くせじゅ文庫

久世樹(Que sais-je?)の画文集です。

《刹那・西湘暮色》

2024-07-05 15:23:20 | 作品
還暦を過ぎて再開したお絵描きも早いもので15年になりました。水彩スケッチから始めて、アクリル、油絵、パステルなどの西洋画材に、水墨、顔彩などの日本画(正確には東洋画)材まで、あれこれ思い付くままに試して来ましたが、いつも使う色ばかりが減って行くように、いつの間にか自分に合った画材だけが手元に残り、多くは棚晒しの状態です。今日の一枚も、そんな好きな画材を使って自由気儘に描いた絵日記の1ページです。

 「現今洋画といわれている油絵も水彩画も、又現に吾々が描いている日本画も、共に将来に於いては、日本人の頭で構想し、日本人の手で製作したものとして凡て一様に日本画として見らるる時代が確かに来ると信じている。」 今から1世紀余り前、怒涛のように押し寄せる文明開化(西洋絵画)の波を前に、伝統絵画(東洋絵画)の革新を志し、道半ばの36歳で早逝した敬愛する画家の言葉が胸に残ります。(菱田春草『画界漫語』1910年)

 もう数十年もすれば、今吾々が紙やキャンバスに絵筆で描いている絵画は、西洋画・東洋画の区別なくオールドファッションな〈アナログ画〉と一括されて、孫たちが夢中になって液晶画面に指先で描いている〈デジタル・アート〉に席を譲る日が来ることでしょう。そんな孫たちから、「絵を描く道具が欲しいんだけど、使わない物があったらちょうだい?」と頼まれれば、今使っている絵具箱ごと喜んでプレゼントしてしまう、《絵をかく笛吹きじいさん》です。