2月27日から始まる定例議会での予算審査に向けて
学びの旅に行った感想を書きました。
http://blog.goo.ne.jp/the_morning_star/e/939d2ba1df0041ea782b074dae01e720
旅での学びと、私自身の問題意識を交えて、
現在の三原市の財政状況を書き留めます。
◆歳入構成
森先生から活用OKいただいた歳入構成の図。
自治体が自由に使える一般財源と、国の制度などに伴って特定目的で交付される特定財源があることや、一般財源で賄う「標準的な支出」に対して税収が足りない自治体に対して「地方交付税」が入ってくることなどを家計に例えたものです。
三原市の歳入構成はこんな感じ(特に記載のない場合、数字は平成28年度普通会計の決算額をつかっています)。大雑把なくくりで正確ではありませんが、ドーナツ内側の紫のほうが一般財源、左の薄オレンジのほうが特定財源
◆地方税の内訳
総額は139億6362万円。その年の課税分(現年課税)は、徴収率99.4%で市税徴収率として全国で高いほう。三原市民のみなさまにきちんと収めていただいています<(_ _)>
◆性質別歳出
歳出は「性質別」と「目的別」という分類があります。まず「性質別」からですが、最初に出てきた「特定財源」を含む事業費全体と、「一般財源」だけで見た場合、構成がどう変わるかを表してみます。人件費や公債費(借金返済)はほとんど一般財源で賄っているため、一般財源では占める割合が大きくなります。扶助費は子ども手当や生活保護など国の制度により国から特定目的で交付されるものが大きく、一般財源になると割合が小さくなります。自治体財政で、人件費、扶助費、公債費は「義務的経費」と呼ばれ、「自治体が自由に使える一般財源」とは言え、必ず必要な義務的経費が55%を占めています。
◆目的別歳出
社会保障関係の「民生費」と「公債費」が大きな割合を占めています。
◆性質別歳出の20年間の推移(一般財源ベース)
一般財源で賄っている経費が、10年ごとにどう変化しているか見てみます。平成8年は合併前の三原市のみなので、金額が大きく違っています。構成の割合を見ていくと、人件費や建設費が大幅に抑制されていること、その代わり、公債費、扶助費、繰出金が増えていることがわかります。操出金というのは、国保、介護保険、下水道などの特別会計に、一般会計から繰り出しているものです。公債費は15~20年ローンのものが多いので、20年前の大きな建設費の返済が、今の公債費の大きさにつながっていると言えるでしょう。現在の地方債発行が、これから減っていく人口に与える影響を、しっかり考えなくてはいけません。
性質別歳出の10年間の推移をもう少し詳しく見てみます。平成18年を起点に比率で表しています。こちらは事業費総額なので、先程の伸び率と少し違っています。建設などにあてる投資的経費は、20年前に比べて抑制傾向でしたが、平成28年度から市役所本庁舎、消防本部庁舎、清掃工場の補修などに伴い、大幅に増えています。ただし、新庁舎建設事業債、清掃施設整備債などで賄っているため、事業費総額は114.6億円と大きくても、一般財源はその17%の19.7億円です。財政課の手腕でできるだけ有利な起債を選び(種類によって、事業費総額に対する「起債可能率」や「交付税参入率」が異なります)、なんとか一般財源の枠におさめている感じです。しかし、平成30年度も大幅な借り入れ超過となる計画がすでに発表されており、議会としては将来世代への影響を踏まえ厳しいチェックが必要です。整備の時の費用は、起債することで一般財源をあてる金額を減らせますが、後々支払っていく返済費用とランニングコストは、一般財源から賄うことになるので、整備時のことだけ考えていてはダメなのです。
◆目的別歳出についても10年間の推移を見てみます。施設整備(ハード事業)に伴い、大きな山ができています。
◆地方債
それでは、借金について見てみましょう。赤い線が借り入れ、青い線が返済、棒グラフは残高です。残高は、ちょっと専門的になりますが、「臨時財政対策債」の残高が分かるようにしています。これは、本来「地方交付税」として国が自治体に支払わなくてはいけないものですが、国の予算が足りないので「地方で建て替えて借りておいてよ、後で払うから」という約束のもと起債しているものです。H27年、H28年と、返済額が減っているのは、平成7~10年の大きな山分の返済が終わったのかな?と思っていますが、確認していないので単なる推測です。右側の黄色い網掛けのH29年以降は財政推計として示された数値です。今後借り入れを大幅に減らしても、返済は一定水準の支払いを続けていかなくてはなりません。
返済額を少し詳しく見てみます。上のグラフでは、返済額はH27年から減っていますが、下のグラフを見ると「定期償還」(借金をした時点で約束した定期的な返済)はH25年から減り始めていて、H26年は、約束より前倒しで返済する「繰上償還」が多かったことがわかります。「こんなに繰上償還するなんてけしからん」という意見もありますが、私としては、金融機関さんが受け入れてくれるなら、後のやりくりを考え、早めの返済をしていくべきだと考えています。
◆借金が多いと悪いのか?
