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今日の筆洗

2023年08月29日 | Weblog

柳田国男の『遠野物語拾遺』の中に「油取り」なる怪人が出てくる。明治維新当時の話らしい▼「油取り」の名に清掃事業や美容関係者を思い浮かべる人もいるか。さにあらず。身の毛もよだつ話で、子どもをさらってはその体内から油をしぼり取っていくという。奇怪なうわさは村々へと広がり、女と子どもは夕方以降の外出を控えるよう、庄屋からお触れが出たそうである▼最近の「油取り」は人々を苦しめる方法を大幅に改めたらしい。ガソリンがなければ、車が動かぬことに目を付けたのだろう。人から油は取らぬが、その代わりにガソリンの価格をどんどんとつり上げては、人々をいたぶる。レギュラーガソリンの小売価格はリッター当たり百八十円を超えているところもある▼当時の庄屋さんなら、車での外出を控えなさいと口を酸っぱくして言うだろうが、今の時代ではそうもいくまい▼車が使えないと生活が不便な地方にあってはなおさらで、こうして、あの怪人は人々の財布からお金をさんざんしぼり取って、ガソリンスタンドの価格表示を見る者の心臓を痛めつける▼怪人の正体は原油高、円安、ウクライナ侵攻。二百円台に突入するという見立てもある。政府は九月末で期限切れとなるガソリン価格の高騰を抑える補助金の延長を検討する。その方法は怪人を一時的に追い払えても果たして、退治までできるか。