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「重要な法案審議がいろいろあるのに、野党は森友学園問題で安倍さんを引きずりおろそうと、重箱の隅つつくような追及ばかりしている。時間の無駄だ。いい加減やめにして、重要法案の審議を進めるべきだ」というような意見がある。
いま何が問題になっているのだろう。国防、教育、外交、経済、福祉などについて、それらが重要であることに異存はない。それは、安倍内閣を批判している人たちも同じだと思う。いまの問題は、安倍内閣の数々の行ないを見てきたとき、安倍内閣に、国民にとって重要な政策を任せてもいいのかということなのである。安倍内閣の信用の問題なのだ。森友学園問題は、安倍内閣が信用できないことを示す1つの例なのである。
安倍内閣を信用できない人たちは、国防、教育、外交、経済、福祉など、国民にとって重要な政策問題に議論を移すためには、一刻も早く安倍内閣は退陣すべきだと言っているのだ。それに対し、安倍内閣は数々の詭弁で言い逃れをし、あたかも反対派が時間を浪費しているかのように見せているわけである。
簡潔に言えば、一方は退陣しろと主張し、他方は退陣する必要はないと応じている状態なのだ。そういう状態にあるときに、「そんな言い争いはやめて、早く先に進め」と言うことは、「現状のまま(安倍政権のまま)、早く先に進め」と言っていることになり、「退陣しなくてもよい」と言っていることになるのだ。
野党の国会での追及は、国民の前で、「安倍政権とは、こんな政権なのですよ。国民のみなさん、これでいいのですか?国政を、こんな政権に任せていいのですか?」という「国民に対する問いかけ」なのである。だから、国民は、「いい加減やめにして、先に進め」と言うのでなく、そのやりとりを見て、安倍政権とはどんな人たちの集団なのか、このまま国政を任せてもよいのかを見極めることが大切なのである。
以下に、安倍政権がどんなことをしてきた、している、しようとしているのかを少しまとめてみた。
1) 前回のブログで述べたこと、すなわち、元経済再生担当大臣の甘利議員の贈収賄事件を嫌疑不十分で不起訴処分にしてしまったこと、白紙領収書について「領収書の作成方法を定めた規定はなく、主催者から了解を得ていれば法律上の問題は生じない」と答弁し、白紙領収書を受け取っていた人たちは何の咎も受けなかったことは、まさに安倍政権の下で行なわれたことである。
2) 同じく前回のブログで紹介したが、安倍首相が会長をしている「創生日本」の研修会で、元法相が「国民主権、基本的人権、平和主義」「この三つをなくさなければですね。本当の自主憲法にはならないんですよ」と述べ、一同が拍手しているビデオを見ると、この内閣が目指しているものが何かがわかる。
なお、「国民主権、基本的人権、平和主義」「この三つをなくさなければ……」と言っているが、「この三つ」は、憲法の定める統治の基本秩序であり、「この三つ」をなくすことは、刑法第77条の罪状に該当し、その相談をしている彼らは、同じ彼らが強行採決で成立させようとしている「共謀罪」によって処罰されることになる。同条に該当する場合、首謀者は、死刑または無期禁固に処せられることになる。
刑法第77条
1. 国の統治機構を破壊し、又はその領土において国権を排除して権力を行使し、その他憲法の定める統治の基本秩序を壊乱することを目的として暴動をした者は、内乱の罪とし、次の区別に従って処断する。
1. 首謀者は、死刑又は無期禁錮に処する。
2. 謀議に参与し、又は群衆を指揮した者は無期又は3年以上の禁錮に処し、その他諸般の職務に従事した者は1年以上10年以下の禁錮に処する。
3. 付和随行し、その他単に暴動に参加した者は、3年以下の禁錮に処する。
2. 前項の罪の未遂は、罰する。ただし、同項第3号に規定する者については、この限りでない。
3) 安倍首相をはじめ、安倍内閣の閣僚20人のうち、14人が日本会議国会議員懇談会の会員である。また、19人が神道政治連盟国会議員懇談会の会員である。日本会議や神道政治連盟の目指すところは、天皇を元首とする国家の復活であり、後者は、その綱領に「神道の精神を以て、日本国国政の基礎を確立せんことを期す」「神意を奉じて経済繁栄、社会公共福祉の発展をはかり、安国の建設を期す」を掲げている。
4) 歴代内閣が違憲としてきた集団的自衛権を、合憲として、関連する安保法案を強行採決した。
