今朝の新聞によると、
とのこと。
意味がよくわからない。いままでも実質0金利を続けてきても「デフレ」は抜け出せていない。ここで、金融機関への資金供給枠を10兆円増やしたとして、どうして物価上昇に転じるのか理解できない。物価上昇は目的ではなく、経済を活性化させる手段だと思うので、「物価上昇に転じる」の意味は、「経済が活性化する」と読んでのことだが。
いま先進諸国で起きている「デフレ」の主な原因は、主要商品の製造拠点が、極端に賃金が低い国に移されてしまったことにある。それによって、先進諸国の商品価格および賃金は、世界の平均レベルに向かって低下し、反対に、発展途上国の商品価格および賃金は、世界の平均レベルに向かって上昇するという現象が起きている。
企業は、製造コストを下げることによって、販売競争の上で、優位に立つことができる。しかし、生産過程の合理化によって製造コストを下げる方法はほとんど限界に近くなってきている。一方で、発展途上国においては、世界大戦から半世紀以上が経過する中で、各国の政情も安定し、先進国の技術の獲得要求が強まり、工場などの進出を受け入れる態勢(政治的安定、一定のインフラ整備など)が整ってきている。また、先進諸国での物流技術の向上、効率化によって、流通期間の短縮、長期保存、流通コストの低下などが可能になった。したがって、発展途上国で生産し、消費地に輸送することの問題はほとんどなくなった。
発展途上国の賃金は、先進諸国の賃金に比べ極端に低い。この低賃金を利用し、製造コストを下げることができる環境が整ってきたわけで、先進諸国の企業は競って製造拠点を発展途上国に移し始めた。こうして、先進諸国の企業は新たな競争段階に入った。アメリカが主導して唱える「グローバル化」とは、世界各地にあって、先進諸国資本の自由な参入を妨げているものを取り除くことがその本質である。TPPもその一環としてある。
しかし、その結果として先進諸国内で起きたことは、商品価格の一般的低下(デフレ)と、本国内での労働需要の減少である。それは失業者を増大させ、賃金低下につながり、国内消費を低迷させ、経済停滞を招いた。そのことで大企業での大量解雇、中小零細企業の倒産が増え、さらに失業者を増やすという悪循環が起きている。
現在のデフレはこのようにして起きている。このようなタイプのデフレはいままでにはなかったのではないかと思われる。したがって、従来の景気対策、経済政策では対処できていない。経済刺激策の常套手段であった金融緩和策も効果が出ていない。日本銀行の貸出金利を実質ゼロにするということはずっと続けていることである。そういう中で日本銀行が「インフレ目標」を設定したとしてどういう効果があるというのだろうか。
金利を庶民感覚で見れば、経済が活発に動いているときには高く、停滞しているときには低い。バブル景気の頃、金利は高かったが、それが崩壊して以来、経済は停滞し、金利が低い状態が続いている。つまり、金利を上げれば経済が沈静化し、下げれば活発化するということにはなっていない。なお、債券市場における金利は、リスク(貸し倒れになる可能性)に対して付けられ、リスクの高い債券は高金利、低い債券は低金利となり、債務者の信用度の変化に応じて変動する。その変動から利ざやを稼ごうとする人たちが債券市場に集まってお金を動かしており、別のお話である。庶民から見れば、これは一種の賭け事である。この賭け事が世界経済に大きな影響を与えているのだが、この問題はまた別の機会に考えてみたい。
金利には、それを支払うための原資が必要であり、その原資は、活発な経済活動の中で新しい富が創り出される中から生み出されるものである。新たな富が創り出されないまま、貨幣だけをどんどん発行し、それを市中に流せばインフレにはなるかもしれない。物価が上昇して賃金が上がるかもしれない。しかし、それは貨幣の価値が下がっただけのことであって、従来1,000円で買えたものが1,500円とか2,000円を出さないと買えなくなるだけのことである。ものがより多く売れるということにはならない。企業の名目的な売上高は増えても、その分、高くなった原材料の購入費や引き上げられた賃金に回す必要があるわけで、景気がよくなるわけではない。物価上昇に対する企業の賃上げが遅れたり、年金引き上げが遅れたりすれば、人々はものを買えなくなる。その結果、ものが売れなくなる。そうなれば、企業の活動は停滞し、倒産するところも出てくる。失業者が増える。ますますものが売れなくなる。このような悪循環に陥る可能性もある。
