からくの一人遊び

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John Lennon & Joko Ono - Give Peace a Chance (1969)

2021-09-22 | 小説
John Lennon & Joko Ono - Give Peace a Chance (1969)



時代/中島みゆき



Mazzy Star "Quiet, The Winter Harbor"



BRAHMAN「 Slow Dance 」LIVE



(ちんちくりんNo,49)


 車に乗り込んでからしばらくの間、富士山にかかっている雲が晴れることを期待してフロントガラス越しにその様子を窺っていたが、いくら待ってみても変わりはしない。それで山を下ることにし、麓の街の入口にあるファミレスに寄った。遅い昼食とそれなりのコーヒーを飲んで時間を潰し、その後、ふと思い出して町と町の境を流れる利根川沿いの公園に向かった。そこには近隣市町村では親しみを込めて"ボロ電"と呼ばれる路面電車が展示されていた。一両、そこに置かれたボロ電は濃い紫色一色に塗られている。煤けて所々濃淡があるのを見つけたときには、やはり時間の流れというものを感じないわけにはいかなかった。昭和三十七年に廃止されたというからもうかれこれ動かさなくなって二十二年になる。それまでは中核都市からここまで、今はバスが運行している国道を恐らく一時間半かけて走っていたのだ。僕は右手に南北に走るその国道を眺めながら、その通りに線路が敷かれていた当時の風景を夢想した。東京には都電荒川線があるから、かほるには特段珍しいものではないだろうが、それでもセピア色の写真を想起させるようなその佇まいには何らかの衝撃があったのだろう。しばらくのあいだ黙してボロ電を眺め、動こうとしなかった。うちに帰って来たのは午後四時を過ぎた頃だ。帰ったらすぐ近所にある僕の母校・中学校まで散歩でもと相談していたのだが、待ち構えていた母に、かほるはさっそく連れて行かれた。何でも夕食を手伝ってとのことだった。お客であるかほるに夕食の手伝いなんていう母も母だが、それにキャッキャ笑いながら「私、料理下手なんですがいいですぅ?」とついて行くかほるもかほるだ。とはいえやはりかほるは不思議な娘だ。すぐに人を魅了する何かがある。わざわざ出がけに着替えを用意した姉、そして本来は気難しく警戒感の強い母をこうまでさせるものは、僕の場合と同じように、「まわりの空気が変わるから」或いは「安心感」の為せる業なのかもしれない。それでも不思議・・・だ、と考えていたところで僕は居間に寝転んだままふいに意識が途切れたのだった。



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