情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

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受刑者処遇法は「立法詐欺」だ!~人権蹂躙国家日本チャチャチャ

2007-04-29 19:04:24 | 適正手続(裁判員・可視化など)
 2006年5月に施行された「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律」(受刑者処遇法)が、実は、立法詐欺だったことを、監獄人権センターの中元義明氏が監獄人権センターニュースで取り上げている。同氏によると、旧監獄法下では全受刑者の4%前後が昼夜間独居(一日中独房、他人と交流できない)されており、10年以上もその状態が続いている者も常時30人くらいいたらしい。しかし、受刑者処遇法が制定され、改善されるはずだったが、むしろ、昼夜間独居状態に陥った者は、全受刑者の5.5%にも達し、かえって、増えたのだという。

 増えた理由は、次のとおり。
 まず、従来、懲罰としての昼夜間独居は、「戒護の為隔離の必要あるもの」(旧監獄法施行規則47条)というあいまいな規定によって運用されていたため、刑務所相手に訴訟を起こしただけでも、昼夜間独居にされていたらしい。

 そこで、受刑者処遇法制定過程では、この昼夜間独居を「隔離」という名称にあらため、隔離のための要件を「他の被収容者と接触することにより刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがあるとき」(受刑者処遇法53条1項1号)と「他の被収容者から危害を加えられるおそれがあり、これを避けるために他に方法がないとき」(同項2号)に限定し、期間についても「前項の規定による隔離の期間は、三月とする。ただし、特に継続の必要がある場合には、刑事施設の長は、一月ごとにこれを更新することができる」(同条2項)としたため、2003年9月10日には2108人いた昼夜間独居者(被隔離者)が2006年11月30日は148人にまで激減したのだ。

 問題はここからだ。
 法務省は、新法の「受刑者の自発性及び自律性を涵(かん)養するため、刑事施設の規律及び秩序を維持するための受刑者の生活及び行動に対する制限は、法務省令で定めるところにより、第十四条の目的を達成する見込みが高まるに従い、順次緩和されるものとする」(65条)などの規定を根拠として、受刑者処遇法施行規則41条において、次のような4段階の制限区分を設けた。
 
 すなわち、
・第1種は「収容を確保するため通常必要とされる設備又は措置の全部又は一部を設けず、又は講じない室を指定する」
・第2種と第3種は、適当と認めるときに限り、第1種と同様の居室を指定できる。
・第1種と第2種の処遇場所は主として居室棟外で行い、施設外で行うこともできる。
・第3種の処遇場所は主として居室棟外。
・第4種の処遇場所は、特に必要がある場合以外は居室棟内。
の4つである。

 このうちの第4種は、通達によって、1ヶ月に1回以上のグループカウンセリングなどによって他の受刑者と接触する機会を設けるように指示されているが、ほとんどの刑務所では、他の受刑者と接触する機会は月1回しか与えられず、ひどいところでは、まったく与えられてないという。

 つまり、昼夜間独居は、第4種処遇というものに名を変えて、生き残ったのだ。その数は、2006年10月10日現在で3588人。この数は、従来の昼夜間独居者よりも多い。

 新法を制定するまで30年の時をかけて、昼夜間独居の弊害を検討し、要件を絞った。これでようやく、日本の刑務所での処遇が改善されるかと思っていたところに、法律(国会が決める)ではなく単なる施行規則(大臣が決める)によって、元の木阿弥とされたのだ。

 これを、中元氏は、「立法詐欺」だとする。同感だ。

 塀の外の人にはあまり関係ないかも知れないが、法の趣旨に反した規則による人権侵害を許すことによって、政府はつけあがり、徐々に人権を侵害していくのだ。ぜひ、法務大臣、法務省に対し、抗議の声を挙げてほしい。

 …でも、本当は、塀の外の人にも大いに関係あり。というのも受刑者の5%が独居によって、社会性を失った状態で塀の外に出てくるんですよ。これって怖くないですか?本来、刑務所は、社会生活に適応できるような処遇をするべきだと思いませんか?社会に適応できないと再犯に走り、被害者がでるとともに加害者もまたつらい人生を塀の中で送る。その費用は税金で負担する…。儲かるのは、刑務所を抱えた法務省と取り締まる側の警察だけだ。

…これって、怖い人がいるから守りを固めようっていうことを口実に予算をぶんどる、例の発想なんだよね…。

※写真は、多くの受刑者を殺傷した悪名高い革手錠。






 
 




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