先にも述べたように、現在のデフレ、商品価格の一般的な低下は、発展途上国の極端な低賃金を利用した生産コスト低減によるものであり、一時的な現象ではない。100円ショップの商品は、倒産品の投げ売りなどではなく、コスト計算がなされた継続的に生産、供給可能な商品である。正常な生産、供給サイクルに乗っている商品である。100円ショップばかりでなく、ニトリやユニクロなど、従来の常識を超えた低価格で商品を供給し、業績を伸ばしている。
このような経済状態の中では、相当の長期間にわたり、先進諸国での労働者の雇用回復や賃金上昇は見込めない。それが可能なのは、世界規模で賃金が平均化され、労働需要が逼迫するときである。世界レベルでの賃金格差はまだまだ極めて大きい。ということは、先進諸国での賃金上昇は当分の間ありえないと考えられる。
なお、発展途上国の労働者の賃金は上昇する。低賃金を求めて先進国から資本が投下され、労働需要が高まり、賃金が上昇し、消費が増大し、経済活動が活発になって、かつてない経済発展が現象することになる。中国やインド、ブラジルなどの経済発展はなるべくしてなったものである。
こんな中でも、為政者は国をまとめ、国民の生活を成り立たせてゆかなければならない。経済が不活溌で、新たな富の生産が鈍ったり、増えなかったり、減少したりする条件の中で、つまり、経済の活性化が困難な中で、どうやり繰りしてゆけばよいのだろうか。とにかく、「ないところ」からは何も出てこないので、「あるところ」から調達するしかないことははっきりしている。
公債という借金をすることもひとつの方法ではある。公債を買えるだけの財産を持っている人たちからの借金である。しかし、公債の残高は平成23年度末で約668兆円(国の長期債務残高)であり、税収の約16倍にもなっている。地方も含め、政府借入金や政府短期証券を含めた日本全体の債務残高だと約1,190兆円にもなる。国民一人あたりに換算すると900万円以上である。GDP(国内総生産)に対する国の債務残高の比率は約210%で、2位イタリアの約130%を大きく引き離して世界一である。公債は借金であるから返済しなければならない。返済期限に返済できなければ破産ということになってしまう。近い将来に経済が回復し、生産活動が活発になるという見通しもなく借金を繰り返すというのは、まさに、消費者金融で借りまくって、そのあげく破産してしまう生活破綻者そのものである。
そんなわけで、経済回復の見通しが立たない中、これからも借金に頼ることは大変危険なことである。ということは、支出を減らすことも必要だが、借金ではない方法で収入を増やす方法を考えなければならない。消費税増税もひとつの方法である。しかし、消費税は逆累進課税であって、収入の少ない人ほど実質的な負担が重くなる。いままでも切り詰めた生活を強いられていた人たちは、さらに生活が厳しくなる。したがって、税率を上げるにも限度がある。
消費税のほかに、所得税増税も必要かもしれない。これについては、もっと累進性を上げれば増収につながる。また、相続財産という不労所得に対する税率も大きく引き上げたほうがよいのではないか。贈与税も同じである。遊休資産税を考えてもよい。大阪の橋下市長も似たことを言っていたように思う。宗教法人に対する課税も考えるべきだ。ずいぶん実入りの多い宗教団体があるのに、宗教法人だと税金が免除されるというのも納得できない。遊休宗教法人が高い値段で売買されるという話も聞く。税金逃れのためとしか考えられない。
とにかく、しばらくは「あるところ」から調達するしかない。それははっきりしている。金持ちから調達すると金持ちがやる気をなくすとか言っても、そんな金持ちはどうぞやる気をなくして下さいと言うほかないと思う。
しかし、節約、増税、借金、これらはすべて応急措置であり、いずれ経済活動が活発になり、富の拡大再生産が順調に行なわれるようにならないかぎり、根本的な問題は解決しない。現在の日本の経済停滞の原因が先に述べたようなものであれば、簡単には解決できない。経済を活性化させるアイデアがあれば、いろいろと試してみるべきだろう。ただし、アメリカであったサブプライムローンのような詐欺まがいの方法は願い下げである。また、世界経済は巨大な複雑系である。巨大で複雑となれば、よほど慎重に扱わなければならない。その各部分は人間の意志で動いていても、各部分が互いに関連し合って動いている全体は、人間の意志からは独立して動く。複雑系は、わずかな変更を加えただけでも、その意図に反して、全体が大きく変化する可能性がある。思わないところに、予想外の影響が出てくる。
日本銀行は14日の金融政策決定会合で、物価が下がり続ける「デフレ」から抜け出すため、金融政策の目安となる物価上昇率のめどを新たに「1%」と定めた。事実上の「インフレ目標」を日銀として初めて導入したことになる。あわせて金融機関への資金供給枠を10兆円増やし、追加の金融緩和にも踏み切った。
