意思による楽観のための読書日記

新撰組血風録 司馬遼太郎 ****

新撰組のメンバー近藤、土方をはじめ沖田、篠原泰之進、伊東甲子太郎、芹沢鴨、武田観柳斎、山崎蒸、加納惣三郎、鹿内薫、井上源三郎、谷三十郎、富山弥兵衛、大林兵庫をそれぞれ主人公にして15編の異聞集にしてみた、という小品集。新選組は幕府を守るための人切り集団であり、池田屋事件では京都に潜伏する佐幕派にとっての過激派である長州の尊王攘夷論者や不逞浪士の取り締まりにあたっていた。新撰組の中の規律を守るための厳しい戒律や、平から伍長や10あったという組頭、副長、参謀、局長という階級をこしらえてモラルを維持していた。お話の中では組の戒律に違反したということで切腹や斬殺される組員が沢山いたかのように描かれている。僕の京都の母は今でも新撰組のことを良くは言わないが、これは新撰組実在当時からのことで、京都の人たちはそれを今でも言い伝えているということ。長州のお侍はかくまっても人きり集団である新撰組には陰でイケズをする、ということ。京都以外の人たちが新撰組をなにかスター扱いすることを苦々しく思っている京都人は多いということを京都への観光客は知っていた方がいい。

血風録ではそれぞれの組員の人間性に迫るような話題が提供される。刀にかける近藤や沖田、斉藤、土方の考え方(虎徹、菊一文字)、女性に接する機会がなかった沖田の女性観と近藤、土方の沖田への思いやり(沖田総司の恋)、などが面白く紹介される。薩摩藩と長州藩の幕末における立場と考え方の相違と関係の経緯が良くわかるように描かれていて幕末の歴史の勉強にもなる。話の中にはその他の組頭であった、斉藤一、永倉新八、藤堂平助、鈴木三樹三郎、原田左之助なども登場するので、さながら新撰組オールスターキャストである。新撰組メンバーにも思想性はあったと思うが、国を守る、という抽象的なレベルなのか、この際、国を開いて諸外国の先進技術を入れて国を発展させようという開国派の考えを聞いて理解しようとしていたのか、それとも侍になれない階級の郷士たちの吹きだまりにすぎなかったのか、そのあたりは良くわからない。時代背景から貧乏な生活があって同情もできるが、浪人生活がいやで腕に覚えがあるメンバーが集まって人を切っては京都で威張っていただけ、という気がしてならない。新撰組は僕も好きになれない。
新選組血風録 (角川文庫)

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