性、相同とは、免疫、エイズとアレルギー、個体発生と系統発生、代謝と循環、脳と心、種間競争とニッチ、人類の起源、現代人への道、がんの生物学、生態系、遺伝子、形態形成、寿命と進化、生物学に興味がなくても面白そうである。
進化:生命誕生は38億年以上前に遡る。メタン、アンモニア、水蒸気、水素の原始大気に放電することでアミノ酸などの有機体が作られることを実験で証明したのは1955年、ミラー。最古の化石は35億年前の熱水噴出口で生息していた好熱細菌、最初の15億年は原核生物だけの世界が続いた。原核生物の共生が真核生物への進化の道を開き、多細胞動物が生まれた。10億年前にうまれた多細胞動物は6億年前から一気に多様化、先カンブリア紀の末にエディアカラ生物群という無脊椎動物群が出現した。生物群集は地球環境の激変で大規模な同時絶滅を起こす。5.5億年前の先カンブリア紀末、ペルム紀末の2.5億年前のものが最大規模と言われる。ついで白亜紀末の6500万年前の恐竜絶滅が有名であるが、前二者は超大陸の形成と分裂、後者は隕石である。大絶滅後は生態系の空白を埋めるべく多様化が進む。
生物種は学名が付いているものが150万種、実際にはその10倍以上の種が生息すると言われる。昆虫類が最大で3000万種ほどもいると推定する学者もいる。特定の分類群に偏って多様性があること、特定地域に偏って多様性があることは2大難問であり原因は不明である。一般には資源量が多く、太陽エネルギーが多い熱帯雨林に多様性があると言われるが、生態系の完全破壊を免れてきた地域であることも原因とされている。
生物の個体が生まれる個体発生とその生物の進化の系統をたどる系統発生は並行性があるのではないかと言われる。脊椎動物の個体発生は染色体数がnの未受精卵に精子が合体して2nの受精卵になるところから始まる。動物の系統発生で、最も原始的なアメーバなどの原生生物はnの細胞からなる。少し高等なゾウリムシなどの原生生物は2nの細胞を作れる。受精卵は分裂を開始し、胞胚さらには原腸胚になるが、これはヒドラなどの腔腸動物の成体と似ている。原腸体は中胚葉になり、体腔が発生、発生の仕組みはウニなどの棘皮動物と同じでき方である。発生がさらに進むと体の背中側に脊索が出現するが、これはナメクジウオなどの原索動物にも見られる。このように個体発生と系統発生(進化)の並行性の原因はよくわかっていない。祖先が持っていた個体発生のパターンからの逸脱は生物にとっては難しいため個体発生の後期に新しい形質を付加するという方法を取るのだろうと推測されているに過ぎない。
結構面白いのだが、この本の言いたいことは既存の教科書のつまらなさである。分野別に記述されていて、その分野を見れば正しいことが書かれていても、分野をまたがる現実の問題には解を見出しにくい構成になっていると指摘、もっと面白い教科書にすれば学者になる生徒も増えるだろう、という主張である。
新しい生物学の教科書 (新潮文庫)
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