COIL / ミュージック from 待ち人のフェイバリットvol.2 境港
鈴木祥子 杉真理 松尾清憲/CARPENTERS MEDLEY
Taco - Singin' In The Rain (Official Video)
Pretenders - Don't Get Me Wrong - Acoustic version
未完の名作
◎遊戯
藤原 伊織 (フジワラ イオリ)
1948年大阪府生まれ。東京大学文学部卒業。1985年『ダックスフントのワープ』で第9回すばる文学賞受賞。1995年『テロリストのパラソル』で第41回江戸川乱歩賞、同作品で翌年、第114回直木三十五賞を受賞。2007年5月17日、食道癌のため都内の病院で逝去。享年59
○あらすじ
ネット上で対戦するビリヤードゲームで知り合った派遣会社勤務の30過ぎの男と、モデル事務所に登録しながら働いている20歳の女。
それぞれ家庭に事情を抱えたふたりが、バーチャルからリアルに出会い、やがて理由のわからない中年男に付きまとわれ、トラブルに巻き込まれていく様を洒脱に描いた連作短編集。
○レビュー
著者の作品に登場する人物は押し並べて魅力的である。著者はその人々を操りながらご自身の世界を紡いできた。それを“ワンパターン”だと揶揄するか、あるいは“藤原ワールド”と受け入れるかは読む側の判断であるし、それが読書の楽しみのひとつでもある。
『遊戯』 『帰路』 『侵入』 『陽光』 『回流』
この5編の短編は、それぞれとしては完結しているものの、連作短編という大きな流れの中では、多くの謎を残したまま終わっている。話の流れからすれば、あと3、4話で完結したのではないかと思われるが、それらの謎が解き明かされる日は作者急逝のため、永久に訪れない。
謎解きという意味では少々の鬱憤が溜まるかもしれないが、冒頭に述べたように、登場人物の描き方は秀逸である。もともと作者はキャラクター構築には定評のある作家であるが、ハードボイルドというジャンルということもあり、特に男性を魅力的に描くことを得意とする作家である。それが、今回はヒロインの描き方が秀逸であり、男性主人公とのW主演のような様相を呈している。今までの藤原作品ではありえない現象である。そういう意味では、今回は新境地を開いた作品であり、一種の挑戦的な試みだったのではないだろうか・・・。
私はこの小説は未完で終わって逆に良かったのではないかと思っている。これだけ精度の高いストーリーを詰め合わせたら、どういうラストを迎えたのだろう、と想像せずにはいられないのだが、これはこれで想像する余地があって良いのではではないかな、と思う。
読者各自の想像力による補完。これで作品も完成。そんなラストがあってもいいじゃないか。
藤原作品を読んだことのない人は一度その作品に触れてみることをお勧めする。ハードボイルドではあるが、ただそれだけではない。優しい筆致で描かれた文章は読んだ人々に幸福のひと時を提供する。
こんな作家がいたんだな、とただそれだけを思ってくれればいいとも思っている。
鈴木祥子 杉真理 松尾清憲/CARPENTERS MEDLEY
Taco - Singin' In The Rain (Official Video)
Pretenders - Don't Get Me Wrong - Acoustic version
未完の名作
◎遊戯
藤原 伊織 (フジワラ イオリ)
1948年大阪府生まれ。東京大学文学部卒業。1985年『ダックスフントのワープ』で第9回すばる文学賞受賞。1995年『テロリストのパラソル』で第41回江戸川乱歩賞、同作品で翌年、第114回直木三十五賞を受賞。2007年5月17日、食道癌のため都内の病院で逝去。享年59
○あらすじ
ネット上で対戦するビリヤードゲームで知り合った派遣会社勤務の30過ぎの男と、モデル事務所に登録しながら働いている20歳の女。
それぞれ家庭に事情を抱えたふたりが、バーチャルからリアルに出会い、やがて理由のわからない中年男に付きまとわれ、トラブルに巻き込まれていく様を洒脱に描いた連作短編集。
○レビュー
著者の作品に登場する人物は押し並べて魅力的である。著者はその人々を操りながらご自身の世界を紡いできた。それを“ワンパターン”だと揶揄するか、あるいは“藤原ワールド”と受け入れるかは読む側の判断であるし、それが読書の楽しみのひとつでもある。
『遊戯』 『帰路』 『侵入』 『陽光』 『回流』
この5編の短編は、それぞれとしては完結しているものの、連作短編という大きな流れの中では、多くの謎を残したまま終わっている。話の流れからすれば、あと3、4話で完結したのではないかと思われるが、それらの謎が解き明かされる日は作者急逝のため、永久に訪れない。
謎解きという意味では少々の鬱憤が溜まるかもしれないが、冒頭に述べたように、登場人物の描き方は秀逸である。もともと作者はキャラクター構築には定評のある作家であるが、ハードボイルドというジャンルということもあり、特に男性を魅力的に描くことを得意とする作家である。それが、今回はヒロインの描き方が秀逸であり、男性主人公とのW主演のような様相を呈している。今までの藤原作品ではありえない現象である。そういう意味では、今回は新境地を開いた作品であり、一種の挑戦的な試みだったのではないだろうか・・・。
私はこの小説は未完で終わって逆に良かったのではないかと思っている。これだけ精度の高いストーリーを詰め合わせたら、どういうラストを迎えたのだろう、と想像せずにはいられないのだが、これはこれで想像する余地があって良いのではではないかな、と思う。
読者各自の想像力による補完。これで作品も完成。そんなラストがあってもいいじゃないか。
藤原作品を読んだことのない人は一度その作品に触れてみることをお勧めする。ハードボイルドではあるが、ただそれだけではない。優しい筆致で描かれた文章は読んだ人々に幸福のひと時を提供する。
こんな作家がいたんだな、とただそれだけを思ってくれればいいとも思っている。