これに先立ち、内閣法制局(政府が国会に提出する新規法案を、閣議決定に先立って現行法の見地から問題がないかを審査する機関であり、俗に行政府における法の番人と言われている)の長官を、従来の慣行を破って、総理大臣の権限で、自分にとって都合の良い人間に置き換えている。それまでの歴代の長官は違憲だとしてきた。
安倍首相が「法制局長官のほうが総理大臣より偉いのか」と呟いていたのが国会中継で流れてしまった。この人は「偉い」という言葉の意味をどう考えているのだろう。総理大臣が一番「偉い」のだから、総理大臣の言うことが正しいと思っているようだ。権力を持つものが「私こそ正しい」という妄想を持つことは恐ろしいことである。
5) NHK会長を、「政府が右と言うものを左と言うわけにはいかない」と言うような人物に置き換え、公共放送を、政府の広報機関化してしまった。
6) NHKのみならず、民放に対しても、高市早苗総務相は「放送局が政治的公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合、放送法違反を理由に、電波停止を命じる可能性がある」と国会で繰り返し答弁し、報道を委縮させている。「判断」するのは政府であることに注意。
* 米国務省は3日、世界各国の人権状況に関する2016年版の年次報告書を発表した。日本については「報道の自由に関する懸念がある」と指摘。高市早苗総務相が16年2月、放送局が政治的な公平性に欠ける放送を繰り返した場合、電波停止を命じる可能性について言及したことを一例として挙げている。(日経新聞 2017.3.4)
7) 野党時代に「TPP絶対反対!」「ぶれない!」と言って選挙を闘っていたにもかかわらず、「そんなことを言った覚えはない」とTPP関連法案を強行採決した。その時点で、トランプ大統領は、TPP離脱を明言していた。
8) 南スーダンへの派兵について、当初は「廃棄」したと説明していた陸上自衛隊の南スーダンPKOの日報に、陸上自衛隊が活動する首都ジュバで「戦闘が生起した」と明記され、戦車や迫撃砲を使った激しい戦闘が発生したことが報告されていいた。
これに対し、稲田朋美防衛相は、日報に書かれた「戦闘」について、現地の反政府勢力が安定した支配地域を持たないので「国際的な武力紛争の一環として行われたものではない」と説明。戦闘でなく「武力衝突」という言葉を使う理由を「憲法九条上の問題」になるのを避けるためと説明した。現地の自衛隊員にとっては「生き死に」の問題、自衛隊内部部局のトップである防衛大臣にとっては「言葉」の問題。
9) 稲田朋美防衛相は、「教育勅語の核である、例えば道徳、それから日本が道義国家を目指すべきであるという、その核について、私は(考えを)変えておりません」「教育勅語に流れている核の部分、そこは取り戻すべきだと考えている」などと繰り返し述べている。
教育勅語は1948年、国会で排除や無効確認の決議が行われている。衆議院の決議では、その理由が「これらの詔勅の根本理念が主権在君並びに神話的国体観に基づいている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ国際信義に対して疑点を残すもととなる」と説明されている。つまり、その「核」の部分が否定されているのである。
そして、いま政府は「教育勅語を道徳教材として使用することを否定しない」とまで言い出している。義家弘介文部科学副大臣は衆院内閣委員会で、幼稚園など教育現場の毎日の朝礼で子どもたちが教育勅語を朗読することについて、「教育基本法に反しない限りは問題のない行為であろうと思います」と答弁している。一般の人の中にも「教育勅語にもいいところはある」と言う人がいる。たぶん、親を大切にすることや、人が謙虚に生きるべきであることや、仕事に励むことをはじめとする一般的な徳目のことだと思われる。
しかし、それらを教えるのに、教育勅語を持ち出す必要はまったくない。それにもかかわらず、あえて教育勅語を持ち出すのは、その他の教材には書かれていない、いまの時点では書けない、教育勅語の「核」である「天皇」への尊崇の念、「国家」への忠誠心といったものを教え込みたいからと考えざるを得ない。「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」を教え込みたいのだと考えるほかに、教育勅語にこだわる理由がないのである。
* いったん何かが起こったら、いや、はっきりいうと、戦争が起こったりしたら、勇気を持ち、公のために奉仕してください。というか、永遠に続くぼくたち天皇家を護るために戦争に行ってください。それが正義であり「人としての正しい道」なんです。(高橋源一郎氏による現代語訳)
