とても嫌なことがあったので……
今日はものすごく遠回りして帰ろうと。
夏は全然、そうでもないけど、
冬は素敵な眺めになる所があるのさ。
久しぶりに、
それを見て帰ろう。
小旅行は癒し。
地上はようやく
白くなり始め。
イルミネーションと街は
1つになっていく。
彼方へ続くこの線路を、
今夜はたどっていこう。
今しか見られない、
今日しか見られない、
あの眺めを。
電停を出ると、
そこはもう一面の雪。
昼間の吹雪が去り、
凛と張ったような空気。
久しぶりの寒空の、
この誰もいない時間こそは、
その今しか見られないものを
実体化せしめる魔法なのだ。
ここより
近づいてはならない。
この視界が必要だ。
カメラは肉眼に劣る
ということを、
この景色は教えてくれる。
誰ぁれも来ない。
風のない夜。
眺めというものは、
実に、
見下ろすばかりではないな
と。
ブルッと体が震える。
寒い。
腕時計を見れば、
地上に出てから、はや、
2時間が経とうとする。
しかし、
まだ間に合うわ。
永遠に流れる
空間音楽。
平日の夜は静かだ。
ここで夕食にしよう。
奮発という言葉は、
今日のこの時のためにある。
ご飯、
特に甘いものの力は
すごいね。
いいわ。さあ、これで
眠られる。