借金で行う事業により、多くの資産が培われてきました。平成初期にJR線路を高架にしたことで長い踏切待ちがなくなったことなど、利便性が高まったことが多くあります。平成1ケタの頃は多くの公共事業が行われ、いちばん多い平成7年の「投資的経費」は137億円でした。「投資的経費」の推移に、主な事業を書き込んでみました(字が見えにくいですが)。「借金が多いからダメ」ということではなく、整備した道路や施設などによって、市民のみなさんの利便性、暮らしの充実を高めてこれたのか? また、その借金を返済していけるのか?という視点でのチェックが必要なのだと思います。
◆これからのこと
◆歳入はどうなる?
三原市は、10年間の財政推計を毎年更新しながら出しています。作ってない自治体が結構多いので、その点、立派だと思います。予算を組む上で、一般財源がどれくらい確保できるかが重要だと思うので、「これから」を考えるにあたって、まず、一般財源の予測から見てみます。棒グラフの白抜き部分は推計値です。税収には、人口減少が見込まれていますが、増えているのは政府が出している「1%の経済成長」を根拠にしているためです。この点は私は懐疑的で、こんなに増えないのではないか・・という懸念を持っています。しかし、冒頭に書いたように、「標準的な支出」に対して税収の足りない分を補う地方交付税は、税収が減った場合は、逆に増えるという保険機能?が働きます。ですけれども、合併後10年間は1市3町分の「標準的な支出」として国が計算してくれていたのが、10年過ぎたので、段階的に1市分に減っていっているところです。また、政府が地方への配分を減らす意図を持っており、「標準的な支出」を小さくする傾向が見られます。なので、一般財源は減っていく可能性が極めて高いでしょう。
◆歳出はどうなる?
黄色い網掛け部分は推計値です。扶助費、操出金が増えていることを、上の方で書きましたが、今後も増えていく見込みです。
扶助費の内訳はこんな↓感じ。「老人福祉」は少ないですが、下の操出金も合わせて見る必要があります。扶助費全体の約90億円のうち、一般財源の割合は3割程度です。
国保、介護保険、下水道などの特別会計に、一般会計から繰り出しているものです。操出金は約8割が一般財源です。
◆歳入歳出に影響を与える人口構造の変化
少子高齢化という構造変化が押し寄せています。40代の増加は団塊ジュニアが40代になってるからでしょうか?50代60代の減少70代以上の増加は、2025年問題と言われる人口構造の変化を象徴しているようです。ちょうど総合福祉計画の改訂を迎えたところですが、年を取って健康で元気に楽しく日々を過ごしていただけるよう、市としてどうサポートしていけるのか、本当に喫緊・重要な課題ばかりです。(超リアルな数字で良くないかと思いつつ、そのまま使いました)
◆たくさん作ってきた施設の問題
笹子トンネル天井板落下事故が起きて、公共インフラ・公共施設の老朽化がもたらす危険性が広く注目されるようになりました。作った施設は古くなり、手当が必要になりますが、その費用捻出が難しい状況になってきています。三原市内の施設でも、雨漏りするのに予算がとれず職員で応急処置・・という話も聞いてきました。ひどくなってからの対応だとお金も時間もかかるので(私も今、放置してきた虫歯で歯医者にかかり、その状態を切実に味わっています)、早めの修繕で対応するよう、何年前だったか方針変更されました。が、三原市の公共施設全体を考えると「早めの手当でなんとかなる」というレベルの話ではありません。今ある施設をすべて維持していくと仮定した場合の整備費用の試算がこちら。
とても賄いきれるものではないので、30年間で35%減らす目標が決められました。しかし、その目標の根拠は、平成22~26年の施設整備にあてた金額と同程度の費用をかけていく想定での目標値なので、本当にその頃と同じくらいの金額が確保していけるのかどうか、また、施設を減らした後は、経費が減りますが、施設を取り壊したり、集約化(まとめる)したり、早めの保全をしたり、という当面の費用を、どう見込んでいくか、などなど心配しています。
* * *
わ~
とっても長くなりました
また続きを書こうと思います
学びの旅に行った感想を書きました。
http://blog.goo.ne.jp/the_morning_star/e/939d2ba1df0041ea782b074dae01e720
旅での学びと、私自身の問題意識を交えて、
現在の三原市の財政状況を書き留めます。
◆歳入構成
森先生から活用OKいただいた歳入構成の図。
