(上:福井鉄道80形81号、下:82号)
このシリーズのはじめに、福井鉄道80形電車について書いていこうと思う。
福鉄80形の歴史は古く、大正10年製造の南海電鉄電5形(モユニ521形)に由来する。福井鉄道には1948(昭和23)年に譲渡された。ただし、1956(昭和31)年に引退前の車体に換えられ、台車やモータさえも交換されていることから、当時からの部品はほとんど残されていなかった。それでも、今年の引退まで54年間、導入からは62年間動きつづけた事になり、どれだけ古い電車であったかが想像できる。
経歴以外にも、この電車の特徴となる部分は多くあった。元々、この電車は81~84の4車両として、それぞれ別々に動いていたもので、のちにそれが2両1組の形になった。その名残が、車両後部の空間に表れていた。上の写真がその後部になるが、元の運転台部分には座席が無く、天井には仕切りの跡らしき梁が出ていた。
座席の配置も変わっていた。真ん中の扉付近は対面式のボックスシートと横掛けのロングシートが混ざった形となっていた。また、81号と82号で、床の色が異なっていたという違いもあった。82号の床面については、写真のように通路が青で示されていた。
この電車は古い割に、他の古い電車と異なり、長い間主力として活躍していた。通勤・通学時間帯だけでなく、昼間や深夜、つまり1日を通して乗る機会が多く、利用していた電車の中でも親しみを感じる電車だった。