からくの一人遊び

音楽、小説、映画、何でも紹介、あと雑文です。

This Is The Kit - Moonshine Freeze (Rough Trade Session)

2021-03-16 | 音楽
This Is The Kit - Moonshine Freeze (Rough Trade Session)



[Official] 大滝詠一「君は天然色」Music Video (40th Anniversary Version)



斉藤和義 - Boy [Music Video]



Never Been Gone - Carly Simon





(ちんちくりんNo,9)


 三時間程部室に籠ってみても僕の作業は一向に捗らなかった。原稿用紙六枚、書いてみたものの当初のテーマからどんどん外れていくような気がして、たまらずにその六枚を次々に硬く丸めてごみ箱に放り込んでしまった。原稿三十枚で止まったまま。
 ふと見ると圭太も貢も順調そうだ。圭太は音楽評論に映像・音響技術論、貢は現代社会文化・風俗を絡めての映画評論を受け持っている。僕の小説を入れて僕らは一冊の本を作ろうとしている。ミニコミ誌という訳ではないが、”映画研究部での四年間”の集大成として何かそういうものを残したかったのだ。映画研究部も僕らの後、入部してくる者はいなかった。つまり今年で最後ということだ。丁度いい、ということもあり僕らは当初映画研究部でやってみたかったことを文字で残すことに決めたのだった。
 僕が小説を載せることにしたのは、何のことはない、もともと大学生活の中で小説を一本ものにしたかったからだ。映画研究部に入ったのは、その小説を最終的に映像にしたかったから。なのに現実は違った。映画研究部の実態は”革命オタク”の集まりで、北は北海道、南は沖縄まで何らかの抵抗運動があるとその度に現地へ向かった。最初はその運動の熱さに僕らも影響され、運動が終わった後は充足感を感じたものだが、年月が経つにつれて、その気持ちも段々と薄れていった。また、”映画も撮る”といっても、八ミリカメラで誰かひとりがその運動の様子を撮るだけで、結局はほぼ三年間、”革命オタク”の先輩たちに振り回されただけだった。先輩たちは就職が決まった後、僕らに言ったものだ。

「俺らはもう若くはない。老兵は去るのみだ。後は頼むぞ」


・・・バカヤロウだ。

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Von Sell - Ivan | Sofar NYC

2021-03-15 | 音楽
Von Sell - Ivan | Sofar NYC



Sting - Shape of My Heart (Official Music Video)



くれない埠頭   鈴木 博文



"APPLE" TOWA TEI WITH RINGO SHEENA




○「阿弥陀堂だより」
著者 南木 佳士


1951年、群馬県に生まれる。現在は長野県佐久市に住み、総合病院に内科医として務めつつ、地道な創作活動を続けている。81年、難民医療日本チームに加わり、タイ・カンボジア国境に赴き、同地で『破水』の第53回文學界新人賞受賞を知る。89年『ダイヤモンドダスト』で第100回芥川賞受賞。

あらすじ

心の病をかかえる美智子は、夫の故郷、信州に二人で移り住む。
里山の美しい村に帰った夫婦は、阿弥陀堂というお堂に暮らす96歳の老婆おうめを訪ねる。
おうめのところに通ううちに、孝夫は声の出ない少女小百合に出会う。
彼女は村の広報誌に、おうめが日々話したことを書きとめ、まとめた「阿弥陀堂だより」というコラムを連載していた。
素朴だが温かい人々とのふれあい、季節の美しい移ろいに抱かれて暮らしていくうちに、美智子と孝夫はいつしか生きる喜びを取り戻していく。

レビュー

 
この小説を読むことになったきっかけは、何か良い本はないかと電子書籍のホームページを開いてみていろいろな本のあらすじを追った結果、「医師であり、心の病を負った妻」という文句が眼に入ったからだった。作者である南木 佳士氏も、医師でありパニック障害を患った過去があるという。それでこれは読んでみる価値はありそうだと手にすることなったのである。
手にしたのはいいが、最初、私は最後まで読み終えられるかどうか心配していた。どちらかというと、ミステリーのほうが読む機会の多い私にとって純文学であるこの小説は少し荷が重いのではないかと思ったからだ。でも、話が進めば進むほど、魅かれていった。確かに、穏やかな小説だが、でも、読んでいるうちに、心が暖まり癒された。自然を描いた文章を読むと、長野県の田舎風景も頭の中に展開していき自分はその風景にいて、春の風を感じ、木の香りが匂っているような気がして気持ちがよかったのである。
核となる人物は4人である。売れない作家の上田孝夫、医師でありパニック障害を患った妻の美智子、声の出ない小百合、阿弥陀堂というお堂に暮らす96歳の老婆おうめだ。4人がそれぞれ単独で小説にしても良いくらい魅力的に描かれており、特におうめばあさんの描き方が秀逸だ。
おうめばあさんが語る話は、一見つまらない。・・・が、よく読んでみると「生と死」というものをつくづく考えさせられる。「阿弥陀堂に入ってからもう四十年近くなります。みなさまのおかげで今日まで生かしてもらっています。阿弥陀堂にはテレビもラジオも新聞もありませんが、たまに登ってくる人たちから村の話は聞いています。それで十分です。耳に余ることを聞いても余計な心配が増えるだけですから、器に合った分の、それもなるたけいい話を聞いていたいのです」というくだりは、現代の情報社会で生きている私達にとってはとても耳が痛い。
 最後に何度も言うようだが、この本を読むことによって心が癒された。凄く気持ちがよくなる。妻である美智子の描き方に期待して読み始めていた小説であるが、終わっても言葉にならない小さな感動が心に芽生えていた。

