ワインを作る菊村の家に育った真紀は父勇造がすすめる結婚に反対できず、趣味が合いそうにない誠と結婚し、娘の伽奈がいる。三十歳を過ぎたばかりの真紀は自分の人生に他の選択肢があったのではないかと考えている。夫の誠はギャンブル好きで、借金をつくっては家族を困らせている。誠との結婚を進めた勇造は誠がつくってしまう借金をなんとか面倒みているがもう愛想が尽きかけている。
もう一人の主人公は真紀よりも10歳程度年上の俊子、了平という夫がいるがこちらも全くそりが合わず、10歳年下の岩崎達士と付き合っている。俊子は自分の子供たちが育ったら独り立ちできるように「ジャルダン・ダクリマシオン」というブティックを町で経営している。
物語は九州の小さな五条村が舞台、真紀の住むその村に真紀の中学時代の同級生山岡慎一が医師として赴任してきた。母と二人暮らし、真紀は慎一に心が惹かれる。五条村を取り巻く美しい自然が描かれる。菅生連山、桜、菖蒲園、鯉釣り、蛍狩り、夏祭りには慎一のアイデアで薪能を催すことになる。出し物は「松風」、慎一が真紀のぜひ見て欲しいという出し物、松風では女性の恋する情念が表現される。真紀は新一の思いを知る。
俊子と達士の逢瀬も様々な場所を訪れる。コスモスの咲く公園、薪能が行われる清泉神社、そして真紀が初めて自宅のワイン農園で開いたワイン祭り、露天風呂、そして紅葉の季節には櫨の木の下での紅葉狩りである。元旦には太宰府天満宮、蝋梅、梅と一年の四季の移ろいと草花が真紀と俊子の暮らしと恋の行方を彩る。
自由に生きることを決意している俊子ではあったが、達士は不慮の事故で死んでしまう。真紀は慎一に愛を打ち明け二人は結ばれる。
菊村家には真紀の祖母であるタカと飼い犬のカブトがいる。そしてワイン造り職人である潜爺さん、慎一と真紀の中学時代の小川先生など魅力的な登場人物がでてくる。四季の花と五条村の自然とともに、田舎に生きている素朴で正直な人たちが活き活きと描かれていて、真紀と俊子のそれぞれの夫たちのだらしなさを綺麗に覆い隠すようである。
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