思いつくままに

ゆく河の流れの淀みに浮かぶ「うたかた」としての生命体、
その1つに映り込んだ世界の断片を思いつくままに書きたい。

これは奇蹟だろうか

2017-06-18 01:21:10 | 随想

 この国では、安倍首相を信奉する人たちに奇蹟が起きているようだ。

 「安倍晋三」という名前を冠した小学校を作る計画を立て(名前を使うのであれば総理大臣を辞めてからにしてほしいと首相から言われ、瑞穂国記念小学院に名称変更)、安倍首相夫人を名誉校長に仕立て、安倍首相から「こちらの教育方針は大変すばらしい」と評価を受けている森友学園は、関係公的機関から、設立認可にあたって、従来の慣例を破る特別のはからいを受け、土地取得にあたっては、実質99.8%引きという厚遇を受けた。これは現実に起きたこと、事実である。この事実に対し、安倍首相、昭恵夫人はまったく関わっていないとのこと。法律に則って適正に処理をしたら、偶然そうなってしまったそうだ。そのことばを信じるとすれば、何という偶然だろう。まさに、奇蹟としか言いようがない。

 さらに、安倍首相が議長を務める国家戦略特区諮問会議において、愛媛県今治市が国家戦略特区の指定を受け、そこに大学の獣医学部ができることになった。その大学には土地(約37億円)が無償供与され、また、約96億円の補助費を受け取る。その優遇措置を受け取ることになったのは「加計学園」という学校法人である。ここまでは一つの事実である。驚くのは、この学園の理事長は、安倍首相がアメリカ語学留学時に知り合って以来の友人であり、安倍首相自身が「腹心の友」と言っている人物なのだ。いまでも、会食をしたり、ゴルフをしたりする仲である。おまけに、昭恵夫人は、この加計学園が運営する「御影インターナショナルこども園」という認可外保育施設の名誉園長だとのこと。

 また、安倍首相の側近中の側近と言われている萩生田官房副長官は、加計学園が運営する千葉科学大学の名誉客員教授である。今回の大学の設置条件の一つ

 「現在、【広域的に】獣医師系養成大学等の【存在し】ない地域に【限る】)」

は、【 】内の語句を入れることによって、加計学園と競うかたちになっていた京都産業大学を除外するものになった。上記の【 】内の語句は萩生田官房副長官が指示したものと文科省担当者は言っている。そのほか、前文科省事務次官の前川喜平氏は、元内閣官房参与で前記の千葉科学大学の学長である木曽功氏から「獣医学部の件でよろしく」と言われたと証言している。これらのことも、加計学園が選ばれたこととは全く関係がないとのこと。

 そして、ここでも、安倍首相はいっさい関与していないとのこと。法律に則って適正に処理されたものであり、今回の優遇措置を受けることになった学園の理事長が安倍首相の親友であったのは単なる偶然だとのこと。奇蹟が起きている。

 まだまだある。准強姦(心神喪失または抗拒不能となった女性を姦淫すること)事件を起こし、逮捕されかけたジャーナリスト(山口敬之氏)がいる。捜査員が逮捕状を持ち、空港で待機していたが、当時の警視庁刑事部長である中村格氏(その後出世し、現在は警察庁刑事局組織犯罪対策部長、共謀罪を取り締まる責任者となる。菅官房長官の信頼厚く、将来の警察庁長官とのうわさもある)からストップがかかり(週刊新潮の取材に対し、本人がストップさせたことを認めている)、山口氏は逮捕されず、罪にも問われなかった。山口氏はいつも安倍首相を持ち上げるジャーナリスト、いわゆる太鼓持ちジャーナリストであった。だから、ここにも奇蹟は起きた。中村格氏は刑事部長になる前は、菅官房長官の秘書官であった。また、山口氏はこの件について週刊新潮から質問状が届いていると、その質問状を内閣情報調査室の北村滋内閣情報官に転送している。このとき、間違って週刊新潮へそれを転送してしまい、そのことがバレてしまった。どうやら安倍官邸とつながっているようだ。しかし、安倍官邸は関与を否定するだろう。だから奇蹟なのだ。官邸が何の関与もしていないのに、刑事部長が動き、国民から見れば一介のジャーナリストが罪を免れることができたのだから。

 なお、元東京地検特捜部副部長の若狭勝氏はつぎのように述べ、怒りを露わにしている。「私は、逮捕状とその執行実務に精通している。その私の目からすると、通常ではあり得ない事態。この種の犯罪で、所轄警察署が入手した逮捕状につき、警視庁本部刑事部長がその逮捕状の執行をストップすることは通常絶対にあり得ない」「これまで多くの人が、何にも代え難い法治主義を守るため、我が国の刑事司法の適正に向けて努力してきたのに、警察内部からその適正を崩壊させることは絶対に容認できない」

 すべて偶然に起きたできごとである。これにて一件落着!自民党副総裁によれば、加計問題に関する政府への批判は「ゲスの勘ぐり」とのこと。

 もうこうなったら、国民は安倍政権の批判などやめて、安倍様を崇め奉った方がいいかもしれない。きっといいことが訪れるのではないだろうか。信ずるものは救われる。ただし、一般信者は、いったん事が起きれば、「安倍様が定義する国」のために命を投げ出す覚悟が必要になるとは思うが。〈一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ……教育勅語より〉

 

 追記:さらに不思議なことがある。これらの決定過程を明らかにする文書が、彼らによって隠蔽され、廃棄されたりしていることである。実際に、安倍首相やその夫人、安倍官邸が何の関与もしていないのだから、これらの文書はその証拠となるはずである。そういう大切な証拠品をどうして隠すのだろう。また、問題が指摘されている当事者や関係者を国会で証人として喚問すれば、彼らの無実が証明されるのに、それを断固として拒否するというのは一体どうしたことだろう。おまけに、自らの潔白を証明するための証拠となるはずの大切な文書の存在を明らかにした人を、国内で最も発行部数の多い新聞を使って、その第1面で人格攻撃したり、公務員の守秘義務違反として罰する可能性まで示唆したりしている。本当にわけがわからない。

 でも、これらのすべての疑問を解消する解釈が一つある。それは、安倍首相をはじめ、官邸、その周辺の官僚など関係者がみんな嘘をついているという解釈である。この解釈をするとすべての疑問は解消する。しかし、この解釈をすると困ったことになる。この国は、このような嘘つきたちによって統治されていることになってしまうからだ。そんな統治者を、国民が選んでしまったとすれば、国民自身が問題となる。それを認めたくない国民は、自らを正当化したいために、嘘つき説を排除し、自分が選んだことになっている統治者の言葉、すなわち奇蹟説を採り、支持するということになるのだろうか。



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