福井駅前線A案(現状延伸:赤線)
福井駅前線B案(中央通り移設:青線)
・黒線:現在の路線
(出典:国土画像情報(カラー空中写真)国土交通省)
(昭和50年度 (1975年度),福井,ccb-75-23_c2a_20.jpgを加工)
もう3週間ほど前のことになる。JR福井駅周辺の再開発に合わせ、昨年から福井鉄道福井駅前線(通称:ヒゲ線)の、JR福井駅西口広場への延伸ルートについて、福井市年戦略協議会での議論が行われてきた。先月1/16に開かれた第7回会合にて、「一応の」結論が出された。
まずは、報道で示された事実のみ示す。(福井新聞1/17付け紙面より)
これまで延伸の方式として福井市が示した案は、以下の2つである。
(A)現状延伸案(現在のヒゲ線をそのまま西口広場まで延伸)
(B)中央通り移設案(ヒゲ線撤去の上、新線を中央通りに敷設)
会合には福井駅前5商店街連合活性化協議会代表、自治会連合会、商工会議所、まちづくりのNPO、鉄道事業者、県・国土交通省関係者ら18委員が出席。
今回の会合の結果は、「工事費用がより低コスト」「交通渋滞がより少ない」などの理由で、(A)案が採用された。これに対し、駅前商店街協議会の代表は、「賑わいにどうつながるかが見えない」として、協議の中断、途中退席を行った。
一方、協議会会長は、委員の多くが現状延伸案に理解を示したことから、この案を前提として、次の課題に臨んで行く事が妥当、と意見を集約した。今後は、年度末(3月末)の都市交通戦略策定に向けて、現状延伸案実現の課題を詰めてゆくという。
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ここからは、少し細かい話になる。
福井市側は、昨年の10~12月に、LRT専門部会にてルート策定の集中審議(3回、非公開)を行っていた。今回の会合では、専門部会から両案の利点・欠点の報告をし、福井市側が7:59~8:05(一番込み合うとされる時間)についての両案のシミュレーション結果を動画で示したという。以下に、ルートに掛かる費用、関連情報、シミュレーション結果の概要(報道で示された範囲のみ)を示す。
(A)現状延伸案
・整備費用は約3億600万円。
・西口広場進入時のカーブは半径50mであり、木田のカーブ(半径65m)より少しきつめのカーブとなる。
・かがみや前に信号機を設置する必要がある。その結果、駅前南通りで渋滞が発生。
(B)中央通り移設案
・整備費用は約12億7000万円。
・西口広場進入時のカーブが半径25mと急になり、車両に制限生じる(※)。
・新線敷設で車線が2車線に減少。かがみや前に信号機を設置する必要がある。その結果、中央通りと南通りで渋滞が発生する。最大で、「山下カメラ前交差点」~「大名町交差点」にかけて渋滞。
(※)について、かつて(~昭和26年)の木田のカーブは半径20mのS字クランクであり、車両は福井新駅にて1両に分離する必要があった。(木田のカーブについては、『福井公共交通の歴史』(本多・川上・児玉・加藤 著,(財)地域環境研究所,2000)より引用)
シミュレーションの結果から、委員からは「低コストでの実現性」「中央通りのバスへの影響が小さい」など、理解を示す意見が多数出たという。
これに対し、商店街協議会代表は、その基となるデータが十分示されておらず、全面的に信頼できないと反発。また、延伸と商店街活性化がどうつながるのか、議論が不足していると苦言を呈した。
会合後の会見で、商店街協議会代表は「延伸による渋滞が、来街者の利便性を低下させる」とし、「(ルート決定の)大前提となる、市街地活性の議論がなされていない」と批判した。
商店街側は、ヒゲ線移設の後、「電車通り」中央に街路樹を植え、「高齢者や子供が安心して買い物できる空間」にするという構想があるという(これ自体は、10年以上も前から計画されていた)。
福井市の交通政策室は、商店街の合意なしでのルート決定に関して、「要請があれば地元への説明に伺うが、協議会の決定に基づき、年度内の都市交通戦略策定に向けた作業を進めていく」と、ルート決定変更はしない立場でいる。
一方、商店街側も今後、ヒゲ線に関するシンポジウムを独自開催し、現状延伸の問題点を市民に提示し、意見を福井市に投げかけていくという。
