1921年、兵庫県三木市に生まれた筆者、花丸さんは1941年徴兵され騎馬隊兵として入隊、中国に赴任した。その徴兵検査から入隊、出征、到着、兵隊生活、戦闘、衛生兵としての働き、現地の人達との交流、敗戦、帰還、そして終戦後の中国現地の人たちとの再会の記録である。
筆者の人の良さがにじみ出る日記である。また、戦地で出会う上官や同年兵、同僚にも恵まれていたのか、苦しい思い、痛い思いをそれほど経験せずに済んでいるのも、本人の人柄からであろうか。そして運もよく敵弾を受けてもベルトのバックルで銃弾が受け止められ軽症ですみ、さらにはその怪我のおかげで最前線から離れて、多くの戦友が戦死する中を生き抜いた。
背が低く、騎馬兵には向かないと徴兵検査係には止められたが、徴兵責任者に直訴する手紙を書くなど、意気は盛んであった。また、軍務成績が良く、新兵教育期間には60人中で2番だったためか、二等兵から終戦時には兵長から伍長に昇進している。それでも前線での戦いは悲惨であり、多くの戦友や上官を目の前で亡くし、衛生兵であるため看取った経験を持つ。
また現地の中国人には種痘、予防注射、怪我の治療、病気の診察などを行い、現地住民からも慕われている様子がよく伺える。戦後の再会時には数人の訪問者に2000人もの出迎えを受け歓迎され、現地でも日本でも報道されたとのこと。喜ばしい限り。
こうして一冊の書籍にすると、1時間ほどで読めてしまうが、その経験は入隊から日本への帰還まで含めると6年ほどにも亘る苦労の連続であったに違いない。もっと悲惨な経験をした兵隊も多かったには違いないが、「花丸兵長」というある意味で良いお名前も相まって、本来大変悲惨な戦争体験記録が、良い出会いがあった戦争記録、という印象を抱かせる読後感をもって読める戦争体験日記となっている。