意思による楽観のための読書日記

お金の流れが変わった! 大前研一 ***

アメリカ経済が世界経済をリードする時代はリーマンショックを潮目にBRICsからVITAMIN(ベトナム、インドネシア、タイとトルコ、アルゼンチンと南アフリカ、メキシコ、イランとイラク、ナイジェリア)に移行した、という主張。

アメリカのそもそもの間違いは冷戦終了後国内のユダヤ人に配慮してイスラムとの対立に舵を切ったことであり、対立の先に救いはなく答えもない。ヨーロッパはイスラム勢力との対立が1000年以上ありこれ以上戦うのは生産的ではないという感覚があるが、ブッシュ父以降の大統領は誰にも頼まれていないのに消耗し尽くしている。世界の警察官のイメージから脱し切れないままにリーマンショックを経験して、失業率が高止まり、量的緩和策も限界に来ている。

G2の一方の国中国でも一党独裁の矛盾に国民が気づき始めている。毛沢東最大の貢献は共産党による土地支配だった。農民から召し上げた土地を商業地に転用、この差益で繁栄してきたのが近年の中国経済であるという。土地バブルは政府の隠れた収入を増加させる仕組みがある限りは政府は痛みを感じない。中国共産党は日本の植民地支配にピリオッドを打たせた功績を人民にアピールしてきたが、日本を追い出したのはアメリカであり、山奥にいた共産党は何もしなかった、という意見が出始めた。中国政府はイスラムとの対立を避け、イスラム勢力が持つ資源確保に向かっている。共産党が怖いのは不満を感じた人民の怒りが政府に向くことである。

世界中にある余剰資金は8000兆円、そのうち4000兆円程度がホームレスマネーとなり国境を超えて投機マネーとして世界をさまよっているのが現状。少子化、高齢化がすすみ経済発展が見込めない先進国には向かわず、VITAMIN諸国にこれらのホームレスマネーが流れこむのである。日本は外国資本を締めだすのではなく、投資を呼び込む方向に転換できなければ経済の方向は縮小でしかない。外国から見て魅力的な企業の例を上げれば、三菱自動車、パイオニア、JVC・ケンウッドという企業、技術力があり世界でそれが通用するのに負け組になっている。

日本企業が行っているビジネスモデルの中で、輸出可能で価値が高いものはたくさんある。なかでもJR東日本の駅ビルショッピングセンターとSUICAのパッケージは価値が高い。鉄道は儲からない、のではなく、パッケージにすることで大きな利益を産む。日本独特の私鉄モデルもある。海外にはこのように多くの私鉄が大都市のインフラを担っている例はない。私鉄は都市にスラムを作らないことにも貢献している。私鉄があることで半径50キロの範囲に人々を分散、中間所得者層は夜間は郊外に帰るので周辺にも学校や病院が建つ。こうした私鉄モデルは海外にも輸出可能ではないかと言う。鉄道をシステムとしてパッケージにして販売することが肝要である。

東京都内の容積率制限を緩和することで建て替え需要が発生し経済が潤うとも提案。東京山手線内側の平均が2.6階建て、東京全体では1.4階建てであり、パリの6階、NYCの14階に比較して圧倒的に低く、江戸時代を引きずっている。日照権という魔物に眼をつぶれば大都市での発展余地はまだまだあると指摘。さらに湾岸地区を近代都市にふさわしいインフラ整備を行う。上下水道、電気通信の地下埋設、立体交差、災害対応、液状化対応を行い湾岸地域に100万人の新たな地域を創出できるという。

経済施策は行き詰まっているように見えるが、少し目先を変えればまだまだ余地はある、という具体的な提案である。
お金の流れが変わった! (PHP新書)

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