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率直な感想から言えば、やはりこうなったか、である。以前から駅前商店街のヒゲ線に対する風当たりは苛烈なまでに強く、廃線の議論もたびたび起きていた。10年以上前の時に、ヒゲ線については一応存続の「和解」がなされ、電車通りのアーケード整備、歩道拡幅、電線地中化、車道整備、ヒゲ線の電車通りにおける完全単線化、といった本格的な整備が行われた。しかし、ここにきてやはりヒゲ線廃止を諦めきれなかったのだろうか、あるいは当時の福井市との合意に内心納得いかなかったのだろうか、議論の再燃となってしまった。
一方、福井市の議論の進め方に関しても、会合の回数など、十分にそれぞれ(市民、商店街など)の意見を吸い上げ、討論できたのかに疑問はある。あまり淡々と進められても、形式ばったお役所仕事の延長にしか感じられない。それ以前に、前々から福井市・福井県のまちづくり・都市計画はあまりパッとせず、計画性のない、その場しのぎの計画のように感じてならない。
このように、非常に根の深く、「泥臭い」問題であるがゆえに、個人としてはあまり取り上げたくはなかった。ましてや自分は、まちづくりの専門家でも、商売人でも、鉄道の専門家でもなく、福井市民でもない。しかし、福井県の県庁所在地である以上、県民としても関心を寄せないわけにはいかなかった。
個人としては、現時点で、以下の点で疑問を感じている。これらについて、できれば別に記事を設けられれば、と考えている。
○ルートに関して
・現状延伸案、移設案についての利点・欠点
・ヒゲ線の存続・廃止に関しての影響(商店街、自動車、自転車、バス、私鉄利用者など)
○えちぜん鉄道・福井鉄道に関して
・LRT = 路面電車化なのか(乗り入れには、全車両の路面電車置き換えが不可避なのか)
・路面区間における、定時性の確保は困難か?
・ルート決定に関し、三国芦原線沿線の坂井市・あわら市の意志の考慮は?
・ルート決定に関し、福武線の線路用地を共同所有する鯖江市・越前市の意思の考慮は?
・そもそも相互乗り入れ実現を公約した福井県の関与は?
○その他
・そもそもLRTとは何か(福鉄電車はまだLRTでないのか)?
福井駅前線の延伸問題については、以下の各サイトを参照されることを勧める。
◇福井市
・福井市
-福井市都市交通戦略協議会(都市戦略部交通政策室)
◇駅前商店街
・福井駅前通信(駅前5商店街連合活性化協議会代表)
・福井まちなかNPO(ブログ)
◇その他
・まちづくり福井株式会社
-まちなか掲示板
※コメントされる方々へ
この問題に関しては、多くのブログ・掲示板で取り上げられており、非常に活発(熾烈)なやり取りがされています。特に商店街関係者のコメント書き込みは多方面に拡散しており、個人としてはある種の恐怖を感じています。本記事では、コメント受付は致しますが、しばらく「事前承認」という形でワンクッション置いてから受け取ることとします。また、当方は何の専門家でもありませんので、すべてのコメントに対し返答できない可能性がある事を、お断りしておきます。さらに、議論が非常に過熱した場合、本記事および以降の関連記事でのコメント受付を停止することとします。
私も、福井市在住であること以外は、この件に関しては全くの部外者ですが、大きな関心、というよりも危機感を抱いております。そのため、まちづくり福井株式会社のHP掲示板などにも書き込みいたしております。
私の見解をここであらためて書き込むことは控えさせていただきますが、こちらにもブックマーク登録されております『猫電車日記』の記事にあった、
「影響がないわけではないけど、電車がくるから商店街が賑わうとか、逆に廃れるとか、そういうことに本質菜因果関係はないような気がするんです。人は行きたければ多少の困難は廃しても行くだろうと。」
という一文に、本音では賛同しております(^^ゞ。
こちらこそはじめまして。
Mr.トリデさんについては、まちづくり福井、Cat-Tramさんのブログなどで存じています。これからも宜しくお願いします。
さて、今回の件は、今後の福井市のまち・交通のあり方を定める重要な懸案であるにも関わらず、15年ほど前のヒゲ線廃止の議論から全く進んでいない(あの時の商店街と市の対立のまま)、という所に不安・憤り…等々を感じています。
