測位衛星 米運用のセンサー搭載
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2日午後5時30分、測位衛星「みちびき6号」を搭載したH3ロケット5号機を、鹿児島県・種子島宇宙センターから打ち上げました。みちびき6号は予定の軌道に投入。今後、赤道上空の静止軌道に半月かけて配置される予定です。
みちびきは、米国が運用する全地球測位システム(GPS)を補完・補強するために日本が導入した準天頂衛星システムを構成する衛星で、内閣府が運用しています。
みちびき6号には、2020年に日米政府間で交わされた書簡に基づいて、米国の宇宙状況監視(SSA)センサーが初めて搭載されました。同7号にも搭載されることが決まっています。
SSAセンサーの目的について内閣府宇宙開発戦略推進事務局の三上建治参事官は「衛星への衝突によるリスクに対応したスペースデブリ(宇宙ごみ)等の宇宙物体を観測するもので、米国政府によって運用される」と説明しました。
準天頂衛星システムは18年に4基体制で本格運用を開始。政府は、GPSなしでも日本周辺で測位可能な“日本版GPS”に必要な7基体制を目指し、25年度内に5、7号機を打ち上げ、26年度から運用開始を計画しています。将来、どの1機が故障しても、測位機能を維持できるよう11機体制の実現を目指しています。
解説
高精度の位置情報 軍事利用の懸念も
みちびきの機能は、カーナビや携帯電話、測量などの位置情報に使われるGPSの補完と補強です。
現在、4機体制のみちびきは、他国の測位衛星によるGPSと一体で利用できるため安定して高精度の位置情報を確保できます。また、みちびき独自の補強信号を受信できる専用機器があれば、GPSを上回る、誤差数センチメートルの精度で測位することなどもできます。
こうしたみちびきの測位情報によって、人や車などの位置情報、地図作成、物流、農業、建設、漁業、災害情報発信など、さまざまな分野で利便性の向上が期待されます。
一方、負の側面もあります。米軍や自衛隊は、ミサイルや無人軍用機の誘導にGPSを利用しており、日米同盟強化の観点から両政府はGPSと準天頂衛星システムの連携を位置づけています。防衛省は、目標への命中精度の向上、戦場認識・戦場管理に活用できると分析しています。
みちびきは、GPS信号への妨害電波などの発生時に政府が認めた利用者(防衛省、自衛隊、海上保安庁など)だけが使用できる、暗号化された「公共専用サービス」を配信します。
“日米同盟強化”の名の下、将来的に米軍がみちびきの公共専用サービスの利用者となる懸念があります。さらにみちびき6、7号機に搭載される米国が運用するSSAセンサーについては、米軍が軍事目的で利用する可能性も考えられます。
日本の衛星が米軍による軍事利用や、兵器の高性能化につながらないよう、国民的な議論と監視が必要です。(原千拓)
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