蒼い空の下で

文系男子の何気ない1日を記します。

夏のあとがき①―整った舞台―

2017-09-03 23:21:22 | 2017年学童野球
-2017年9月3日(日) 午前10時15分―
目的地へ向かう途中でコンビニへ立ち寄ってみる。

「甘い物が食べたい。」
妻のわがままである。

私は心の中で「我慢せーや」と叫んでみた。
だが、無言で従うところが私の優しさなのだろうか。

話題を戻すが、目的地とは市内の中学校である。
詳しく言えば蒼空の練習試合だ。

車内の私をよそに妻と歩夢がコンビニ店内へと入っていく。
私はおもむろにスマホを取り出し、そしてダウンロードされたある曲を聞く。

ある曲とは、高橋優の「メロディ」という曲だ。
この曲は今年の熱闘甲子園の「手紙」で流された曲である。

曲を聴きながら車窓越しに目をやると蒼い空が映った。
昨日の空もこんな感じだったのだろうか。

目を閉じてみると、やはりその時の状況が頭をかすめた。
そう、あの日から1年が経過した「ろうきん杯予選」の舞台を。

-2017年9月2日(土) 午前9時40分―
9月に入ったばかりだというのに朝からやけに涼しい。

この日は、ろうきん杯の大飯郡予選。
県大会を掛けた最後の大会となる。

何年か前のろうきん杯予選の話なのだろうか。
決勝戦に敗れたチームの子供達が、会場を立ち去る際に勝利チームの元へ行って自分達の想いを伝えたという。
そして、その様子を見ていた多くの保護者が涙した。
そのような話を聞いた事があった。

―ろうきん杯予選-
他の大会には無い、独特の雰囲気を持つ大会である事は間違いない。

少し早い時間帯かと気にしたが、球場に立ち入った。
すると、青郷と名田庄の試合が行われていた。
場内を巡回すると何人かの知人と顔を合わす。

マリナーズの選手や保護者の姿も見えた。
後を追って1塁側へと移動する。
1塁側に到着すると既にマリナーズ関係者が揃っていた。

しばらくすると、進行形の試合が動きだし、名田庄がリードのまま終盤へと向かう。
第1試合が終了し、名田庄と入れ替わって1塁側を準備する。

試合開始までのわずかな時間。
そんな中、まだ続々と保護者が詰めかけてくる。
緊張の中にも保護者達の笑みが見える。

しばらくすると、繁さんがノッカーを務めたシートノックが開始し、いつもの定位置にそれぞれが就く。

両チーム共に終わるとグラウンド整備が入る。

試合開始は11時40分。
先攻は大飯スリーアローズであった。

マリナーズの先発マウンドに上がったのは陽央。
初球のストライクで試合は始まった。

その直後、スリーアローズの応援席からはメガホンを叩いた応援が鳴り響く。
伝統の応援を久々に耳にした。

2アウト後、エラーで出塁させたランナーを得点圏に背負ってしまう。
だが、陽央が落ち着いた投球を魅せてこの場を凌ぐ。

初回の失点はゼロ。
いい滑り出しを見せた。

この調子から打線に期待を寄せたいところだった。
しかし、コントロールの良い相手ピッチャーを前に凡打が続く。

2回の守備では、センター前に抜けそうな打球をセカンドの海翔が抑えた。
アウトにできなかったもののそれなりに動けている。

得点圏にランナーを背負ったピンチは続く。
ここでスリーアローズが三盗を仕掛けてくる。
キャッチャーの翔太がサードの瑛喜にいい送球をしてピンチを脱する。

-序盤の試合展開は4:6で劣勢-
マリナーズの攻撃はパーフェクトに抑え込まれる。
だが、絶対に主導権は渡さないという意地だけは伝わってくる。

試合は4回に動き出す。
陽央の安定したピッチングは続き、スリーアローズ打線に的を絞らせない投球を魅せる。

その裏の攻撃は、一番・瑛喜からの好打順。
フォアボールからの出塁で攻撃は始まった。

-どうしても先制点が欲しい-
陽央の気持ちを理解できるのは、マウンドに立つ者でしかない。
そして、ここからチャンスを作るのが誰なのかは言うまでもない。

1アウト後、背番号1を背負う三番・蒼空が打席に立つ。
ここで蒼空の意地を見る事となる。
追い込まれたカウントから、逆に粘りに粘って相手ピッチャーを追い詰める。
「これでもか」というぐらいファールで粘り、見事フォアボールで出塁する。

そして、ここからチャンスが生まれる。
その後、翔太や拓志からタイムリーヒットが飛び出して待望の3点を先制する。

ここでわずかな心のゆとりが生じる。
それは、応援側にも言えた事であった。
これは、マイナスの意味合いで言っている訳ではない。

この直後、相手クリーンナップに連打を浴びて試合は振りだしに戻される。

正直、終盤で追いつかれる展開ほど、苦しいものはない。
ここまで来たら気持ちの勝負と言えようか。

両者譲らず、試合は特別延長へと突入する。

過去、スリーアローズとの特別延長は2度あった。
最初は、陽生や風太を擁した4年前の決勝戦。そして2度目は、竜也と侑樹を擁した2年前の大会。
いずれも勝利した過去がある。
そして今回が3度目の特別延長での勝負となる。

8回表、2点を奪われる。
だが、その裏に追いつく。

特別延長の9回。
ここまでもつれた試合は、あまり記憶にない。
お互いの疲労が見え始めた頃。
ようやくここで決着がつく。

先発の陽央が無失点に抑え、その裏に翔太が快音を響かせて、2時間を超える試合に終止符を打った。

その瞬間、歓喜に沸いた応援席。
抱き合って喜びを分かち合い、そして多くの保護者の目からは涙が見られた。
懐かしい光景だった。

整列を済ませ、グラウンドから出てきた選手や指導者へたくさんの拍手が贈られた。

ここでマリナーズとベンチを入れ替わったのが、次の試合に挑む高浜クラブだった。

ここから数時間後、この1年間を苦(にが)い想いに強(し)いられた相手と真向からぶつかり合う事になろうとは、この時に知る由もなかった。

                      つづく
コメント
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