意思による楽観のための読書日記

分身 東野圭吾 ***

クローン技術により同じ遺伝子情報を持ち一年違いで生まれた二人の女性(鞠子と双葉)が東京都北海道で別々の家族として育つ。成長して大学に入った頃、二人のうちの一人がテレビに出演したことで、見た目が瓜二つの二人を結びつける事柄が出来して、自分の出自に疑問をそれぞれ持った二人が自分のルーツを探るために北海道と東京を訪れるという話。

ひねりが入っているのは、ハンチントン舞踏病にかかっていた大手出版社の跡取り息子が子孫を残すためにクローン技術で生まれた二人を利用しようというくだり。ハンチントン舞踏病は発病が遅いので、子供がある程度大きくなってから出ないと罹病に気が付かず、気づいた頃には病気の遺伝子を引き継いでしまった子供が次の子孫を残すために根絶できにくい遺伝性の病気であるというところ。もう一つは、女性が大好きな小説「赤毛のアン」が散りばめられているところかな。ドッペルゲンガー症候群というキーワードもあった。もう一人の自分がこの世の中に存在するという幻想を抱くこと。読者層として、クローン技術や遺伝子からみの情報に関心が高い人たち、赤毛のアンのファンなどは、どんどん読み進みたくなる気分になるだろうなと思う。

鞠子の章と双葉の章が交互に描かれていて、読み進めるうちに読者はDNAの螺旋階段を登るかのように二人の生い立ちを知ることになる。そしてエンディングで鞠子と双葉は出会う。お互いをはっきりと意識しながらの出会いでおしまいとなる。体外受精、代理母、クローン技術など現在の特に米国などでは当たり前に行われていることではあるが、「分身」が発刊された1993年頃には新鮮だったと思う。本で読むよりテレビドラマ版の方が印象に残る作品なのではないかと思うがどうだろうか。

分身 (集英社文庫)


↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

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