>「電車がくるから商店街が賑わうとか、
>逆に廃れるとか、そういうことに本質な因果関係
>はないような気がする」
これは自分も賛成です。電車はあくまで1つの交通手段であり、それ単独でまちの盛衰を決めるものにはならない、と理解しています。むしろ、電車を含めた交通手段とまちをどう結びつけるか、それによって変わってくるものだと思うのです。
まちづくり福井での掲示板の書き込みは時々読んでいます。内容から、福井市側の商店街への説明不足は感じつつも、時々内容の重複する書き込みがあり、議論が堂々巡りになっている感があります。どこかで内容を整理し、一般市民に提示できないものか、とも思いますが。
・何故LRTが必要なのか?元々の計画ではえちぜん鉄道は2重高架で福井駅に専用軌道で結節する予定だったが、新幹線を実現させるために田原町から路面部分を通る計画に行政が変更する必要が発生して、運行可能な電車(LRT?)が提案された。つまり運行能力、需要から導き出されたのではなく、費用対効果の検証もされていない。
・何故ルートの選定が先なのか?福井市の都市交通戦略は終わったが、市は地元のとの交渉に着手する気は無いようだ。それは新幹線の認可が下りておらず、勝山線の高架乗り入れ方法、金額も決まっていない。再開発も進まずいつ西口駅に着手できるかも分からない。LRT自体の費用負担についても。とりあえず地元を振り切っても県にバトンを渡したかったのが本音のようだ。日経流通新聞では「市民の委員は拮抗。行政や交通事業者の委員多数で決定」とある。当面進まない計画の為に活性化の議論をせずに強行し、不協和音を全国に響かせた影響は大きいと言える。
あくまで航空写真での判断になりますが、B案の駅前ロータリー進入部分の急カーブを、長さ18m・幅2800mm級の鉄道車両は曲がることが出来ないと思われるからです。
今福井鉄道は、名鉄の廃線から譲られた軌道形車両が主力になっていますが、それでも鉄道形車両が入線できない構造は許容しないと思われます。
理由は、1.将来えちぜん鉄道との相互乗り入れが実現した際、鉄道形車両しか持たないえちぜん鉄道車が福井駅前に入れなくなる。2.将来取替用に大手私鉄から払下車、あるいは新製にしても近年規格化されているローコスト車の導入が出来なくなる。3.当然、現用の200形、600・610形も使用できない。の3つです。
1.は言うまでもなく利用者の利便性に関わる問題ですから議論の余地はありません。2.はそれなら軌道形車両を導入すればいいではないかという意見もありそうですが、現在軌道線を運用している企業体(公・民問わず)で大手と呼べるのは東急電鉄だけであり、他は東京都交通局も含めて耐用年数ギリギリまでやりくりしているのが実情です。となれば将来は鉄道形車両をさらに導入することを考慮しなければならないわけです。つくってしまってからまた車両に合わせて工事するのは経済的に無駄ですから避ける、ということになるかと思います。
ご教示ありがとうございます。
A・B両案に関しては、LRT専門部会で非公開に審議されたそうで、その内容は伺うことができませんが、西口広場への急カーブがひとつの欠点として挙げられたことは確かです。記事内にも示しましたが、B案の場合、西口広場へのカーブ半径は、昔の木田のカーブ半径に近く、通行できる車両に制限が生じる(少なくとも、今の大型車両では入れない)ことは理解しています。
車両のやりくり、については盲点でした。日本で路面電車を運行している会社がいくつかあるとはいえ、払い下げで安くあげようとしてもなかなか無いものなのですね。新造車両にしても、単価が高く、やはり簡単には導入できないものと聞いています。
えちぜん鉄道に関しては、乗り入れする三国芦原線について、LRT化(県では、低床車両導入を想定)する計画があります。A案では単線に2社の電車が往来することになるため、駅前商店街が安全上の理由などで反対しています。が、B案でも車両上の制約は残るでしょう(西口広場に乗り入れせず、大通りで止めればある程度制約は緩和できるかもしれませんが…)。
こうして見ると、いずれの案にしても、どこかすっきりしない感じがします。