時は幕末、樋口一葉の師匠歌人中島歌子(登世)の生涯を描いた
歴史小説でもあり恋愛小説ともいえます。
幕末の江戸で熱烈で無垢な恋を成就させ、水戸の天狗党の一士林以徳に嫁いだ登世。
水戸藩の天狗党と諸生党の内紛の中、時代の大きなうねりに翻弄されつつも
懸命に生きようとする主人公。
その生き様は幕末を生きた女性の芯の強さがひしひしと感じられます。
「君にこそ恋しきふしは習ひつれ さらば忘るることもをしへよ」
(恋することを教えたのはあなたなのだからどうか御願いです。忘れ方も教えて下さい)
という恋歌。それは夫への恋情は尽きることがない歌です。
その夫への想いが歌への精進へと続くのですから・・。
また、遺書に諸政党の市川三佐衛門の孫、庸(澄の三男)を養子として
自分の家を継がせる文(ふみ)を残していることも、生き様の締めくくりとして
際立っているなぁと思うのだった。