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フジファブリック (Fujifabric) - 桜の季節(Sakura No Kisetsu)

2021-03-14 | 音楽
フジファブリック (Fujifabric) - 桜の季節(Sakura No Kisetsu)



Akino Arai (新居昭乃) - Nukumori ga koishikute (ぬくもりが恋しくて)



エレーン Cover by 福原希己江



T字路s "愛の讃歌" (Official Live Video)






こういうのはどう言ったらいいのか。

ホームドラマ?

とすればとても新しい、今まで見たことのないホームドラマだ。

特に大きな出来事があるわけではない。

でも、少しずつ、少しずつ、主人公の心に変化が生じて行き、最後の辺りで一気に加速して”ハッピー・エンド”という流れだ。

その”ハッピー・エンド”も曲者である。

人によって感じ方が違うかもしれない。

私にとってはとても味わい深い小説であった。

コメント (2)
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VENUS - THE FOG (official audio)

2021-03-13 | 音楽
VENUS - THE FOG (official audio)



矢野まき - 「さよなら色はブルー」[MV]



Shocking Blue - Venus (Live @ Top Of The Pops 1970) HD



ジョングルール ダンス "Jongleur Dance" Live / ハンドリオン (Handdlion)




IQ18で重度知的障害とされている次郎くんが日常で使う10の言葉を繋げて、歌にした。

七尾旅人というシンガーは若い頃から”天才”ともてはやされていたが、でもこういう自然体というか、誰に対してもとても優しいし、””おごり”というものがない。

きっと十代に辛い経験をしたのであろう。(ひきこもりだったという話がある)

ただ彼は権力者には厳しいし、原発廃止論者だし、時に過激な発言をする。

それでいいと思う。

今の日本のミュージシャン大人しすぎる。

もっと声をあげてもいいのだよ。

”音”でそれを表してくれてもいいのだよ。

お願いします。
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Jackie Evancho: 18-Year-Old STUNNING Opera Singer Is BACK! | AGT Champions

2021-03-12 | 小説
Jackie Evancho: 18-Year-Old STUNNING Opera Singer Is BACK! | AGT Champions



Kitri -キトリ-「未知階段」 “Michi kaidan” Music Video [official]



折坂悠太 - 鶫(つぐみ)(Official Studio Live Video)



Deee-Lite - Groove Is In The Heart (Official Video)





(ちんちくりんNo,8)


 圭太の懸念が現実のものとして認識せざるを得なくなったのは翌日のことだった。僕らは体験入部のために、第三キャンパスからより北に離れたところに位置する第一キャンパスの自然科学研究練前に集合し、後から現れた先輩によって屋上へと連れられた。先輩は西隅の建物を、あれが部室だ、と指さした。―そう、今まさに僕らが作業しているこの建物のことだ―。こんな場所に、と驚いたがそれよりも異様に驚かされたのは部室のドアを開けてからだった。
 部屋の中にはテーブルが中央に、その左右には胡坐をかいた男二人、その後ろ正面の壁には無数のプラカードや横長の大きな看板らしきものが重ねて横に並べられていた。隅にはいくつかのヘルメットとゲバ棒の束。大きな看板には下手くそな文字が躍っていた。

”日本革命闘争
権力の暴走許さぬ!”

 僕らが唖然としているとテーブルの左側に座っている見た目は優しそうな男が手招きをした。「大丈夫だ、取って食いやしない」僕らは靴を脱いで部屋に上がり、僕らを連れてきた先輩がテーブルの奥に座るのを見てからへなへなと足を折り、正座した。
 それから一時間ほど彼らの説明を聞いた。ここは映画も撮るがこういう社会運動にも取り組むということ、何処のセクトにも属していない、部となっているが、我々は革命オタクで趣味の延長のようなものだ、等々・・・。
 その説明を聞いている間圭太はニヤニヤしながら「おもろやんけ」と独り言ちるようになり、貢はずっと下を向いているばかりであった。僕は先輩たちが説明し終わるのを待ってから最後に勧誘のチラシを胸のポケットから取り出してテーブルに置き、”映画研究部”と書いてあるその文字を指し示して「高倉の健さん」みたいに出来るだけ静かにでも凄みを利かせた声で質問した。

「これじゃあ、詐欺のようなもんですぜ」

 するとそれを聞いた正面の先輩が意外だという顔を見せながらも、口端を上げ、”映画研究部”と書かれた文字の下、空白を挟んで小さな文字が並んでいるところに人差し指を置いた。それは本当に”見逃しなさい”という位に小さく、気づいてなかった僕はチラシに目を近づけならねばならなかった。

 ”私たちは社会運動を通じて提言をしていきます”

「そんな」僕は騙されたことによる相手への怒りよりも、むしろそんな幼稚な手口に気づかなかった自分に腹がたって仕方がなかった。
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