めぐみさん、コメントありがとうございます。 読んでくれる人がいると思うと書く励みになります。
今日は久しぶりに建設業関連で。
先日、監理技術者講習を受けにいった(一級建築士などの建設関連技術者に法律で義務付けられている定期講習)。 テレビ講習の教室には20人ほどいたが、30歳前後と思える者が数人程度で、あとは40代、50代のおっさんばかり。 本当に若い人がいなくてびっくりした。
昼休みに買った週刊経済誌『エコノミスト』でも建設業の高齢化を特集していた。 20年前には建設就労人口に占める55歳以上の割合は5人に一人だったが、今は三人に一人になっているそうだ。 全産業の平均は4.5人に一人で、10年ほど前に比率が逆転している。 当然だろうな。
20年間(笹子トンネル崩落事故直前まで)、建設業批判のための批判が錦の御旗だったから。 口が開けば『無駄な公共事業』、『生産力過剰』、『業者が多すぎる』などなど建設業を委縮、縮小させるだけの批判と政策が続けられてきた。 業界の実情を客観的中立的にコメントするメディアは皆無だった。
拙著『談合革命と日本維新』でも書いたが、工業高校の先生が、『地元に就職したいなら建設業は諦めろ。建設業にこだわるなら東京に行け』と進路指導しているのだから、若い人は誰も建設会社に就職しない。
アベノミクスの金融緩和は連日株価を上昇させ、景気浮揚の期待感を高めているが、惜しむらくはあと10年早ければよかった。 10年前であれば、ほとんど金融政策だけで日本経済は復活していただろう。 『リフレ、債務者(社)への死刑宣告(その1)!』などで書いたように、最大の副作用は、名目金利の上昇による債務者の破たんである。 そして、債務者には世界一の財政赤字を抱えている日本国も含まれる。
悪性インフレは、生産力を大きく超えるマネー供給がされたとき発生する。 10年前に比べて、今は生産能力が量的にも、質的にも劣化してしまった。
たしかに、2000年ごろまでは生産力過剰という批判にも一理あった。 しかし、以降の10年間は完全に本末転倒だった。 本当は日銀のマネー供給が少ないから需要が減りデフレが発生したのに、生産力過剰が原因とされ、構造改革の名の下ずっと削られてきた。 公共投資は毎年のように減額され、ピーク時の半分以下、そして就労人口が2割程度しか減少しなかった代わりに、年寄りばかりになってしまった。 円高は国内企業経営を悪化させ、中小企業までが海外に生産設備を移してしまった。
もちろん、デフレ政策をさらに続けろ、と言っているのではない。 ただ、悪性インフレを防ぐ処方が、10年前より何倍も重要かつスピーディーに行わなければならなくなった。 ところが、反リフレ派は対策を提示せず、『ハイパーインフレになる』と騒ぐだけだ。
喫緊の産業政策は、既存会社の合併による生産性の向上。 これに尽きる。 新産業の創出などではない。 短期間で確実に生産性を向上させるには、合併がダントツ一番である。 理由は、『とにかく合併だ! (その1)』、『とにかく合併だ! (その2)』を読んでください。
日本は中小企業の比率が高いと昔からよく言われる。 しかし、ほとんど意味のない指摘である。 中小零細企業の比率が高いのは世界中どこでも当然で、日米欧すべての国で96から98%の範囲にある。 重要な違いがあるのは、中小ではなく零細の方である。 日本は先進国の中で、零細企業の割合が非常に多く、中でも農林漁業と建設業が突出して多い。
中小企業庁の定義によると、中小企業とは従業員300人以下又は資本金3億円以下(製造業) 、一方、零細企業は従業員20人以下(製造業)となっている。 この定義によると従業員299人、資本金2億9千万円でも中小企業になるのだが、地方だったら超大企業である。 私の地元最大手の土建屋も、従業員は100名程度、資本金は1億円しかない。
日本経済最大の課題は零細企業の効率性向上であり、合併によって中小企業スケールまでアップさせることが、最優先の産業政策なのだ。 ところが、議論される中小零細企業の話題は、いつもどうやって救済するか、援助するかという消極的な話ばかりで、競争力、効率性を高めようという積極的な話はほとんど出てこない。
今日も読了ありがとうございました。