自治体が自由に使える一般財源と、国の制度などに伴って特定目的で交付される特定財源があることや、一般財源で賄う「標準的な支出」に対して税収が足りない自治体に対して「地方交付税」が入ってくることなどを家計に例えたものです。
三原市の歳入構成はこんな感じ(特に記載のない場合、数字は平成28年度普通会計の決算額をつかっています)。大雑把なくくりで正確ではありませんが、ドーナツ内側の紫のほうが一般財源、左の薄オレンジのほうが特定財源
◆地方税の内訳
総額は139億6362万円。その年の課税分(現年課税)は、徴収率99.4%で市税徴収率として全国で高いほう。三原市民のみなさまにきちんと収めていただいています<(_ _)>
◆性質別歳出
歳出は「性質別」と「目的別」という分類があります。まず「性質別」からですが、最初に出てきた「特定財源」を含む事業費全体と、「一般財源」だけで見た場合、構成がどう変わるかを表してみます。人件費や公債費(借金返済)はほとんど一般財源で賄っているため、一般財源では占める割合が大きくなります。扶助費は子ども手当や生活保護など国の制度により国から特定目的で交付されるものが大きく、一般財源になると割合が小さくなります。自治体財政で、人件費、扶助費、公債費は「義務的経費」と呼ばれ、「自治体が自由に使える一般財源」とは言え、必ず必要な義務的経費が55%を占めています。
◆目的別歳出
社会保障関係の「民生費」と「公債費」が大きな割合を占めています。
◆性質別歳出の20年間の推移(一般財源ベース)
一般財源で賄っている経費が、10年ごとにどう変化しているか見てみます。平成8年は合併前の三原市のみなので、金額が大きく違っています。構成の割合を見ていくと、人件費や建設費が大幅に抑制されていること、その代わり、公債費、扶助費、繰出金が増えていることがわかります。操出金というのは、国保、介護保険、下水道などの特別会計に、一般会計から繰り出しているものです。公債費は15~20年ローンのものが多いので、20年前の大きな建設費の返済が、今の公債費の大きさにつながっていると言えるでしょう。現在の地方債発行が、これから減っていく人口に与える影響を、しっかり考えなくてはいけません。
性質別歳出の10年間の推移をもう少し詳しく見てみます。平成18年を起点に比率で表しています。こちらは事業費総額なので、先程の伸び率と少し違っています。建設などにあてる投資的経費は、20年前に比べて抑制傾向でしたが、平成28年度から市役所本庁舎、消防本部庁舎、清掃工場の補修などに伴い、大幅に増えています。ただし、新庁舎建設事業債、清掃施設整備債などで賄っているため、事業費総額は114.6億円と大きくても、一般財源はその17%の19.7億円です。財政課の手腕でできるだけ有利な起債を選び(種類によって、事業費総額に対する「起債可能率」や「交付税参入率」が異なります)、なんとか一般財源の枠におさめている感じです。しかし、平成30年度も大幅な借り入れ超過となる計画がすでに発表されており、議会としては将来世代への影響を踏まえ厳しいチェックが必要です。整備の時の費用は、起債することで一般財源をあてる金額を減らせますが、後々支払っていく返済費用とランニングコストは、一般財源から賄うことになるので、整備時のことだけ考えていてはダメなのです。
◆目的別歳出についても10年間の推移を見てみます。施設整備(ハード事業)に伴い、大きな山ができています。
◆地方債
それでは、借金について見てみましょう。赤い線が借り入れ、青い線が返済、棒グラフは残高です。残高は、ちょっと専門的になりますが、「臨時財政対策債」の残高が分かるようにしています。これは、本来「地方交付税」として国が自治体に支払わなくてはいけないものですが、国の予算が足りないので「地方で建て替えて借りておいてよ、後で払うから」という約束のもと起債しているものです。H27年、H28年と、返済額が減っているのは、平成7~10年の大きな山分の返済が終わったのかな?と思っていますが、確認していないので単なる推測です。右側の黄色い網掛けのH29年以降は財政推計として示された数値です。今後借り入れを大幅に減らしても、返済は一定水準の支払いを続けていかなくてはなりません。
返済額を少し詳しく見てみます。上のグラフでは、返済額はH27年から減っていますが、下のグラフを見ると「定期償還」(借金をした時点で約束した定期的な返済)はH25年から減り始めていて、H26年は、約束より前倒しで返済する「繰上償還」が多かったことがわかります。「こんなに繰上償還するなんてけしからん」という意見もありますが、私としては、金融機関さんが受け入れてくれるなら、後のやりくりを考え、早めの返済をしていくべきだと考えています。
◆借金が多いと悪いのか?