とのこと。
意味がよくわからない。いままでも実質0金利を続けてきても「デフレ」は抜け出せていない。ここで、金融機関への資金供給枠を10兆円増やしたとして、どうして物価上昇に転じるのか理解できない。物価上昇は目的ではなく、経済を活性化させる手段だと思うので、「物価上昇に転じる」の意味は、「経済が活性化する」と読んでのことだが。
いま先進諸国で起きている「デフレ」の主な原因は、主要商品の製造拠点が、極端に賃金が低い国に移されてしまったことにある。それによって、先進諸国の商品価格および賃金は、世界の平均レベルに向かって低下し、反対に、発展途上国の商品価格および賃金は、世界の平均レベルに向かって上昇するという現象が起きている。
企業は、製造コストを下げることによって、販売競争の上で、優位に立つことができる。しかし、生産過程の合理化によって製造コストを下げる方法はほとんど限界に近くなってきている。一方で、発展途上国においては、世界大戦から半世紀以上が経過する中で、各国の政情も安定し、先進国の技術の獲得要求が強まり、工場などの進出を受け入れる態勢(政治的安定、一定のインフラ整備など)が整ってきている。また、先進諸国での物流技術の向上、効率化によって、流通期間の短縮、長期保存、流通コストの低下などが可能になった。したがって、発展途上国で生産し、消費地に輸送することの問題はほとんどなくなった。
発展途上国の賃金は、先進諸国の賃金に比べ極端に低い。この低賃金を利用し、製造コストを下げることができる環境が整ってきたわけで、先進諸国の企業は競って製造拠点を発展途上国に移し始めた。こうして、先進諸国の企業は新たな競争段階に入った。アメリカが主導して唱える「グローバル化」とは、世界各地にあって、先進諸国資本の自由な参入を妨げているものを取り除くことがその本質である。TPPもその一環としてある。
しかし、その結果として先進諸国内で起きたことは、商品価格の一般的低下(デフレ)と、本国内での労働需要の減少である。それは失業者を増大させ、賃金低下につながり、国内消費を低迷させ、経済停滞を招いた。そのことで大企業での大量解雇、中小零細企業の倒産が増え、さらに失業者を増やすという悪循環が起きている。
現在のデフレはこのようにして起きている。このようなタイプのデフレはいままでにはなかったのではないかと思われる。したがって、従来の景気対策、経済政策では対処できていない。経済刺激策の常套手段であった金融緩和策も効果が出ていない。日本銀行の貸出金利を実質ゼロにするということはずっと続けていることである。そういう中で日本銀行が「インフレ目標」を設定したとしてどういう効果があるというのだろうか。
金利を庶民感覚で見れば、経済が活発に動いているときには高く、停滞しているときには低い。バブル景気の頃、金利は高かったが、それが崩壊して以来、経済は停滞し、金利が低い状態が続いている。つまり、金利を上げれば経済が沈静化し、下げれば活発化するということにはなっていない。なお、債券市場における金利は、リスク(貸し倒れになる可能性)に対して付けられ、リスクの高い債券は高金利、低い債券は低金利となり、債務者の信用度の変化に応じて変動する。その変動から利ざやを稼ごうとする人たちが債券市場に集まってお金を動かしており、別のお話である。庶民から見れば、これは一種の賭け事である。この賭け事が世界経済に大きな影響を与えているのだが、この問題はまた別の機会に考えてみたい。
金利には、それを支払うための原資が必要であり、その原資は、活発な経済活動の中で新しい富が創り出される中から生み出されるものである。新たな富が創り出されないまま、貨幣だけをどんどん発行し、それを市中に流せばインフレにはなるかもしれない。物価が上昇して賃金が上がるかもしれない。しかし、それは貨幣の価値が下がっただけのことであって、従来1,000円で買えたものが1,500円とか2,000円を出さないと買えなくなるだけのことである。ものがより多く売れるということにはならない。企業の名目的な売上高は増えても、その分、高くなった原材料の購入費や引き上げられた賃金に回す必要があるわけで、景気がよくなるわけではない。物価上昇に対する企業の賃上げが遅れたり、年金引き上げが遅れたりすれば、人々はものを買えなくなる。その結果、ものが売れなくなる。そうなれば、企業の活動は停滞し、倒産するところも出てくる。失業者が増える。ますますものが売れなくなる。このような悪循環に陥る可能性もある。
