ある日13秒間の時間の歪が世界レベルで発生したため、13秒の間に死んでしまった赤ん坊からシニアの男女13人の人たちが、パラレルワールドのような別空間に放り出されて大変な目に遭う、という話。歪が発生した36日後に、その歪をもとに戻す動きがあり、パラレルワールドに放り出された人たちの中で生き延びた人たちだけがもとの世界に戻れる。
別空間では大雨、大地震、地割れなど想像を絶する大変動が起きて、13人が彷徨うことになる東京が一面の瓦礫で覆われていく。13人の中には親子心中した母と子、殉職した警官の兄弟、交通事故死した会社の上司と部下、賭場で殺されたヤクザ、落ちてきた鉄骨の下敷きになった人と助けられた人など様々である。「こんな目に合うのはなぜなんだ」という気持ちから自暴自棄になってしまう人がいて、一方で13人しかいないのだから協力して生き延びようとリードする人もいる。現実世界では理解できなかった兄弟同士の思いや、別世界で出会った男女の間に恋心も芽生えたりはするものの、壮絶な嵐や大地変動がそうした思いをかき消すように連続して起きる。
リーダー的存在になる警察官の男は、総理官邸に行けばこうした災難に対応できる設備や非常用食料も備蓄されているはずと、13名をリードする。そうした間にも数名の命は失われていく。総理官邸には13秒の時間ひずみに関する機密文書が残されていて、歪が生じた時刻の36日後にひずみを正す動きが起きるはずだということがわかる。13秒間に死んだ人だけがこの別世界に放り出されたと推理したメンバーの中には、その36日後の13秒の間にもう一度死んでしまえばもとに戻れるはずだと主張するものがいて、やはり生き抜くべきだと主張するグループが分かれることになるが、そんなメンバーの考えを打ち消すような大きな大変動が全員を襲う。
最後まで生き抜いたメンバーは歪がもとに戻された瞬間、もとの世界に戻れるが、途中で死んでしまったメンバーは元の世界でもやはり死んでいるという結論。第三次世界大戦や地球規模の災害、大隕石、疫病などで全人類が死滅したあと、生き残った人たちがどう生き延びるか、というSFのお話は数多い。本書の特徴はとのスピード感であり、パラドックスを正す動きにどう対応するかが生死を分けるという着想。背景に戦争や環境問題など人間のおごりなどへの発想はないのは少し物足りない気もする。