Aria (Momo alla conquista del tempo) Gianna Nannini
ザ・ダイナマイツ/のぼせちゃいけない(1968年)クリックしてyoutubeで観てね。
The Clash - Bankrobber (Official Video)
星めぐりの歌 LUCA
ようこそ我が家へ
雨が降ってきたので慌ててコロの住んでいるケージに向かう。
ケージは上部に屋根がないので、シートを被せてやらないと雨が入り込んできて大変だ。うかうかしているとコロの”巣”の前が水たまりになりびちゃびちゃになってしまう。
私はケージにシートを被せ、ほっと一息ついた。
「元気かい?」
腰をかがめてコロに呼びかけると彼は”巣”の奥の方に丸まって縮こまっている。
心なしかびくびくしているようにも見える。
彼は雨が嫌いなのだ。
「お前も臆病もんだなあ」
そう声をかけてみても、いつもの勇ましさはどこへやら、彼は決して”巣”から出てこない。
いつもは道行く人々に吠えまくるくせに、雨の日は人が通っても見やしない。
困った奴だ。
私はふーとため息をついて彼をみる。
おまえももう十歳になるのか・・・・
私はふと彼と出会った頃のことを思い出した。
あの日私たち一家は、ペットショップを何件か見て回っていた。
お目当てはハムスターだ。
子供たちも大きくなってきたことだし、ここらで生きることの大切さを知るために小動物でも飼うかと私が発言したことがことの発端である。
なぜハムスターなのかと言うと、一緒に住んでいた私の父親が犬猫嫌いで、まあ籠の中で飼う分にはいいだろうという条件のもと、小動物のなかでも一番飼いやすそうなハムスターになったのだ。
でもいざペットショップに行ってみると、いろいろな動物が目に入る。やれインコがいいだの、金魚でもいいんじゃないなどとのたまうものどもがでてきた。
私たちは、ペットショップを回るうち本来の目的、ハムスターのことはすっかり忘れていた。
そして恐らく三件目であろうか、そこでやっとハムスターのことを思い出し、妻と二人、相談し、ここで買おうということになったのだった。
私は息子たちに意思を伝えるため、隣に目をやると息子たちがその場にいないことに気が付いた。
「おい、あいつらはどうした」
妻に問うと、呑気な目をして知らないと言う。知らないでは済まされない、
慌てて私は店内を探した。
店内はそれほど広くはないのに二人ともすぐには見つけ出すことが出来なかった。途中でハタとまだ探していないコーナーがあるなと思い出し、そのコーナーに行ってみた。
発見。
息子たちは店内の奥にある犬のコーナーにいたのだ。
傍らに店員らしき人物が立っており、次男がなにやら黒き物体を抱き、長男がその様子を眺めていた。
子犬か。
近づいて、私は次男と子犬を交互に見た。
「犬はダメだぞ」
私が言うと、
「分かっている」
と次男。
「でも、こいつ可愛いだろ」
次男が子犬の喉元を撫でてやると子犬は天使にでも抱かれているように幸せそうな顔をした。
「そうだな」
「顔近づけると舐めてくれるんだぜ、こいつ」
「そうか」
「こいつさ、大人しいんだ。さっきから吠えもしない」
次男はなかなか子犬を手放そうとしない。子犬をぎゅっと抱きかかえたまま、私を見上げた。私を見るその目はまるでマリアさま様にお祈りをささげるキリストのような目だ。
私は残酷に思いながらも、彼から子犬を引きはがし傍らにいる店員に手渡した。
「バイバイ」
次男の寂しげな顔が私の目に映った。
結局ハムスターを飼うのはやめた。
次男が突然いらないと言い出したからだ。妻は「どうして?」と訝り、長男は口を尖らしたが、結局私たちは諦め、車に乗り込み帰途についた。
帰りの道中、次男は一言も言葉を発していなかった。
ミラーを見ると暗い顔をしている。
「どうした」
あまりに無口なので、私が声をかけると彼は首を振るばかりで何も答えなかった。
「コロのことが忘れられないんだよな」
「コロ?」
「あいつ、さっきの犬のことそう呼んでいたんだよ」
長男がそういうと次男はキッと目を見開き、長男を睨んだ。
「コロか」
確かにさっきの子犬にはぴったりの名前だ。
よっぽど気に入ったんだな。
次男は長男と違い、それまで我がままを言ったことがなかった。なんでも我慢して心の内に仕舞い込んでしまうタイプだ。それは、四人兄姉の末っ子である私も同じだった。なにをするのも兄が先、我がままなど言ったことがなかった。
我がままは罪だ。それがそれまでの私における一環した正義であったのだ。
だが、相応の年をとり、それで良かったのかと自らに問うことがあった。たまには・・・、たまには我がままを通してもいい時があったんじゃないかと。
私は次男の姿に過去の自分を重ね合わせていた。
小さなころから、我慢して我慢して、・・・・悲しくて。
よしっ!
