10月7日
絶望的な気分で夕方の面会から帰宅したのは5時半頃でした。
もう何も手につかなくて、何も考えられない。
そんな時間が過ぎていきました。
7時過ぎに電話が鳴り
見ると病院からで、この時間に電話がくる予定はありません。
すぐに出ると院長先生が「心臓が止まりそう」と。
「すぐ行きます!!」
院長先生は家が病院から少し遠い事を心配して
「気を付けて」と言ってくださったので
「ゆっくり行きます!」と私は言ったけど
無理しない程度に飛ばせる所は飛ばして行きました。
それでもそんなに早くは着かなかったけど。
でもこの時本当は、あいの心臓は一度止まったそうです。
院長先生は、きっとそれを言うと
私が動揺すると思ったのでしょう。
だから本当の事は言わずに
でも緊急という事を伝えてくれたのです。
病院に向かう時、私は自分でも驚くほど冷静で
涙は全く流れませんでした。
病院に着いても。
でも運転しながら
「もう少しだから!」
「待っててよ!!」
「もう少し!」
とあいに聞こえるように大きな声で言ってました。
でも心の底では間に合わないだろうと思ってました。
だけど病院に着くと、あいは復活して頑張ってました。
あいの手を握ったけど
でもかける言葉がみつからない・・・
こんなに頑張ってる子に
何て言えばいいのかわからない・・・
主治医の先生が残っていてくれて
状況を話してくれました。
酸素室のあいを見たら、ちょうど吐いたので
処置をしようと酸素室から出したら
急に心臓が止まったそうです。
院長先生の電話は、その時だったそうです。
それで緊急処置をすると心臓も動きだして
自発呼吸も戻ったそうです。
私がついた時、あいの喉に管が入っていたけど
酸素は送られていませんでした。
誤嚥性肺炎だから、少し呼吸が深いぐらいで
苦しそうな感じはありませんでした。
主治医は、普通なら管が不快で取ろうとするけど
それが無い、と。
要するに、もうあいの意識は無いと
先生は言いたかったのだと思います。
そして、そろそろ酸素室に戻した方が良いとの事で
ここで主治医から
さっき酸素室から出した時に心臓が止まったので
また同じ事が起こるかもしれない。
今度心臓が止まったら延命処置をしますか?と聞かれて
ほんの一瞬躊躇したけど
しなくて良いです。と言いました。
酸素室に移す時、そばで付き添ったけど
何事もなく、あいは酸素室に戻りました。
先生が椅子を持ってきてくれたので
酸素室の前で、じっと見守っていました。
その後、あいは安定して
院長先生が「今夜また見てるから」と言ってくれたけど
私はもう置いて帰る事なんてできない
あり得ないと思いました。
酸素室の中で眠り続けるあい。
もう点滴も注射もしてません。
もししても昏睡状態から回復する事が
極めて難しいという事は
夕方の面会の時からわかっていました。
もう家に連れて帰っても良いんじゃないか・・・
そんな思いがふと浮かびました。
でも酸素室から出したら、苦しくなるだろうか・・・
時刻は8時半近くになっていました。
主治医や院長先生が
時々様子を見に来てくれていたから
このままだと
主治医は帰れないだろうというのも気になって
院長先生が見に来た時
思い切って聞いてみました。
酸素室から出したらどうなりますか?
家に連れて帰っても良いですか?
院長先生も、主治医とその話をしていたそうで
主治医を交えて話しました。
すぐに呼吸が苦しくはならないけど
帰宅後、苦しくなった時の為に
酸素ボンベを借りる事ができるそうで
そして、息を引き取ったあとする事を聞くと
点滴や注射の為の血管留置の針を抜くだけ との事でした。
もう私に迷いはありませんでした。
酸素ボンベの使い方を聞いて
血管留置の針を抜いてもらう事にしました。
酸素室からあいを出した時も
そばで付き添っていました。
そして処置台の上に寝かせた時です。
院長先生が「だめだ。呼吸が弱くなった」と
処置を中止して、この状況で家までは無理との判断で
私が抱いて、みんなで見送る事にしました。
私は前日の緊急入院時以来、あいを抱きました。
血管留置の針は、私があいを抱いたままで
抜いてもらいました。
頑張って凄いね!
偉いね!
微笑みながら声をかけました。
あいにはもう見えないと思うけど
私はマスクを外してあいに顔を見せました。
先生達もねぇたんも
みんな凄いねって褒めてくれました。
褒めてもらえるのが嬉しいのか
まだ頑張るあい。
もしかしたらあいは
夕方の面会で私が「頑張って」と言ったから
頑張っているのかもしれない。
そして私の事を心配しているのかも。
そう思って、見かねて
もう頑張らなくていいよ。
もう大丈夫だよ。
と、優しく声をかけました。
少しずつ少しずつ呼吸の間隔が開いていって
もうお家に帰ろうね と言ったら
呼吸をするあい。
また私が、お家に帰ろうねと言ったら
あいもまた呼吸をしました。
その様子はまるで
私の言葉にお返事をしているように見えました。
あいを抱いていたこの時
私のアップルウォッチが2回ブルブルしてました。
あとで見ると「異常な心拍数」を検出してました。
午後8時34分と46分。
それでもまだ頑張るあい。
主治医が「脈はまだしっかりしてる」と言うので
それなら家まで持つかもしれない。
帰るなら今だ!
もう連れて帰ろう!
万が一途中でも仕方ない。
この状況なら、もう酸素ボンベも必要ありません。
私は運転するので、あいをねぇたんに託して
車を発進させました。
病院の前では、院長先生と主治医が見送ってくれました。
車の中でねぇたんは、「もう呼吸が止まってると思う」と
何度か言ってました。
でも確認のしようがありません。
もしそうだとしても時刻が分からないなと思った時です。
ちょうど病院を出て10分弱。
もしかしたら道路が空いてたから5~6分だったかも。
突然どこかから「ピン♪」という
オルゴールのような澄んだ可愛い音が聞こえました。
ラジオからは何が流れていたか覚えてないけど
そんな音が鳴るのはおかしい。
何となく、時刻を見ると8時55分でした。
なんだろうと思って、後部座席の姉に聞いたけど
「そんな音は聞いてない」と。
その直後、姉が
「おしっこの匂いがする」
チャコの時で知っていたし
病院を出る時、院長先生が
「最期の時おしっこするから」とあいにシーツを
敷いてくれた上からバスタオルで包んでくれてました。
あいは私の車に乗った事が分かって
何度も何度も通ったこの道を覚えていて
やっと家に帰れるとほっとしたのでしょう。
そしてそこで力尽きたのでしょう。
もっと早く私が決断していたら
あいは家でゆっくり旅立てたと思うと
あいには辛い思いをたくさんさせてしまって
申し訳なく思いました。
あいの事だから、私の仕事を気にして
もしかして3連休中に・・と思ったけど
3連休の初日とは。
しかも体調が悪くなってわずか2日なんて。
でも連休だったから、ずっと一緒に居られて
きっとあいは、そばに居て欲しかったのかなと思います。
10月3日に15歳になったばかりのあい。
15歳と4日で旅立ちました