10) 高市早苗総務相は、自身が代表を務める自由民主党奈良県第二選挙区支部から計1,220万円を自身に寄付させ、再び支部に1千万円を寄付して翌年の確定申告で還付金約300万円を受け取っている。「法的には問題ない」と答弁している。(この問題では、市民2人が奈良地検に詐欺容疑で告発し、3月9日、告発状が受理されている)
11) 沖縄県の米軍施設建設現場付近で機動隊員が抗議活動をしている人に「土人」と叫んだことを鶴保庸介・沖縄北方相が「差別と断定できない」と述べたことについて、政府は鶴保氏の訂正や謝罪は不要とする答弁書を閣議決定した。(2016年11月、朝日新聞)
この問題で、政府は「土人」という言葉の定義について、必ずしも差別用語ではないという言い方をしている。しかし、今回の問題は言葉の定義ではなく、その言葉が使われた意味なのである。言葉は、どのような条件下で、どのような文脈の中で使われるかによってその意味が決まる。このときのビデオ映像を見る限り、この言葉を発した機動隊員は、抗議活動をしている人に対して、明確な侮蔑的態度でこの言葉を投げつけている。つまり、「土人」という言葉を、はっきりと差別用語として使っていたのである。それが問題なのだ。
12) 安倍首相の夫人である昭恵氏は、自民党の選挙応援に何度も出かけている。昨年7月に行われた参議院選挙で、東京選挙区から出馬した朝日健太郎氏、岡山県選挙区から出馬した小野田紀美氏、沖縄県選挙区から出馬した島尻安伊子氏、それぞれの応援に出かけたときの写真や、ビデオに昭恵夫人の秘書が映っている。つまり、昭恵夫人が選挙応援に行くときは、常に夫人付きの秘書が同行しているようだ。秘書は公費で雇われており、公務員である。公務員が特定政党の選挙応援を行う昭恵夫人に職務として随行することは、国家公務員法違反にあたるはずである。
この問題を参院決算行政委員会で問いただした福島瑞穂議員に対し、土生栄二内閣審議官は「政府としては確認できないし、お答えできる立場でもない」「総理夫人の私的な活動や政治的活動をサポートしているわけではなく、公務遂行補助のための活動にかんする連絡調整の必要性から職員は同行している」と答弁している。
選挙応援をしている昭恵夫人のそばに立って行なう、「公務遂行補助のための活動にかんする連絡調整」とはいったいどういうものなのだろう。想像がつかない。
この問題で忘れてならないのは、公務員が、休日に、共産党の機関紙やビラを配ったことが国家公務員法に違反するとして有罪になっていることである。首相夫人であれば、あるいは、自民党の機関紙やビラであれば問題ないということなのだろうか。
以下は、森友学園問題に関する現政権の対応について述べる。森友学園は、日本会議に関係する人たちが応援していることがはっきりした。日本会議国会議員懇談会の会長である平沼赳夫議員は森友学園のホームページに、小学校開設を応援するという、つぎのようなメッセージを載せている。
籠池先生頑張れ。
小学校の教育、これは本当に大切です。幼児教育で大変な事績を挙げられた塚本幼稚園の籠池先生が、此度小学校を建設されることになり、日本にとってこれ程の朗報はありません。
大成功を衷心よりお祈り申し上げます。
また、大阪府は森友学園の小学校の設置認可の手続きについて担当職員から聞き取り調査を行ったところ「2013年の夏ごろ自民党の平沼赳夫議員側から問い合わせがあった」と説明した。平沼議員側から「籠池理事長への府の対応が悪い」とのクレームが入ったとのこと。
安倍首相は2月17日の国会答弁で、籠池理事長について「いわば私の考え方に非常に共鳴している方」と肯定的に評価し、「妻が名誉校長になっていることについては承知している。妻から森友学園の先生の教育に対する熱意はすばらしいという話は聞いている。妻が認可あるいは国有地払い下げに関する、もちろん事務所も含めて一切かかわっていないということは、明確にさせていただきたい。もしかかわっていたのであれば、私は総理大臣も国会議員も辞めるということをはっきりと申し上げたい」と述べた。ところがその関係を示唆するいろいろな事実が明らかになってきた後の安倍首相や政権側の対応は以下の通りである。
● 安倍首相の籠池氏対する評価が一変する。「学校がやってることの詳細はまったく承知していない」「この方は簡単に引き下がらない人」「非常にしつこい」と述べ、昭恵夫人が名誉校長になったのも、無理やりであったかのように話している。