借金で行う事業により、多くの資産が培われてきました。平成初期にJR線路を高架にしたことで長い踏切待ちがなくなったことなど、利便性が高まったことが多くあります。平成1ケタの頃は多くの公共事業が行われ、いちばん多い平成7年の「投資的経費」は137億円でした。「投資的経費」の推移に、主な事業を書き込んでみました(字が見えにくいですが)。「借金が多いからダメ」ということではなく、整備した道路や施設などによって、市民のみなさんの利便性、暮らしの充実を高めてこれたのか? また、その借金を返済していけるのか?という視点でのチェックが必要なのだと思います。
◆これからのこと
◆歳入はどうなる?
三原市は、10年間の財政推計を毎年更新しながら出しています。作ってない自治体が結構多いので、その点、立派だと思います。予算を組む上で、一般財源がどれくらい確保できるかが重要だと思うので、「これから」を考えるにあたって、まず、一般財源の予測から見てみます。棒グラフの白抜き部分は推計値です。税収には、人口減少が見込まれていますが、増えているのは政府が出している「1%の経済成長」を根拠にしているためです。この点は私は懐疑的で、こんなに増えないのではないか・・という懸念を持っています。しかし、冒頭に書いたように、「標準的な支出」に対して税収の足りない分を補う地方交付税は、税収が減った場合は、逆に増えるという保険機能?が働きます。ですけれども、合併後10年間は1市3町分の「標準的な支出」として国が計算してくれていたのが、10年過ぎたので、段階的に1市分に減っていっているところです。また、政府が地方への配分を減らす意図を持っており、「標準的な支出」を小さくする傾向が見られます。なので、一般財源は減っていく可能性が極めて高いでしょう。
◆歳出はどうなる?
黄色い網掛け部分は推計値です。扶助費、操出金が増えていることを、上の方で書きましたが、今後も増えていく見込みです。
扶助費の内訳はこんな↓感じ。「老人福祉」は少ないですが、下の操出金も合わせて見る必要があります。扶助費全体の約90億円のうち、一般財源の割合は3割程度です。
国保、介護保険、下水道などの特別会計に、一般会計から繰り出しているものです。操出金は約8割が一般財源です。
◆歳入歳出に影響を与える人口構造の変化
少子高齢化という構造変化が押し寄せています。40代の増加は団塊ジュニアが40代になってるからでしょうか?50代60代の減少70代以上の増加は、2025年問題と言われる人口構造の変化を象徴しているようです。ちょうど総合福祉計画の改訂を迎えたところですが、年を取って健康で元気に楽しく日々を過ごしていただけるよう、市としてどうサポートしていけるのか、本当に喫緊・重要な課題ばかりです。(超リアルな数字で良くないかと思いつつ、そのまま使いました)
◆たくさん作ってきた施設の問題
笹子トンネル天井板落下事故が起きて、公共インフラ・公共施設の老朽化がもたらす危険性が広く注目されるようになりました。作った施設は古くなり、手当が必要になりますが、その費用捻出が難しい状況になってきています。三原市内の施設でも、雨漏りするのに予算がとれず職員で応急処置・・という話も聞いてきました。ひどくなってからの対応だとお金も時間もかかるので(私も今、放置してきた虫歯で歯医者にかかり、その状態を切実に味わっています)、早めの修繕で対応するよう、何年前だったか方針変更されました。が、三原市の公共施設全体を考えると「早めの手当でなんとかなる」というレベルの話ではありません。今ある施設をすべて維持していくと仮定した場合の整備費用の試算がこちら。
とても賄いきれるものではないので、30年間で35%減らす目標が決められました。しかし、その目標の根拠は、平成22~26年の施設整備にあてた金額と同程度の費用をかけていく想定での目標値なので、本当にその頃と同じくらいの金額が確保していけるのかどうか、また、施設を減らした後は、経費が減りますが、施設を取り壊したり、集約化(まとめる)したり、早めの保全をしたり、という当面の費用を、どう見込んでいくか、などなど心配しています。
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わ~
とっても長くなりました
また続きを書こうと思います
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