○五体俳句637・拳7・松野苑子03・2023-09-12(火)
○「拳もて均す陶土や野分晴」(『遠き船』2022)(→松野苑子03)
○季語(野分晴・仲秋)【→五体俳句-索引1・索引2・索引3・索引4・索引5】【→俳人一覧(あ・いい・いた・うえ・お・か・き・くけこ・さ・し・すせそ・た・ちつてと・な・にぬねの・はひ・ふへほ・ま・みむめも・や・ゆ~)】【→俳句結社索引】
【鑑賞】:松野苑子第三句集『遠き船』鑑賞。謝謹呈2022年8月17日。2016年第62回角川俳句賞受賞後第一作句集。すでに諸家のすぐれた書評が書かれていますが、小生独自の視点で感謝を込めて鑑賞させていただきました。まずはゆったりと一句一句鑑賞の喜びにひたりながら50句を選びました。その中から特に「動詞」の表現に注目させられた5句を鑑賞させていただきます。
●p009「花見むと退るや土の踏み心地」(「百の扉」の項)
→「退(すさ)る」という動詞に注目した。なるべく多くの桜を視界に入れるための行為であろう。退るときの柔らかな土の感触。
●p033「拳もて均す陶土や野分晴」(「百の扉」の項)↑
→「均(なら)す」という動詞に注目した。でこぼこの拳で何度もたたいて陶土を均す。てのひらよりも力強い拳で丹念に。
●p094「春の日や歩きて遠き船を抜く」(「消せさうな雨」の項)
→「歩く」と「抜く」という動詞である。春の陸上をゆったりと歩きながら、はからずも沖の船を抜いてしまった。句集名にもなった句。春の遠近感満喫の代表句といえよう。
●p122「指入れて指長くなる泉かな」(「消せさうな雨」の項)
→「入れる」という動詞である。泉の冷たさを量るための行為ではなかろうか。長くなる指は視神経を持ち泉の底を覗いているかのようだ。
●p179「桜ふぶき人のかたちを消してゆく」(「人のかたち」の項)
→「消す」という動詞である。桜を観ている人のかたちが桜吹雪の中にまぎれてしまう。
作者の優しさに溢れる立ち位置を表した「動詞」の表現に注目させられた句集でした。ありがとうございました。
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