鳩山由紀夫の「市場原理主義批判」での間違いに関する指摘。一つ目はそもそも日本に市場原理主義は全く存在していないこと、小泉改革では市場力や自由化についてはいかなる拡大もなされていないという。実行したのは郵政民営化と銀行システムの一新であった。同時に起きたことは労働市場の二極分化、非正規労働者の増加である。二つ目は、2002年から2007年の日本経済拡大は3分の2は輸出に依存、相手先は中国と米国であった。さらに日本国内需要は弱く、その理由はデフレと賃金低下、そしてサービス業分野での生産性と効率向上不足。製造業は日本GDPの2割を占めるに過ぎず、7割を占めるサービス業の自由化や改革、活性化に力をいれるべきである、という主張。日本での労働者派遣法の改正は企業生産性向上に一時的には寄与したかもしれないが、世帯収入は減少し消費支出は減退、内需の脆弱化が進んだ。
金融危機を起こした要因は次の四つ。①欧米での金融機関の不正行為。②金融機関に対する国内および国際的規制の欠陥と監督上の不備。③弱いインフレ傾向とずさんな金融政策。④世界的に豊富な流動性を伴う急速な経済成長が国際貿易や収支に史上空前の格差をもたらした。これらの異なる4つの要素が信用経済にバブルを生じさせ、崩壊に導いた。4つの要因の根底には1944年の世界経済システムである、GATT、IMF、世界銀行、WTOがあった。金融危機後、ドル支配は終焉を迎え、人民元の切上げ時期が注目されている。中国政府は突如として驚くような切り上げを行う可能性があり、現在の経済危機を解決するチャンスにもなる。
原油価格の高騰は環境問題の解決策となる可能性がある。
1990年以来、アメリカイギリス、ドイツ、イタリヤ、日本では貧富の差が拡大した。その要因。①株式や不動産を保有する裕福な階層にさらなる利益をもたらす株式と不動産価格の上昇が見られる。 ②BRICsなど発展途上国、新興国の台頭で自由競争が進む経済では欧米諸国における未熟労働者の賃金を引き下げた。 ③ITが熟練した知的労働者の所得を増加させた一方、未熟練労働者は職を奪われ収入が減少した。 ④企業経営者の報酬が増えた。
いまやすべての先進国での問題は不公平な格差解消である。
示唆にとんだ指摘と主張である。グローバル資本主義は本当に変革を成し遂げられるのであろうか。
変わる世界、立ち遅れる日本 (PHP新書)
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