ときの備忘録

美貌録、としたいところだがあまりに顰蹙をかいそうなので、物忘れがひどくなってきた現状にあわせてこのタイトル。

いつかきた道、いつかゆく道

2009-08-10 | 砂時計
短い帰省が終わった。
今年は私の高校の同窓会がお盆に開催されるので、早めにお盆休みを取って夫の実家に帰省した。
今年,高速道路の割引もあるので、お盆の渋滞は相当なものが予想される。
そのため、早めに帰省しておいた方がいいだろう、という夫の読みもあった。
折しも、大阪の国立国際美術館で開催されている「ルーブル美術館展美の宮殿のこどもたち」の招待券も持っていたので、平日のほうが空いているだろう、という目論見もあった。

姑が一人暮らしを始めてからというもの、なかなか帰省の機会を借りてあっちこっちと自分の行きたい場所を巡ることがはばかられる。
普段寂しい思いをさせている姑に、少しでも寂しさを紛らわせてもらわなければ、という思いがあるから。
1回の帰省には、1テーマで。というのが自分に課した規律である。
そういう風に言うと、まるで私がとっても優しくて良くできた嫁の様だが、そんなことはけっしてない。
結婚して23年、振り返ってみれば本当に私は好き勝手なことをし、好き勝手なことを言ってきた嫁なのである。
だが、自分も半世紀近く生きてきて、周りでいろいろな嫁姑の話を聞くに付け、自分がいかに恵まれた状況であったかということを悟った。
姑である義母も、嫁である私も理想を言えばキリはない。
お互い、現実を受け入れ、その中でベストな状態に持って行く知恵と努力が必要なのだということに今更ながらきづかされる。

以前、会社が使っている配送会社のおじさんに教えられたことがある。
おじさんがいつも食べに行くおうどんやさんのトイレに人生訓を書いたカレンダーが貼られているそうで
「いつかきた道、いつかゆく道」という言葉があったのだそうだ。
そのおじさんが講釈してくれたことには、
小さい子どもがむずかって手を煩わされることがあっても、叱るでない。
それは過去に自分もしてきたことなのだ。
年老いた者が、のろくさとした行動をしたり、呆けたことを言うからといってそれを疎ましく思うのではない。
それは、いずれ自分も辿る道なのだから、と。

そのおじさんは、私や節子さんにたれた講釈を覚えていないかも知れない。
だが、私の中に、そのおじさんに教えられたその言葉は深く根付いている。
たしかに言われるとおりである。
子どもが言うことをきかなければ叱りつけ、年寄りがとろとろしていれば、なんでこんなこともできないのか、とイラッとする。
だが、自分もそうやって親の手を煩わせて大きくなり、いずれ年老いて子どもや若い人に頼り、疎まれる存在となるのである。
誰もが通る道のこと。
そう胸に刻んで、義母の寂しさを分かち合い、なるべく寄り添わなければ、とあらためて思うのである。

今回1テーマに選んだ「ルーブル美術館展」で見たこどもたち。
時代を超え、地域を越えて普遍にある姿が見え隠れしていた。
年々下がっていく姑の肩を見ても、そこにあるのは誰もに等しく訪れる「老い」の姿である。
誰もが過ごし、誰もが通る道なのである。
それを思えば、少し優しい気持ちになれるかな・・・

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4 コメント

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深いお言葉 (さらさのはは)
2009-08-11 19:18:33
先日はお気遣い有難うございます。
本当に奥深いお言葉ですね。
若い頃は気が付かなかった事、この頃思い知らされる日々です。
老いは必ず誰にでもやって来るもの・・・。
私も偶然今日明日とお休みがもらえたので明日大阪のルーブルに行く予定。
歳を重ねていくからこそ感じることの出来ることも沢山あるから歳をとることも悪くないと感じる毎日です。
そうやって思ってくれる嫁がいて姑さま幸せですよ!
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確かにね (CITROEN)
2009-08-11 21:10:56
さらさのははさん、お久しぶりです!
>歳を重ねていくからこそ感じることの出来ることも沢山あるから歳をとることも悪くないと感じる毎日です。
ほんとにそうですよね。
若い頃には見えなかったこと、気づかなかったことが歳を重ねたがゆえに気づくことの多いこと!
姑が私のことをどう思っているかはわかりませんが、今まで大事にしてもらってきたことは間違いありません。
それに応えていかねばな、と思う今日この頃です。

京都のルーブル展も行きたかったのですが断念しました。
さらさのははさんの相変わらずのフットワークの軽さには感心します。
私も見習わねば!といつも思っているのですよ。
そのうち、「こんちは~♪」って遊びに行っちゃうかも!
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Unknown (kay)
2009-08-15 15:52:23
こちらの記事を 読ませていただいてから
『いつかきた道 いつかゆく道』の言葉が
頭から離れません。

夕飯の準備をする私の足の間に まとわりつき
泣きながら 抱っこを迫る わが子を見て、
思わず 笑ってしまったり。

我が道を行く母親からの一方的な電話を 
疎ましいと思っている自分を 反省してみたり。

上手く言えませんが
CITROENさんの書かれるブログ、好きですー。
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kayさん、ありがとう。 (CITROEN)
2009-08-16 15:18:43
なにかひとつでも、心に残していただけることがあったとすれば嬉しいです。
だって、それって同じ気持ちを共有できたってことでしょう?
私も、この言葉を配送会社のおじさんに聞かされてから、ずっと頭に残っているんです。
同じ事を聞いても流れ去る人、残る人、それぞれでしょうけど。
自分と同じように残る人がいるとすれば、それってどこか似た部分を心に持っている人なのかなぁ、って思えるんです。
kayさんとどこかでつながりを持てたってこと、嬉しいなぁ。
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