● 塚本幼稚園は園児に教育勅語を暗唱させていることで有名な幼稚園であった。運動会の選手宣誓では、幼稚園児に「安倍首相がんばれ! 安倍首相がんばれ!安保法制、国会通過、よかったです!」と言わせている。その幼稚園に昭恵夫人が見学に行き、感動し、講演をしている。その園長が新しく作る瑞穂の國記念小学院の名誉校長になり、パンフレットに「瑞穂の國記念小學院は、優れた道徳教育を基として、日本人としての誇りを持つ、芯の通った子どもを育てます」と挨拶文を掲載している。ところが、安倍首相は、いきなり、名誉校長を辞めさせた。何も後ろめたいことがなければ辞めさせる必要などないのだが。
● 籠池理事長から、瑞穂の國記念小学院の名称を安倍晋三記念小学校にしたいという申し入れがあったことについて、昭恵夫人は、名誉校長就任の記念講演においてつぎのように述べている。
「こちらの教育方針は大変主人もすばらしいという風に思っていて、(学園理事長の籠池泰典)先生からは、安倍晋三記念小学校という名前にしたいという風に当初は言っていただいていたんですけれども、主人が、総理大臣というのはいつもいつもいいわけではなくて、時には、批判にさらされる時もある」「もし名前をつけていただけるのであれば、総理大臣を辞めてからにしていただきたいということで……」
● 参院予算委員会の大阪視察で「安倍晋三首相から昭恵夫人を通じて100万円の寄付を受けた」と語った籠池氏の証言に対し、それまで、参考人招致さえ拒んできた自民党は、即座に「首相に対する侮辱だ」という理由で、一転、籠池氏の証人喚問に応じる。ところが、当事者のもう一方である昭恵夫人の証人喚問には頑として応じない。また、パソコンのデータも含めて「すべての記録資料は廃棄した」と、徹底的に関連資料隠しをしている佐川財務局長などの官僚の証人喚問にも応じない。
裁判において、一方の当事者が出廷して自分の主張をしない場合、出廷した側の主張が採用される。したがって、この場合、籠池氏の述べたことを採用し、安倍首相が森友学園に100万円を寄付したことは法的に事実となる。
● 昭恵夫人付きの秘書(何と、私人であると閣議決定した人に、公費で5人もの秘書を付けている)が、昭恵夫人に代わって、籠池氏の要望を財務省に問い合わせ、その回答を籠池氏に対して行なったFAXの存在が明らかになった。結果として、籠池氏の要望通りになった。そのFAXには「なお、本件は昭恵夫人にもすでにご報告させていただいております」ともある。これで、どうして「妻が認可あるいは国有地払い下げに関する、もちろん事務所も含めて一切かかわっていない」などと言えるのだろう。
● 100万円の授受や、FAXの件について、昭恵夫人はインターネットのフェイスブックで否定の回答をしている。籠池氏は、嘘をつけば処罰されるという証人喚問でそのことを証言しているのに対し、昭恵夫人は嘘をついても処罰されないフェイスブックでその証言を否定している。こういうことを日本語では不公平という。
関係する官僚たちも同じ。官僚たちはいままでの安倍内閣のやり方を見て学習している。安倍内閣のもとでは、安倍首相のための嘘であればけっして咎められず、降格や罷免もない、むしろ出世する可能性のほうが高いということを。
● 稲田朋美防衛大臣は、森友学園に対し、防衛大臣名で「感謝状」を贈呈している。以前、森友学園の顧問弁護士をしていたとう話が「保守の会」という団体の会長から出た。「保守の会」は籠池氏を高く評価している。稲田防衛相は、これまでの国会答弁で「籠池夫妻から何らかの法律相談を受けたことはない」「裁判を行ったこともない」などと繰り返してきた。顧問弁護士であったのは彼女の夫だとのこと。
ところが、稲田氏が2004年12月、籠池氏が理事を務めていた森友学園が起こした民事訴訟の第1回口頭弁論に、原告側代理人弁護士として出廷したことを示す裁判所作成記録があることが分かった。これに対し、稲田防衛相は「虚偽の答弁をしたという認識はない」「私の記憶にもとづいた答弁」だと説明した。
もし、このような論理が通るなら、この世に「虚偽の答弁」というものはなくなってしまう。嘘をついておいて、バレたら「虚偽の答弁をしたという認識はない。私の記憶にもとづいた答弁をしたまでだ」と言えばよいことになってしまう。
菅官房長官は、「稲田氏の個人的な活動に関することで、適切に説明されると思う」とし、職務の続行は「全く問題ない」と述べ、辞任の必要はないとの認識を示している。
もうすぐ共謀罪に関する法案が強行採決される。それを手にした彼らは何をし始めるのだろう。いまでも法律など気にせず、やりたい放題であるのに、恐ろしいことだ。
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