ハリソンさんはカノ紳士 ーフランス通過編 ー(後半)

今は昔の18世紀欧州が舞台の歴史大河ロマン。

牧歌劇「アミンタ」では全部キューピッドのせい

2023年04月30日 | 各話末エッセイ
【各話末エッセイ⑤の4】

 16世紀イタリアの詩人タッソの人生が
比較的安定していた頃に創作された
牧歌劇「アミンタ」。

 「エルサレム解放」完成後、
タッソは勤め先エステ家からの
「自分解放」を目指しますが不発に終わり、
雇用関係が悪化の一途を辿るのでした。





 アミンタは木や草がクッションになって
地面に直接叩き付けられず、
気絶していました。

 崖下に住む賢人エルピーノの所へは
アミンタを探してティルシが来ていました。
二人がアミンタを介抱していると、
アミンタの亡骸を探しに
シルヴィアとダーフネがやって来たのです。

 アミンタとシルヴィアの相思相愛を
見届けたエルピーノはシルヴィアの父親を
探しに行きました。

 そんなこんなで
歓喜に湧く皆さん方を他所に
憤懣の美魔女が一名。

 彼女こそはヴェーネレ(ヴィーナス)様。
昨日、彼女の口うるささにうんざりして、
息子のアモール(キューピッド)さんが
行方をくらましてしまいました。

 方々探した末にここへと辿り着き、
遂に愛息の痕跡を見つけたのです。

 アミンタの死を悼むシルヴィアの心に、
前々から二人をマークしていた
キューピッドさんが矢を放ち、

一気にハッピーエンドへと
導いていたのでした。

 そんでもってしばらくは変装のまんまで
「お仕事」を続けるようですな。
            ▼



            ▲
 でもさ、やる気になったら
他者の心を操る事において無敵で
傲慢やる方無きアンタでもさ、
その内「年貢の納め時」が来るんだろうさ!

 ちなみに、
一緒にいるロバさんの名前は
ルキウス・アプレイウス君といいます。

 魔法が解けてロバから人間に戻ると
見て来た事をもとに
「キューピッドとプシケ」を書いた
んだとさ。







 

牧歌劇「アミンタ」でも誤報が恋人達の死を招く

2023年04月23日 | 各話末エッセイ
【各話末エッセイ⑤の3】

 16世紀イタリアの詩人タッソが
後の17〜18世紀にヘンデル他の
作曲家によるオペラの原作となり重宝される
「エルサレム解放」執筆の合間に、
貴族からの依頼で作り、
大ヒットした牧歌劇「アミンタ」の続きー。

 獣神サテュロスの毒牙と
諦めの悪いアミンタから逃れたシルヴィア。
身繕いを済ますと狩猟女子の集いへと
予定通り参加するのでした。

 死のうとするアミンタを
ダーフネが阻止し、叱咤激励するのでしたが、
そこにもたらされたのは
狩りの集いの参加者ネリーナからの

 「シルヴィア、狼に襲われ死す!」
の悲報でした。

 そして、シルヴィア追跡を
断念したティルシが戻って来た時、
アミンタは絶望して走り去った後。
ダーフネもシルヴィアの情報収集に
行ってしまっていませんでした。




 アミンタはエルガストに証人を頼み、
崖から飛び降りてしまいました。

 「ロミジュリ」のロミオといい、
この話の主人公アミンタといい、
何てせっかちな。

 ロミオは側に止める人が無かったけど、
こっちではダーフネが「本当かどうか
ちゃんと見極めるまで待った方がいい」

って言ってんのにさ〜!

 どーせ人の話を聞かんのなら
「シルヴィアが死んだのは嘘だ〜!!」
ってなればいい所を、

ーそういうセリフは無かったのでした。





 実はシルヴィアの死は誤報でした。
ダーフネとの再会後、シルヴィアは
エルガストからアミンタの自殺を知り、
悲しみの中でダーフネと遺体の捜索へと
向かうのでしたがー。

 これ、②でも書いたように
貴族の夏の宴会が初演の場。
モヤるバッドエンド劇なんて
上演するもんなんだろうか?

 シェイクスピアの「夏の夜の夢」では
アテネ大公の結婚式に「ピラマスとシスビー」
の悲恋劇が上演されてるけど、
おとぼけキャラ揃いの役者さん達と
同時辛口批評をする見学者との相乗効果で
破茶滅茶ラストになってしまうしね。










牧歌劇「アミンタ」ってルネッサンスのジェットコースタードラマ?

