意思による楽観のための読書日記

神様のカルテ 夏川草介 ****

長野県松本平にある民間の本庄病院には400床のベッドを持つ比較的大規模な病院である。キャッチコピーは「24時間365日対応します」、このためこの病院に勤める医師と看護師たちの勤務は厳しい。栗原一止(いちと)は本庄病院に勤務し始めて5年目の内科医だが、ここが初めての職場でもある。大学病院の医局を選ばずに、この民間医院を選んだという、医師としては変わり者と言われているが、本人は患者に毎日直に接して痛みを和らげ、怪我を治療することに喜びを感じている。

同じ松本平には信濃大学付属病院病床数600という大病院があるのだが、栗原医師はあえて本庄病院を選んだということ、相当の変わりものであろう。医師には大狸、古狐などとあだ名されるベテラン医師がいるかと思えば、次郎という大男で一止と同じ年周りの若い医師もいる。そして看護師にも東西というやり手の看護師から、水無さんという可愛くて働き者の看護師もいる。

一止の住まいが元旅館のボロアパート御嶽荘で、各部屋には桔梗の間、桜の間などという名前がついている。そのアパートの住人は画家を目指す「男爵」、大学院で博士を目指す「学士」がいて、一止の飲み仲間である。

結婚して1年目のプロ山岳カメラマン若妻ハルがいる。ハルも元はこのアパートに住んでいた住民ではあったが、ある雨の日に飛び込んできた所を一止、男爵、学士に迎えられ、一止に優しい声を掛けられたことから3年の年月を経て結婚したのである。

こうした登場人物たちが病院に入院して闘病している患者たちと織り成すちょっと泣ける物語である。テーマはシンプル、患者のためになる心からの医療行為とは何か。薬と注射で寿命を最大限伸ばすよりも、死期が迫った患者の望みを叶えてあげること、これが本当の医療行為であるという。

その物語の中に、地域医療が抱える問題、大学病院の医局が抱える問題、終末医療の問題、そして人間の夢と希望について。これを地方病院である本庄病院を舞台にストーリー展開する。患者をめぐる小さなエピソード、一止とハル、次郎と水無さんの恋のエピソードなどが彩を加える。

書店員が選ぶベストtenにはいった作品である。


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