ときの備忘録

美貌録、としたいところだがあまりに顰蹙をかいそうなので、物忘れがひどくなってきた現状にあわせてこのタイトル。

ひとりの夜

2008-08-16 | 砂時計
夫と二人、夫の実家に帰省していた。
去年は、現役生という呑気さもあり、息子を伴い帰省したが、もう後がない今年はそんな悠長なことはやっていられない。
本当なら、姑が我が家へ来てくれれば何かとやりやすいのだが、年老いて足腰が弱っているのでそういうことが煩わしいらしい。

息子は、親がいれば縦のものを横にもしないが、いないとなればそれはそれなりにその状況を楽しんでいるようである。
ブタのショウガ焼きを作るのに、わざわざおろし生姜をつくり刻みショウガも入れた本格料理も作れば、洗濯も干して取り込んで、とやっていた。
それでも、おばあちゃんとしては、自分のためにひとりぽっちにされる息子を不憫に思うのか、私たちが出た後に電話をしてきて
「ひとりで大丈夫か?ガスは使えるの?ご飯はどうするの?」
と尋ねたらしい。

そうはいいつつ、姑はお盆とお正月の息子の帰省を心待ちにしている。
一緒に食事をとっていると
「やっぱり、ようけ(大勢)で食べるご飯はおいしいなぁ。」
とか
「ひとりやったら、何も作る気になれへんし、食べる気にもなれへんねんわ」
と、寂しそうにこぼす。
それに対して夫は
「そやからいつでも来たらええ、ってゆうてるやんか。」
とそっけなく返す。
夫にすれば、自分にそういわれてもどうしようもないじゃないか、といういらだちがあるのだと思う。
会社の転勤ならまだしも、夫が自分で選んで住んだ街である。
姑にしてみれば、ヨメの実家に近いところ、ということで一人息子を取られたような気がしているのかもしれない。
夫婦がそろっており、子どもも3人もいる私の両親がうらやましい、ということもあるだろう。
私は、自分の実家に近いより、夫の実家に近い方が気楽でいいと考えているのだが、なかなか上手くはいかないものだ。

一人暮らしをしている姑をみていると、なにかと自分に重ね合わせて考えることも増えてきた。
自分が嫁いだ頃の姑の年齢に近づき、同じ一人っ子の一人息子を持つ女性として見ることができるようになってきたからだ。
自分の母なら、片付けが出来ていなければ、ズケズケ指摘して、ばさばさと掃除をしてしまうが、姑となるとそうもいかない。
侵されたくはない領域があり、ヨメには指摘されたくはないものだからだ。
そうなると、自分で身綺麗にしておかねばならないな、と教訓1。
自分が住み慣れた街で、ずっとひとりで暮らし続けるためには、元気でいなければならないな、と教訓2。
ひとりでいることが寂しい、となるべく感じないでいるためには気の置けない友だちをたくさん作っておかなければ、と教訓3。

そうは言っても、夫の親。
夫が私の親を大事にしてくれるように、私も大事にしてあげたいとは思う。
なんとか寂しい思いを出来るだけさせないようにしてあげられないものか。
帰る度に、そのことが胸にひっかかるのである。
ひとりの夜を愉しめるのは、若いうちだけなのかもしれない。

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4 コメント

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Unknown (アプリコット)
2008-08-17 12:15:47
息子さんの立場を想像すると一人をそれなりに楽しめて過ごせるだろうと思いますが、お姑さんの気持ちを思うと切ないですね。
我が家の子供たちはまだ小さいけれど、習い事などの関係でお盆の帰省もままならないです。
夫も超多忙で7月からきちんとお休みを取れたことが2日しかありません。
それも身体を休めるためのお休みではなく、夫の実家へ往復して終わりました。
実家から遠い住居と勤め先で、身体のことを思うと帰省も難しいのに、お盆のお飾りは13日で無ければならないとのことで・・・

身奇麗に過ごせるのも身体が元気なうちだけのようで、思うように動けなくなると何事も億劫になり、更に目も見えなくなると「汚れ」も気にならなくなるのかも知れません。
近くの気の置けない友達も少しずつ居なくなったり、相方の病気の看病があったり、入院したり・・・歳を取るというのは寂しいことだなぁと最近思うようになりました。

夫の実家へ行くと時々尋ねてくる友達がいて、そういう方を見送る時に「あなた、お嬢さんじゃなくてお嫁さんでしょ。わざわざ見送ってくれなくてもいいですよ・・・」と言われたことがあり、なんだか複雑な気持ちになったこともあります。

一人の時間が欲しい!なんて思っている私にはまだまだ思い至らない部分が多いだろうと思うと、私もCITROENさんのようになんとかしたいと思いつつ、良い案が浮かばないのが現実です。
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アプリコットさん (CITROEN)
2008-08-17 20:14:32
残暑お見舞い申し上げます。

ご主人、お忙しそうですね。
奥様としては身体のこと、ご心配でしょうね。

私も、息子が小さい頃には姑の立場や気持ちを思いやる余裕などなかったのですが、自分のなかに老いを感じることが増えてきたり、息子が家を巣立つ日が近づいていることなどから、人生の先輩として見つめることが増えてきました。
アプリコットさんがおっしゃる通り、歳をとると目も薄くなり汚れが目につきにくくなるということもあるし、動きも緩慢になってゆきますね。
姑も周りの同い年の方達が、どんどん病に倒れたり、身体が不自由になっていくことに非常に恐怖を覚えています。
イコール息子夫婦が遠くに住むことが不安で不満なのです。
私たちにしてみれば一緒に住んでくれたら、お医者さんもよりどりみどり、送り迎えは夫の車、いつ何があっても全然不安はないだろうと思うのですが、やはり住み慣れた環境を離れるのは絶対嫌なのです。
わからなくはないんですけどね。
難しい問題ですね。
なるようにしかならない、というのが夫の結論なのですが
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私が書いた文章かと思ったよ! (Roco)
2008-08-20 20:34:28
何しろ旅行中、その3点の教訓を
私も繰り返し感じましたよ。
教訓その4があるとしたら、「ポジティブであること」とかね。
色んな老人みてると「元気でいる」ってことも
ものすごく個人差があると思う。
私も今から気を付けておかないといけないことが
たくさんあるな~~。
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そうそう (CITROEN)
2008-08-20 22:09:29
私も、Rocoさんがお姑さんに有無を言わさず長崎に連れて行った、というのを読んで
「何処もおなじよね~」って思ってたのよ。

そうだね、ポジティブであることも大事だわ~。
姑も、なるべく暗いドラマや、闘病のドキュメンタリーなんかは見ないようにしてる、って言ってたよ。
元々、かなーりポジティブなひとなんだけど、周りが寂しくなり始めると落ち込むみたいなのね。
足腰が丈夫なら、さっさとバスに乗って行こう!って思えるんだろうけど、だいぶんと弱ってるからどうしてもおっくうになっちゃうんだろうね。
かといって、私たちも自分の生活があるから仕事を投げ出してまでは帰られないし。
難しいよ・・・
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