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今日の筆洗

2019年02月26日 | Weblog

緑色の本」と聞けばどんな内容が浮かぶか。森? 植物? いずれも違う。一九三六年にこの本が米国で出版された背景と意味は深刻で切実である▼表紙が緑色なのでそう呼ぶが、正式名称は「黒人旅行者のための緑色の本」。黒人差別の時代にあって、黒人が安心して利用できる宿泊施設や飲食店を紹介したガイド本である。人種差別を禁止する公民権法が成立して二年後の六六年まで出版されていたそうだ▼「緑色の本」がそのまま題名になった米映画「グリーンブック」(ピーター・ファレリー監督)がアカデミー賞作品賞に選ばれた。六二年、黒人ピアニストが黒人差別の強い南部を演奏ツアーで回る。その用心棒としてイタリア系の男が雇われる。黒人と白人の旅である。実話だそうだ▼名ピアニストなのに黒人というだけで、グリーンブックで紹介されるひどいホテルに泊まらなければならない。差別のひどさを目の当たりにした、白人の用心棒の考えは変化していく▼映画のメッセージは偏見を捨て、お互いに近づき合ってということなのだろう。よく知れば、互いの悩みの痛みも見えてくる。そして、協力し合える▼正直、斬新な物語ではないかもしれないが、肌の色ばかりではなく、考え方の違いで対立する米国の「今」が前向きなその映画を必要としたのだろう。「今」の日本には必要ないとは言いきれまい。

 
 

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