私は車をコンビニの広い駐車場に入れ、大きな弧を描き、そしてまた通りに出て元来た道を引き返した。
「どうしたの?」
妻がびっくりして私にたずねた。
「戻るんだよ」
「どこに?」
「さっきの店にさ」
「なにか忘れ物?」
「そう、忘れ物。・・・引き取りに行くんだ、・・・コロをね」
「え?本当?」
次男がびっくりした声で叫んだ。
「でも、祖父ちゃんが・・・」
「祖父ちゃんも分かってくれるさ」
私は確証もなくそう言った。確証はなかったが、子供たちが必死にお願いすれば父は唸りながらもうんと言ってくれるようなそんな気がしていた。
私は車を走らせながら、コロを迎えにいったら何をしてあげようかと考えていた。
迎えに行ったら、まず次男がコロを抱きかかえて車に乗り込む。
一緒に車に乗ったコロは今までの自分の世界と違う世界があることに気付くだろう。
恐らく落ち着かないに違いない。
それを次男が一生懸命宥める。
やがて、コロの驚きは興味へと変わりじっと移り変わる外の景色をみるようになる。こんな世界があったんだ。コロはきっと期待に胸膨らませるに違いない。
もしかして、同時にどこに連れていかれるかもわからない不安もあるかもわからない。そのときには家族の誰かが笑いかけてやれば良い。
そしてそうこうしている内に家に着く。
家に着いたら?そう、家に着いたら・・・
子供たちが真っ先に車から降り、我が家の扉を開け、コロに向けてこう言う。
ようこそ我が家へ。
ザ・ダイナマイツ/のぼせちゃいけない(1968年)クリックしてyoutubeで観てね。
The Clash - Bankrobber (Official Video)
星めぐりの歌 LUCA
ようこそ我が家へ
雨が降ってきたので慌ててコロの住んでいるケージに向かう。
ケージは上部に屋根がないので、シートを被せてやらないと雨が入り込んできて大変だ。うかうかしているとコロの”巣”の前が水たまりになりびちゃびちゃになってしまう。
私はケージにシートを被せ、ほっと一息ついた。
「元気かい?」
腰をかがめてコロに呼びかけると彼は”巣”の奥の方に丸まって縮こまっている。
心なしかびくびくしているようにも見える。
彼は雨が嫌いなのだ。
「お前も臆病もんだなあ」
そう声をかけてみても、いつもの勇ましさはどこへやら、彼は決して”巣”から出てこない。
いつもは道行く人々に吠えまくるくせに、雨の日は人が通っても見やしない。
困った奴だ。
私はふーとため息をついて彼をみる。
おまえももう十歳になるのか・・・・
私はふと彼と出会った頃のことを思い出した。
あの日私たち一家は、ペットショップを何件か見て回っていた。
お目当てはハムスターだ。
子供たちも大きくなってきたことだし、ここらで生きることの大切さを知るために小動物でも飼うかと私が発言したことがことの発端である。
なぜハムスターなのかと言うと、一緒に住んでいた私の父親が犬猫嫌いで、まあ籠の中で飼う分にはいいだろうという条件のもと、小動物のなかでも一番飼いやすそうなハムスターになったのだ。
でもいざペットショップに行ってみると、いろいろな動物が目に入る。やれインコがいいだの、金魚でもいいんじゃないなどとのたまうものどもがでてきた。
私たちは、ペットショップを回るうち本来の目的、ハムスターのことはすっかり忘れていた。
そして恐らく三件目であろうか、そこでやっとハムスターのことを思い出し、妻と二人、相談し、ここで買おうということになったのだった。
私は息子たちに意思を伝えるため、隣に目をやると息子たちがその場にいないことに気が付いた。
「おい、あいつらはどうした」
妻に問うと、呑気な目をして知らないと言う。知らないでは済まされない、
慌てて私は店内を探した。
店内はそれほど広くはないのに二人ともすぐには見つけ出すことが出来なかった。途中でハタとまだ探していないコーナーがあるなと思い出し、そのコーナーに行ってみた。
発見。
息子たちは店内の奥にある犬のコーナーにいたのだ。
傍らに店員らしき人物が立っており、次男がなにやら黒き物体を抱き、長男がその様子を眺めていた。
子犬か。
近づいて、私は次男と子犬を交互に見た。
「犬はダメだぞ」
私が言うと、
「分かっている」
と次男。
「でも、こいつ可愛いだろ」
次男が子犬の喉元を撫でてやると子犬は天使にでも抱かれているように幸せそうな顔をした。
「そうだな」
「顔近づけると舐めてくれるんだぜ、こいつ」
