意思による楽観のための読書日記

時の渚 笹本稜平 ***

面白いけれども、ちょっとできすぎた偶然に思える結末。ヒントは前半部分から示される。本庁警察の元刑事茜沢は、余命半年という元池袋のヤクザ松浦から自分が赤ん坊の時に人に託してしまった息子の探索を依頼する。松浦は35年前生まれて間もない息子を池袋の公園で見知らぬ女性に渡してしまったのだ。女性は要町で「金龍」という居酒屋をやっていたというユキちゃんという女性。依頼された茜沢も35歳、とくればだれでもいろいろ想像できる。ユキちゃんの本名は原田幸恵、鬼無里の旅館の娘だったことがわかる。一方、茜沢が刑事を辞めるきっかけになった殺人事件で、茜沢は妻と子供を殺人犯にひき逃げされている。被疑者は江戸川区会議員駒井、これも35歳。両親を殺した上で逃亡途中に茜沢の妻子もひき殺した疑いなのだが確証が得られず無罪となっていた。新たな殺人事件の容疑者に再び駒井が浮かび上がった、と連絡してきたのは元茜沢の上司だった真田。

誰が松浦の息子なのか、駒井は殺人犯なのかなどがストーリーの柱だが、茜沢が幸恵のルーツを探るプロセスで知り合う人物達が暖かく、これがストーリーを包んでいた作者の人の良さを示していると感じる。「天空への回廊」「太平洋の薔薇」に比べるとスケールは小さいが、親子の絆を描いた本作品は、作者のもう一つのストーリーテラーとしての才能を示す。読後の印象は悪くない。
時の渚 (文春文庫)
未踏峰
駐在刑事 (講談社文庫)
不正侵入 (光文社文庫)
太平洋の薔薇 (上) (光文社文庫)
太平洋の薔薇 (下) (光文社文庫)
還るべき場所
フォックス・ストーン (文春文庫)

読書日記 ブログランキングへ

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「読書」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事