先にも述べたように、現在のデフレ、商品価格の一般的な低下は、発展途上国の極端な低賃金を利用した生産コスト低減によるものであり、一時的な現象ではない。100円ショップの商品は、倒産品の投げ売りなどではなく、コスト計算がなされた継続的に生産、供給可能な商品である。正常な生産、供給サイクルに乗っている商品である。100円ショップばかりでなく、ニトリやユニクロなど、従来の常識を超えた低価格で商品を供給し、業績を伸ばしている。
このような経済状態の中では、相当の長期間にわたり、先進諸国での労働者の雇用回復や賃金上昇は見込めない。それが可能なのは、世界規模で賃金が平均化され、労働需要が逼迫するときである。世界レベルでの賃金格差はまだまだ極めて大きい。ということは、先進諸国での賃金上昇は当分の間ありえないと考えられる。
なお、発展途上国の労働者の賃金は上昇する。低賃金を求めて先進国から資本が投下され、労働需要が高まり、賃金が上昇し、消費が増大し、経済活動が活発になって、かつてない経済発展が現象することになる。中国やインド、ブラジルなどの経済発展はなるべくしてなったものである。
こんな中でも、為政者は国をまとめ、国民の生活を成り立たせてゆかなければならない。経済が不活溌で、新たな富の生産が鈍ったり、増えなかったり、減少したりする条件の中で、つまり、経済の活性化が困難な中で、どうやり繰りしてゆけばよいのだろうか。とにかく、「ないところ」からは何も出てこないので、「あるところ」から調達するしかないことははっきりしている。
公債という借金をすることもひとつの方法ではある。公債を買えるだけの財産を持っている人たちからの借金である。しかし、公債の残高は平成23年度末で約668兆円(国の長期債務残高)であり、税収の約16倍にもなっている。地方も含め、政府借入金や政府短期証券を含めた日本全体の債務残高だと約1,190兆円にもなる。国民一人あたりに換算すると900万円以上である。GDP(国内総生産)に対する国の債務残高の比率は約210%で、2位イタリアの約130%を大きく引き離して世界一である。公債は借金であるから返済しなければならない。返済期限に返済できなければ破産ということになってしまう。近い将来に経済が回復し、生産活動が活発になるという見通しもなく借金を繰り返すというのは、まさに、消費者金融で借りまくって、そのあげく破産してしまう生活破綻者そのものである。
そんなわけで、経済回復の見通しが立たない中、これからも借金に頼ることは大変危険なことである。ということは、支出を減らすことも必要だが、借金ではない方法で収入を増やす方法を考えなければならない。消費税増税もひとつの方法である。しかし、消費税は逆累進課税であって、収入の少ない人ほど実質的な負担が重くなる。いままでも切り詰めた生活を強いられていた人たちは、さらに生活が厳しくなる。したがって、税率を上げるにも限度がある。
消費税のほかに、所得税増税も必要かもしれない。これについては、もっと累進性を上げれば増収につながる。また、相続財産という不労所得に対する税率も大きく引き上げたほうがよいのではないか。贈与税も同じである。遊休資産税を考えてもよい。大阪の橋下市長も似たことを言っていたように思う。宗教法人に対する課税も考えるべきだ。ずいぶん実入りの多い宗教団体があるのに、宗教法人だと税金が免除されるというのも納得できない。遊休宗教法人が高い値段で売買されるという話も聞く。税金逃れのためとしか考えられない。
とにかく、しばらくは「あるところ」から調達するしかない。それははっきりしている。金持ちから調達すると金持ちがやる気をなくすとか言っても、そんな金持ちはどうぞやる気をなくして下さいと言うほかないと思う。
しかし、節約、増税、借金、これらはすべて応急措置であり、いずれ経済活動が活発になり、富の拡大再生産が順調に行なわれるようにならないかぎり、根本的な問題は解決しない。現在の日本の経済停滞の原因が先に述べたようなものであれば、簡単には解決できない。経済を活性化させるアイデアがあれば、いろいろと試してみるべきだろう。ただし、アメリカであったサブプライムローンのような詐欺まがいの方法は願い下げである。また、世界経済は巨大な複雑系である。巨大で複雑となれば、よほど慎重に扱わなければならない。その各部分は人間の意志で動いていても、各部分が互いに関連し合って動いている全体は、人間の意志からは独立して動く。複雑系は、わずかな変更を加えただけでも、その意図に反して、全体が大きく変化する可能性がある。思わないところに、予想外の影響が出てくる。
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