南米にアベコベガエルというおかしな名前の生き物がいる。英語ではパラドクシカル・フロッグ、矛盾したカエルと呼ばれるらしい。オタマジャクシのころは体長二十五センチと巨大なのに、成体は六センチほどになるため、その名がついた▼荒俣宏さんの『世界大博物図鑑』によると、常識に反するようなこの生き物を見て、昔の学者はカエルからオタマジャクシへと、逆に育つと考えたという。成長しているのに、小さくなる。悲しい性質にも思えるが、当のカエルは異を唱えるかもしれない。小さく成長することの何が矛盾かと▼東大阪市にあるセブン-イレブンの店舗の二十四時間営業をめぐって、本部と加盟店のオーナーが対立している。オーナーは営業時間の短縮に踏み切った。便利さを追求し、拡大、成長してきたコンビニエンスストアである。その常識に逆行する動きだろう▼原因は、解決困難で、この先も厳しくなるであろう人手不足である。本部には売り上げや効率の点からも、受け入れるのが難しいことのようだ。が、ひとごとでないと同業者や他業界からも声が上がっている。それが世の中に広く共通の難問であるからに違いない▼小さく成長する。難しそうではあるが、あべこべの常識を真剣に考える時代が、近づいているようだ▼図鑑で見れば例のカエル、大きな水かきがあって、体は小さくとも立派に見える。