沖縄県の米軍基地近くの家庭では一九七二年の日本復帰後も長らく、基地向けの米国番組がテレビに映った。「6チャンネル」。米国のバスケットボールのプロリーグNBAの試合もやっていた▼女子バスケで活躍した沖縄市スポーツ協会会長の稲嶺啓美(ひろみ)さん(61)も、中学時代には見ていた。バスケ部の仲間も画面に映った世界最高峰のプレーをまねたという▼沖縄の高校を出て八〇年、本土の実業団・第一勧銀に入ったが、チーム内でラリー・バードやマジック・ジョンソンといった米国の人気選手の名を口にしたら「はあ?」という反応。本土ではまだ知られておらず驚いたと取材に明かした▼基地で米軍と沖縄チームの試合が行われるなど本場の影響を受けてきた土地で昨日、バスケ男子のワールドカップ(W杯)が始まった。フィリピン、インドネシアとの共催で日本の開催地は沖縄である▼都道府県別の人口比競技者数は一位。五月に男子Bリーグの琉球が初の王者になり県民は歓喜した。街にバスケットリングが多いが、県によると自宅に作る人も。人気バスケ漫画「スラムダンク」の映画では沖縄出身のキャラクター宮城リョータが描かれた。たしかにW杯開催地にふさわしいと思える▼昨夜、日本代表の沖縄での試合がテレビ中継された。画面から熱が伝わったとすれば、この地が長く育んだバスケ愛が貢献している。