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日中戦争ソリティア 19

2021-06-13 11:22:13 | ボードゲーム
 8月11日、坂田支隊(兵員700)は旅団長の指示に反して白羊城から進撃を開始。同日、腰堡を攻略した。
 坂田支隊はこの高地を確保しようとするが、敵の反撃は予想外にはげしいものだった。

 以下、辻少佐の回想録より抜粋。

「苦笑いされる旅団長の顔が目に浮んだ。
 馬が、辛うじて通れる谷底の川原路を北進すると、両側の断崖上に、待ち構えた敵から狙い撃たれた。素早く馬から降りる。
 機関銃の音が、初めて見る敵の装備のよさを誇示しているかのようだ。五年前、上海で戦った十九路軍とは、同日の論ではない。川原に散開して射撃を始めたが、地の利は敵にあり、忽ち尖兵長がやられた。常岡中将の令息だ。胸をやられても気丈な少尉。これがその後、約八年間の戦場で見た最初の負傷者である。漸く、敵を退けて腰堡西側の高地によじ上った。山砲の中隊長有川大尉は、陸士の同期生であり、彼自ら砲隊鏡を取って、射弾の観測をやっている。富士の裾野で、歩砲兵の連合演習をやった当時そのままの姿勢で、彼は、今実敵の頭上に必中の弾を浴せている。

 北から、続々増加する敵の縦隊が、その出鼻をたたかれて、右に左に、正面を拡げている。
 夥しい敵だ。 僅かに七百名の支隊に数倍の敵が、頭上に炸裂する砲弾に眼もくれぬかのように、 後から後からと増加して来る。
 本道方面の敵を、この小兵力で突き破る自信はない。何とか手薄な方面を選んで、敵よりも早く長城線に取りつこうと、支隊長は決心した。
 僅かな一部を腰堡に残して、本道方面の敵を阻止させ、支隊の主力は尾根伝いに横這いした。
 右も左も銃砲声に囲まれながら、八月十二日 の夜をこの山上で明かしたが、戦場は霧に閉ざされて、彼我の識別が難しい。 」
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日中戦争ソリティア 18

2021-06-13 00:57:00 | ボードゲーム
 8月11日早朝、第11独立混成旅団は昌平より南口の敵軍を攻撃。辻少佐は白羊城への陽動作戦を行うため、坂田支隊に配属された。


 別働隊をひきいる坂田中佐は猪突猛進タイプの軍人であったため、それをひきとめるために辻少佐が配されたのだが、あきらかに人選を間違えている。

 以下、辻少佐の回想録より抜粋。

「主力を鉄道線路から八達嶺に向わせ、一部(坂田支隊)を四方から迂回させようという部署である。
 坂田善市中佐が隊長であった。その連隊長奈良大佐は、私の陸大在学中の教官であったが、社交的な才子肌で、連隊長より遙かに古い坂田支隊長に対しては、平時から好感を持っておられなかったらしい。
「あれは、猪突猛進でねえ、君がついて行ってくれるのはよいが、薪に油を注がんようにしてくれよ」とは、旅団長、連隊長が口を揃えての忠告であった。
 鈴木旅団長は、わけても同郷の若い後輩に、万一の事があってはと、心から自重を要望され、「君は、白羊城までだ、決して深入りするんではないよ。すぐ帰って来い」と念を押された。
 坂田支隊長は、重厚な人であった。初対面の印象に、いかにも律義な、正直な、お世辞のない性格が現われている。「こんなタイプの人は、必ず戦争に強いぞ」と感じた。兵力は僅かに五百名の歩兵大隊に、山砲一中隊と、工兵一小隊、無線一分隊を配属されているだけで、全部を合せても七百名を越えなかった。
 これで、精鋭を誇る敵の大軍と初手合わせだ。
「敵のお手並を見たいものだ」と感じ、又この支隊長に強くひきつけられる魅力を覚えて、旅団長の注意を忘れることにした。
 八月十日夜、集結地を出た支隊は、足音にも気を配りながら進むうちに、白羊城に出た頃、漸く夜が明けはなれた。
 敵方から来た男を捕えて聞くと、腰堡附近には沢山の敵がいる由、尚、懐来方向からも続々増加しているとの事、携えて来た軍用鳩に、一信を託して旅団長に送った。
 曰く、「支隊は今朝(六時) 白羊城に達す。北方より来れる土民の言によれば、腰堡附近には相当有力な敵が陣地を占領中なるが如く、更に後続部隊あるものの如し。坂田支隊の戦闘は極めて重大となるべきにつき、小官は予定を変更し、同支隊と同行す、お許しを乞う」
 無心の鳩は、有心の文を滞して、一路南口に飛んだ。 」

 

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