情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士(ヤメ蚊)日隅一雄

知らなきゃ判断できないじゃないか! ということで、情報流通を促進するために何ができるか考えていきましょう

憲法25条と日本司法支援センター業務方法書25条の乖離~恥ずかしく迎えた憲法記念日

2007-05-04 11:33:21 | そのほか情報流通(ほかにこんな問題が)
今年は60回目の憲法記念日だったが、法に関わる者として、非常に恥ずかしい思いをもってその日を迎えた。法テラスのことである。

昨年10月業務を開始した法テラス(正式名称「日本司法支援センター」)は、今年始めて憲法記念日を迎えた。法テラスは、総合法律支援法という法律に基づいて設置されたものであり、「法で社会を明るく照らしたい。」「陽当たりの良いテラスのように皆様が安心できる場所にしたい。」という思いを込めて、命名されたらしい。

業務の一つとして、「民事法律扶助業務」というものがあり、これは「資力の乏しい方が法的トラブルに出会ったときに、無料法律相談を行い、必要な場合、法律の専門家を紹介し、裁判費用や弁護士又は司法書士の費用の立て替えを行う制度」です。

でも、ビザなしで滞在している人が過酷な労働環境のもと労災でひどい怪我をした方が、弁護士に相談したい、そう思った時、この制度は使えない。

なぜなら、この制度は、在留資格のある人しか利用できないからだ。

日本司法支援センター業務方法書の25条には次のような規定がある。

【1項 前条の申込みをする者は、所定の申込書(以下「援助申込書」という。)に、住所、氏名、職業、収入、資産、同居の家族及び希望する援助の方法並びに事件の相手方がいる場合にあっては相手方の住所及び氏名その他必要な事項を記入し、提出しなければならないものとする。
 2項 地方事務所長又は法律相談担当者は、援助の申込者が外国人であるときは、外国人登録証明書又はこれに代わる書面を提示させるなどして在留資格を確認しなければならないものとする】

他方、還暦を迎えた憲法は、その第25条で、次のように定めている。

【1項 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
 2項 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。】

この25条は生存権を保障するものであり、国民という文言にかかわらず、外国人にも可能な限り適用されるべきだとされている。

しかし、憲法25条の60年後の到達点が、日本司法支援センター業務方法書25条でしかないのが日本の現実だ。

法テラスができる前、同じ業務を法律扶助協会が行ってきたが、そのときには、外国人の在留資格は問題とはならなかった。国庫負担金はなかったが、自主事業として、法律扶助協会が取り組んできたのだ。その業務を法テラスが引き継がなかったこと、弁護士会として盛り込ませることができなかったことは、本当に恥ずかしいことだ。(じゃぁ、お前は何をしたと突っ込まれると困るが…)

ここまで読んで、資格がないのに勝手に日本にいるのに、なぜ、税金をつかって法テラスの援助対象にしなければならないのか? そう思った人もいるかもしれない。

しかし、日本は、国家として、資格のない外国人を安い労働力として使うことを放置しているのが実際だ。20万人もの無資格在留者が存在し、劣悪な環境で働いている者も多い。であれば、最低の権利は保障しなければならないはずだ。

しかも、「資格がないのに勝手に日本にいる」という考え方をつきつめれば、「税金も払わないのに公的サービスを受けていいのか」というところまで行きつくのではないか?

ちょっと、脱線します。実は、前から書きたかったことがある。

子どものころ、オートメーション化が進んだら、きっと、実質的には働かなくても食べていける社会になり、教育などの人でなければならないサービス業に就く人が増えるんだろうな、それも半ば趣味のように(利益を度外視して)行うことになり充実するんだろうなと思っていた。いまでいうワークシェアリングの考え方のようなものだ。

しかし、いま、人手が余ったら(というか足りなくても)リストラされ、他方で生活保護の支給も絞られている。

儲かっているのは企業=投資家=だけで、市民は搾取されるばかり…。

国際競争に勝つにはコストカットも仕方がないという。そうだろうか?国際競争に参加する資格として、最低限の労働条件をクリアしたことを課すことはそんなに難しいことではないのではないだろうか。世界各国が軍事費に費やす膨大な額の一部を労働現場監視費に回す選択は、難しいことではないはずだ。


…弁護士会は、今後も、自主事業として、在留資格のない外国人支援を行うこととしている。需要は大きい。2005年度には、東京だけで100件を超える事案を取り扱った。






★「憎しみはダークサイドへの道、苦しみと痛みへの道なのじゃ」(マスター・ヨーダ)
★「政策を決めるのはその国の指導者です。そして,国民は,つねにその指導者のいいなりになるように仕向けられます。方法は簡単です。一般的な国民に向かっては,われわれは攻撃されかかっているのだと伝え,戦意を煽ります。平和主義者に対しては,愛国心が欠けていると非難すればいいのです。このやりかたはどんな国でも有効です」(ヒトラーの側近ヘルマン・ゲーリング。ナチスドイツを裁いたニュルンベルグ裁判にて)
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