「そうか」
「こいつさ、大人しいんだ。さっきから吠えもしない」
次男はなかなか子犬を手放そうとしない。子犬をぎゅっと抱きかかえたまま、私を見上げた。私を見るその目はまるでマリアさま様にお祈りをささげるキリストのような目だ。
私は残酷に思いながらも、彼から子犬を引きはがし傍らにいる店員に手渡した。
「バイバイ」
次男の寂しげな顔が私の目に映った。
結局ハムスターを飼うのはやめた。
次男が突然いらないと言い出したからだ。妻は「どうして?」と訝り、長男は口を尖らしたが、結局私たちは諦め、車に乗り込み帰途についた。
帰りの道中、次男は一言も言葉を発していなかった。
ミラーを見ると暗い顔をしている。
「どうした」
あまりに無口なので、私が声をかけると彼は首を振るばかりで何も答えなかった。
「コロのことが忘れられないんだよな」
「コロ?」
「あいつ、さっきの犬のことそう呼んでいたんだよ」
長男がそういうと次男はキッと目を見開き、長男を睨んだ。
「コロか」
確かにさっきの子犬にはぴったりの名前だ。
よっぽど気に入ったんだな。
次男は長男と違い、それまで我がままを言ったことがなかった。なんでも我慢して心の内に仕舞い込んでしまうタイプだ。それは、四人兄姉の末っ子である私も同じだった。なにをするのも兄が先、我がままなど言ったことがなかった。
我がままは罪だ。それがそれまでの私における一環した正義であったのだ。
だが、相応の年をとり、それで良かったのかと自らに問うことがあった。たまには・・・、たまには我がままを通してもいい時があったんじゃないかと。
私は次男の姿に過去の自分を重ね合わせていた。
小さなころから、我慢して我慢して、・・・・悲しくて。
よしっ!
私は車をコンビニの広い駐車場に入れ、大きな弧を描き、そしてまた通りに出て元来た道を引き返した。
「どうしたの?」
妻がびっくりして私にたずねた。
「戻るんだよ」
「どこに?」
「さっきの店にさ」
「なにか忘れ物?」
「そう、忘れ物。・・・引き取りに行くんだ、・・・コロをね」
「え?本当?」
次男がびっくりした声で叫んだ。
「でも、祖父ちゃんが・・・」
「祖父ちゃんも分かってくれるさ」
私は確証もなくそう言った。確証はなかったが、子供たちが必死にお願いすれば父は唸りながらもうんと言ってくれるようなそんな気がしていた。
私は車を走らせながら、コロを迎えにいったら何をしてあげようかと考えていた。
迎えに行ったら、まず次男がコロを抱きかかえて車に乗り込む。
一緒に車に乗ったコロは今までの自分の世界と違う世界があることに気付くだろう。
恐らく落ち着かないに違いない。
それを次男が一生懸命宥める。
やがて、コロの驚きは興味へと変わりじっと移り変わる外の景色をみるようになる。こんな世界があったんだ。コロはきっと期待に胸膨らませるに違いない。
もしかして、同時にどこに連れていかれるかもわからない不安もあるかもわからない。そのときには家族の誰かが笑いかけてやれば良い。
そしてそうこうしている内に家に着く。
家に着いたら?そう、家に着いたら・・・
子供たちが真っ先に車から降り、我が家の扉を開け、コロに向けてこう言う。
ようこそ我が家へ。
「あったかいんだから」
こんな歌あったよね。クマムシ 古っ
でも今、世の中殺伐として皆の目が死んでる?
うかつに咳をしたら睨まれる。
優しい文字の展開に子ども達の困惑から満面の笑みへ…
上手いなぁ ありがとうです。
さて今日はホワイトデー
愛する妻へお返し・・なーんだ?( ・ᴗ・ )و
そうなんですよね~~、殺伐。
子供たちが家の中でじっとしていられず公園であそんでいれば、「うるさい!」てね。ちょっと理解不能です。
小さな駅でわざとコロナだとか咳をしたりして大騒ぎして捕まったって、それは当然のことだけど、そのうち咳をしただけで罰金なんてことにならないかと心配。
ホワイトデ~
ひひひっひー。( *´艸`)
優しいご家族に貰われて、コロも幸せですね!
いえ、コロもご家族も幸せですね^^
そうですよ、コロです。(#^.^#)
この物語はほぼ事実に沿って書いています。
親父は孫たちが頼んだら二つ返事でOKを出しました。
俺の時はまったく取り合わなかったくせに、と少し息子たちに嫉妬しましたが。
コロとは長い付き合いになりますが、年取った未だに我がまま犬。
自分が一番家の中で偉いと思っているようです。
でも、最近少しは丸くなったかなぁ。(^-^;