2023年04月16日 | 各話末エッセイ
【各話末エッセイ⑤の2】

 16世紀イタリアの詩人タッソ作の
牧歌劇「アミンタ」。
この後、
現代感覚では「お茶の間が凍りつく展開」
となります。

 この話、近々大河ドラマでも描かれる
織田信長が室町幕府を滅ぼした年
イタリアの貴族の宴会で上演された劇作品なのですが、
全衝撃シーンは
「目撃者キャラが説明の語りで済ませている」

とはいえ、
イラストみたいにはならなかったんでしょうか?




 アミンタの兄貴分ティルシが
シルヴィアの姉貴分ダーフネの
協賛を得て用意したお膳立てに対し、
アミンタは釈然とせず、
気乗りもしないまま、
シルヴィアのお気に入りの場所へと
行ってみるとーー。

   ∩_, ._∩          
  ( ゜Д ° ) ガシャーン!   
  (つ O.  ₋₋
  と₋₋)₋)(₋₋()、;o:。 ドパツ 
          °*·:.。 

  懐かし杉な表現 ⬆    
 (2004年頃の作者不詳のAAより) 


 全裸で…彼女自身の髪で
木に縛られたシルヴィアが!





 シルヴィアはアミンタのみならず、
獣神サテュロスにも肘鉄食らわしていたのでした。
その復讐として、こんな目に遭っていたのです。

      ∩-∩
   ーー(||#°Д°||) ー   ∧
   三 (     )三  Σえ" >
   ➖ (_)(_)➖   ∨
   T      T

 (同じく2004年頃の作者不詳のAAより)

 強姦殺人されかねなかった所を危機一髪、
アミンタとティルシが駆けつけ、
サテュロスは追っ払われました。

 アミンタはシルヴィアに失礼を侘びながら
彼女の髪の縄を解いてあげるのですがー。
「まぁ!ありがとう♡」なんて
電車男展開とはなりませんでした。

 それどころか、
シルヴィアは逃げて行ってしまい、
続くは「ロミジュリ展開」と
なってしまうのです。



牧歌劇「アミンタ」ってルネッサンスのラブコメ?

2023年04月10日 | 各話末エッセイ
【各話末エッセイ⑤の1】

 クレールさんが連れて来た白わんこ、
名前をティルシといいますが、
16世紀イタリアの詩人トルクァート・タッソ作の
「アミンタ」という劇の登場人物から取られています。

 この牧歌劇「アミンタ」は
タッソが仕えていたフェラーラ公国宮廷の
人々の前で初演されて大好評を博し、
その後イタリア全土へ、
更にはヨーロッパ中にも広まって行きました。



 牧人のアミンタと
狩りガールのシルヴィアは
幼馴染でいつも一緒に遊んでいました。
やがてアミンタはシルヴィアを
恋するようになります。

 ある時、二人がフィッリという少女と
木陰で休んでいた時、
フィッリが蜂に顔を刺されてしまいます。

 シルヴィアがフィッリの顔の傷に
唇を近付けて呪文を唱えると
痛みが消えてしまいました。

 それを見ていたアミンタが
自分の唇も蜂に刺されてしまったと
嘘を付いてシルヴィアからの手当を
求め、恋の傷を深めてしまうのです。

 思慕の痛みに耐えかね、
アミンタはシルヴィアに告白しますが、
彼女から避けられるようになり、
3年の月日が経過します。



 アミンタにはティルシ、
シルヴィアにはダーフネという
頼りになる兄貴分/姉貴分がいました。

 この二人が間に入って、
何とかアミンタの恋を実らせようと
策を練り、ティルシがアミンタに
決行をすすめるという、
ここまではラブコメっぽい流れ
行ってますが…。

 この後、トンデモ級の
大波乱が巻き起こります。


 途中にはダーフネとシルヴィアの恋バナも
ありますが、昔の内館牧子ドラマ(「ひらり」とかの
女子同士の)会話みたい…。😅


 それから、この話って
「ダフニスとクロエ」(ロンゴス作、私もシャガールの
挿絵みたいな絵が描けたらな〜)
「愛の妖精」(ジョルジュ・サンド作←男装の麗人で
ショパンの恋人だった人)
「潮騒」(三島由紀夫作、「その火を飛び越えてこい」
が出て来て「あまちゃん」にも繋がる)

ーの系統に含まれるっぽい雰囲気がある。

 クレールさんとこのティルシは
よく薬を買いに来た男性客が
亡くなった時に引き取った雑種犬で、
名前はその人が付けたようです。