ハリソンさんはカノ紳士 ーフランス通過編 ー(後半)

今は昔の18世紀欧州が舞台の歴史大河ロマン。

塗油の儀式ではやっぱりあの曲が使われてた

2023年05月11日 | 各話末エッセイ
【各話末エッセイ⑤の6】

 「18世紀に作曲されて以来、
代々英国王戴冠式で必ず使用されている」

 と音楽番組や音楽事典で解説されているものの、
エリザベス女王の長期在位中に
他の使い道を見出されてしまった

曲があります。

 18世紀初めに英国王の主家が途絶え、
現在の王家の先祖となる、
遠縁のドイツ貴族が王位を引き継ぎました。

 ドイツ貴族に仕えていたのがヘンデルで、
次の2代目の国王の戴冠式のために
アンセムを4曲作ります。
その中の一曲が「祭司ザドク」です。

 今では主にサッカーと結びついていて、
サッカー好きの人と話しても
「え?もとはそういう曲だったの?!」
と言われてしまうくらい、
そちら方にカスタマイズされて
馴染んでしまってるのでした。

 他にも「日本一受けたい授業」で
先生が登場する時にかかる曲として以前
使われていました。

 私は実は戴冠式招待者皆様の
ファッションよりも、
「本当に『祭司ザドク』は演奏されるのか?」
の方に興味がありました。

 が…しかし、
「池上彰のニュースそうだったのか!!」
では、儀式の進行はTV画面の端に
小さく表示され、音声は全く聞こえて来ない。
そして、池上さんが「世界の王様の華麗な生活」
を解説して、タレントがコメントする構成でした。

 所々で現地の生中継が入り、
塗油の場面も映りはしましたが、
非公開だとの事で王様は衝立に囲まれ、
その間の外部の絵面が平板で映え無いからなのか、
すぐに画面が池上解説に戻って、
この番組の視聴内では確認できませんでした。

 「こりゃ〜日本のTV視聴での確認は無理かも〜」
と思った矢先、
続いて放送されたニュース番組で確認できました!

 チャールズ3世が秘儀を受けている
箱の外で演奏されていたのは
ヘンデル作曲「祭司ザドク」の
前奏のアルペジオでした。

 曲の終盤が少し聴こえる場面も映り、
確かに「祭司ザドク」の
♪「アーメン、アレルヤアーメン」
と合唱してました。

 という訳で、
クラシック版イントロクイズみたいに
なっていましたが、

「ヘンデル作曲の『祭司ザドク』は
代々英国王の戴冠式で塗油の儀式の際に
歌われる合唱曲である。」


 これは本当だったのです。
 






 


 

牧歌劇「アミンタ」はモーツァルトも作曲ネタにしてる?

2023年05月02日 | 各話末エッセイ
【各話末エッセイ⑤の5】

 その後、
タッソは自作品が実際は高評価なのに
異端審問に引っかかるのでは?
とビビり続け、
狂気の高まりが抑えられずに
突発的奇行を繰り返しては罰せられ、
一つ所に落ち着けない旅ガラスとなり。
桂冠が贈られたのは永眠後でした。

 それから170年後の1765年の夏、
ハリソンさんはロンドンで
友人夫婦とコンサートへ行き、
まだ子供の頃のモーツァルトの演奏を
聴きます。


▲ 前編15-3より


 更に10年後の1775年、
ザルツブルクにハプスブルク家の皇子が
立ち寄り、歓迎のために演奏会形式の
オペラが上演されました。

 そのモーツァルト作曲のオペラが
「羊飼いの王様」といい、
主人公の名がアミンタというのでした。

職業も牧畜業で同じです。

 が、同じなのはここまで。
ヒロインは妖精のシルヴィアでは無く、
貴族の姫君エリーザ。

 牧歌劇「アミンタ」は
ギリシャ・ローマ神話の世界観を
引き継いだ北イタリアの緑生い茂る
郊外の雰囲気で、
時代もハッキリしていない。

 オペラの方では
紀元前4世紀の
中東にあるシドン市中と周辺の
田園地帯が舞台とされている。

 そして、恋人達を散々悩ましておいて、
最後に結び合わすのは
アレクサンダー大王なのだった!

 大王が遠征中に征服した。
フェニキアの中の都市国家シドンの
僭主に変わる人物として、
元王家の血を引くアブダロニュモスを
探し出して新王にしたという
史実の資料に基づいて、
メタスタージオ翁が書いた
台本を更に改作してから
モーツァルトが曲を付けたのでした。

 史実ではアブダロニュモスは
貧乏暮らしではありましたが、
羊飼いでは無かったようで、
庭師だったという絵が残っているとの事。

 18世紀には「田舎で牧畜しながら
のどかに暮らしたい」という考え
(現代の「都会を出て田舎で農業して暮らしたい」
みたいな―か?)があったらしく
史実と時代の理想を取り混ぜ、
「羊飼いなら名は有名なアミンタで行こう!」
更に話を面白く盛るため、
アミンタにはアーサー王伝説にでも
出て来るみたいな出生の秘密も付け加えよう!
―となったのでは無いかと思われます。

 確かにアミンタ同士、
どちらも恋愛に対して諦めの悪い所等、
性格はそのまんまなようですが…。

 とはいえ、
「羊飼いの王様」の原作が「アミンタ」だと
言うには薄まり過ぎたといった感じです。


 原作だったとしても、
タッソとの間にアレクサンダー大王や
アブダロニュモス、メタスタージオが入り、
最後には「どんなに人真似しても
自分の世界になってしまうモーツァルト」

が来てしまっちゃあね〜!?

 全然別物になってしまうわな〜こりゃ!

 以上が牧歌劇「アミンタ」についてでしたが、
いずれこのブログの本体の話とも繋がって行く
事になるでしょう。