がたん! という おと がして、
びっくりして、めを さました。
くらい へやの なかに、
あおじろい ゆきの ひかりが、
ぼーっと だれかの せなかを てらして いる。
まるい せなかが、 カーテンの かげで
ぬれた ように、 ぼーっと、 あおじろく ひかっている。
せなかの むこうに さんかくけいの ぼうしが みえる。
ぼうしも その うえの まるい かざりも、
ぬれた ように あおじろく ひかっている。
ぼうしの したには まるい めがね。
まるい めがねが、 キラッと、
ゆきの あかりに あおじろく ひかった。
「だれ?」
だれ?と いわれて、 まるい せなかが
キュッと ちぢこまる。
まるい めがねが せなか ごしに
こっちを むいた。
まるい はなの した には、 あおじろい ひげ。
ひげに かくれて くちは みえない。
モゴモゴと ひげが うごいて いる。
「だれ?」
また だれ?と いわれて、 まるい めがねが
ピョンと とびあがる。
まるい めがねが、 まるい せなかの むこうに
かくれた。
いまは ゆきの ひかりに、 まるい せなか だけが
ぬれた ように、 ぼーっと、 ひかって みえるだけ。
そこから ひくい こえが きこえて きた。
「ごめんよ。 おこす つもりは なかったんだ。
なつかしい フィギュアが あったから、 つい、
てに とって しまった。 そのとき なにか
おとした らしい。 めが わるくてね。 きみは
しょうらい おはなしを かく ように なる。
そして ある クリスマスイブの よるに、
むかしの じぶんへ、 おはなしを かこうと おもう。
ちょうど きみ くらいの こどもにね。 だけど、
かけないんだ。 アイデアは うかんでくる。 でも、
どれも これも もう だれかが かいてるんだ。
こまって しまってね。 そしたら ここに いた。」
それきり、 こえは きこえなく なった。
まるい せなかが ひくくて たいらに なった。
「かいて!」
おもわず そう いうと、 たいらに なった せなかは、
また まるく なった。
フフフと、 ひくい わらい ごえが きこえる。
そして また、 ひくい こえが きこえた。
「そう、 だね。 かかなきゃ。 だれかの おはなしに
にて いても、 じぶんの おはなし だよね。
ありがとう。 きみは……」
こえは もう きこえなく なった。 まるい せなかも
みえなく なった。 めを とじる。 めを あけると、
カーテンは あさの ひかりに かがやいて いた。
おしまい。