「1年生時に万引き」誤記録で進路指導 広島の中3自殺
広島県府中町で昨年12月に中学3年の男子生徒(当時15)が自殺した問題で、学校側が「(生徒が)1年生の時に万引きをした」とする誤った記録をもとに進路指導をしていたことが分かった。この記録にもとづき、学校側は生徒が志望した私立高校に対して学校長による推薦はできない、と告げていた。生徒はこの指導内容が保護者に伝えられた12月8日の夜に自殺したという。
府中町教委によると、学校側は生徒が1年生だった当時、別人の万引き行為を生徒の行為として書面に記録。ある教員が校内の会議で誤りを指摘したが、訂正されずに引き継がれた。生徒は私立高を第二志望としていたが、学校側は誤った記録をもとに専願受験はできないと告げていた。
学校側は生徒が自殺した翌日の12月9日に開いた全校集会で亡くなったことを伝えたが、公表していなかった。自殺後、誤った記録に基づく進路指導だったことが判明した。町教委は第三者委員会を設けて一連の経緯を調べるとともに、8日の保護者説明会の後に記者会見を開くことにしている。(朝日新聞)
この事件の一連の報道を見ていると、なんだかモヤモヤするのである。
「記録の誤り」がいけないのは当然。それについては100%学校が悪い。
しかし、なぜこの生徒は「自分は万引きをしていない」ときちんと否定することなく、
自殺にまで突っ走ってしまったのか、そこがわからないのだ。
以下に僕の憶測を書く。憶測であることは自覚している。彼を貶める意図は毛頭ない。
ただ、「何が真実なのか」知りたいと思うばかりだ。
11月16~19日、担任のE教諭は進路指導の個人面談をした。教室前の廊下で男子生徒に「万引きがありますね」と言うと、男子生徒は「えっ」と言った。「1年の時だよ」と言うと、間をおいて「あっ、はい」と答えた。E教諭は、男子生徒が万引きの事実を認めたのだと認識した。11月下旬の2回目の面談で、E教諭が「万引きがあるので推薦は難しい」と言うと、男子生徒は「家の人には言わないで」と答えた。(調査報告書)
「教師の側からの一方的な証言に基づく調査報告書でしかない」という点は踏まえつつも、
教師の確認の仕方が、「否定を許さない」ほど威圧的であったとは思えない。
教師は決して「犯行の追及」をしているわけではなく、
「推薦できるかどうか判断するための事実確認」をしたに過ぎないのだから、威圧的である必要もなかった。
確かに、「教師対生徒」の力関係ゆえに生徒は否定することができなかったのだ、
という事情も、想像できなくはない。
でも、咄嗟に「否定」まではできないにしても、「えっ?それはいったい何のことですか?」
という「驚き」「戸惑い」すらないのは、訝しく思う。
実は彼は、この誤記録の万引きとは別に、実際に万引きをしていたという可能性はないのだろうか?
そのことを図星で指摘されたと勘違いして、このような反応になったのではないだろうか?
その万引き現場では、店員に厳重注意されただけで済んでしまい、学校へも家へも通報されなかった。
あるいは、店員に見つかることすらなく、仲間内だけの秘密で済んでしまった。
だから彼は「どこにもバレていない」と思っていたのだが、
廊下で教師から突然訊かれて、「実は先生にはあの万引きのことがバレていたのか!」と、勘違いしたのだ。
そうなると、彼としては今度は「親バレ」が怖くて仕方なくなる。
担任が「万引きのために専願受験が難しいことが色濃くなった」と伝えると、生徒は「家の雰囲気が悪くなるので、家の人には言わないでほしい」と話し…
生徒は「『3年になってからガラスを割っているので専願受験はできない』と親に伝えたら、『そんなことで受けられないのはおかしい』と親が怒っている」と担任に話した。これに対し、担任が「そうじゃないよ、万引きで専願受験はできないんだよね」と話し…(NHK)
万引きのことを隠し通すために、親には、専願が通らない理由について、
「ガラスを割ってしまったから」という別の理由を作りあげた。
しかし、それでは親を説得できない。一方で、教師は万引きの事実を知っている。
さて、どうしたらいいのか…
困り果てた彼は、最終的に「自殺」という道を選んだのではないのだろうか。
この日の放課後に、担任と生徒と親の三者懇談が予定されていましたが、生徒は時間になっても現れず、電話もつながらなかったため、担任と生徒の両親が教室で面談し、担任が万引きのことを伝え、両親は驚いた様子だったということです。
その後、午後5時ごろに父親が帰宅したところ、生徒が倒れているのが発見されました。(NHK)
「もうこれ以上隠し通せない」と思い詰めた三者懇談の直前というタイミングに、
彼は自死を決断したのだ。
誤った記録をつけてしまい、チャンスは何度もあったのに、
それを修正することができなかった。これは100%学校に落ち度がある。
しかし、その記録内容の「確認」をしたことは、決して間違いではない。
その確認方法についても、「調査報告書」に書かれている内容を基に判断すれば、
(少なくとも今の時点ではそれを手がかりとするしかない)
教師が「頭から決めつけ、反論の機会を与えなかった」ようには見えない。
また、もしも生徒が「教師から身に覚えのない言いがかりをつけられている」
と感じる立場にあったのであれば、それを親に全く相談しなかったというのも解せない。
「教師の理不尽な断定で自殺に追い込まれた」のと、
「自分のした万引きで追い詰められて自殺した」のとでは、
事件の見え方が全然違ってくるはずだ。
もしも仮に、この生徒が本当に万引きをしていたとして、
その行為に「思い当たる」店や友人がいるのなら、名乗り出るべきだと思う。
「死者のことはそっとしておくべき。ほじくり返すべきではない」
「死人に鞭打つような真似はすべきでない」
(まして、これだけ大きな社会現象になってしまうと)
という意識が支配的になるのもわかるが、
「学校だから」「教師だから」あらゆる罪はかぶって当然、とも思えない。
ここに記したことは、あくまで僕の憶測にすぎない。
それが真実であるという根拠を僕は持っていない。
しかし、「可能性」を追求してみること自体は、排除されるべきではないと思う。
あるいはもしかすると、僕のこういった想像など荒唐無稽極まりないものであって、
実は教師が圧力をかけて、やってもいないことを生徒に無理矢理認めさせた…
という可能性も否定できないだろう。
真実は何だったのか、知りたいと思う。