意思による楽観のための読書日記

長い腕 川崎草志 ***

「疫神」という小説を読んだ時、中途半端に終っていて、それでも物語の設定や仕掛けられたプロットに作者の才能を感じた。「疫神」では、死んだ二海夫婦の果たすべき役割は何だったのか、その子供で遺児になってしまったあーちゃんはどうなるのか、登場したエミリーには同姓同名の詩人がいたという設定なのだが、それ以上の深堀りはなかった。桂也はその後どうなるのか、読者は知りたいがなんの説明もない、尻切れトンボなのである。もっと面白いお話をかけるはずなのに、という思いから、横溝正史ミステリ大賞を受賞したという本書を読んでみた。

結果から言えば「面白かった」もっと読んでみたい。主人公が勤めるゲーム制作の現場やゲーム制作業界、PCとインターネットに詳しい作者が、現場感を出すのに成功していて面白いこともある。PCゲームという現代の時代設定と、郷里の愛媛の田舎のオドロオドロしい設定、これは横溝正史の世界でもある。

登場人物の島汐路は東京のPCゲーム制作会社に勤めるスタッフ、会社の同僚が謎の死を遂げる。ビルからの墜落死だったが、汐路は小さい頃に両親に死なれその原因がやはり墜落死、ショックを受けた。そして郷里の愛媛に暮らす姉が勤める中学校で生徒が同級生を射殺するという事件があったことを知らされる。汐路が両方の被害者が同じアニメキャラを身につけていたことから、同じ原因があるのではないかと疑うが、愛媛と東京、離れた場所で可能性は薄いのではないかとは思うがどうか。そして郷里の町の殺人犯罪発生率が異常に高いことを知り、会社をやめるつもりだった汐路は郷里に帰って確かめてみることにする。

郷里の町は古いしきたりや旧家が今でも勢力を持つような田舎。島の家はそうした有力者の一族だった。そしてその町には呪いのような歪みが町の中に今でも存在しているような気がする。ストーカーのように汐路の姉につきまとう男は松原。島一族の西の家に対応するように存在する東の家、そしてそこに住む汐路の従姉西英子と再会する。そして殺された女子中学生と殺人を犯した同級生と一緒にホームページを立ち上げていたという男子中学生村上祥一郎を通して、殺人にまつわる謎を解いていく。

そして殺された女子中学生達がメールのやり取りをしていたケイジロウの存在を知る。さらにそのケイジロウは汐路の知っている従姉西英子ではないかと疑いを深める。なんてこと、汐路は西英子の家に忍び込む。そこで見たのは英子の弟で汐路の従兄弟の狂った姿だった。そして汐路は自分の両親の墜落死の真相を知ることになる。

このストーリーとその背景、過去の怨念、早瀬という愛媛の片田舎の町、続編を期待するなというのが無理、やっぱりにらんだ通りこの作者、才能の持ち主だ、早速続編を読んでみようと思う。


読書日記 ブログランキングへ

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「読書」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事