1、吉村知事の失敗
またしても間違った健康情報に踊らされたバカが、わんさか買い占めに走って店頭から商品がなくなった、とニュースになった。毎回こういった事態が発生するたびに「バカは死ななきゃ治らない」って本当なんだな、と実感しているわけだが、今回は、その発信元が大阪府知事という「影響力の大きい人」だったから、問題になってしまった。そもそも吉村知事はコロナの抑止対策で人気が出た「時の人」である。その人が定例会見で「これは凄い!」と推奨したもんだから、普段から知事を崇拝している市民が、こぞって「コロナに効く」と勘違いして大騒ぎとなったわけだ。話を真に受けた市民が大勢いたからと言って、それで市民を糾弾するのは少々酷である。少し冷静になって今日の「修正会見」を観察したら、吉村知事は、功を焦って勇み足発言してしまったことを「何とか誤魔化そう」と必死に言い訳しているように見える。結局彼は、「ああ、やっちゃった」なわけね。
吉村知事と言えば、国の手ぬるい対策に比べ、庶民の側に立った政策を思い切って押し出して、一時はヒーロー的人気を博していた若き政治家だった。が、ここへ来て感染者急増がとどまるところを知らない状況で、いままでの、悪をやっつけるヒーロー像が「崩れて」きている、と危機感をつのらせていたに違いない。そこに都合が良いタイミングで、ポピドンヨードが出てきたという訳である。吉村知事が最初にこの研究結果を見つけたのかどうかはハッキリしていないが、発表の端々からは「自分の手柄だ!」と意気揚々だったことは分かる。彼の考えでは、これを発表したら「さすがぁ〜っ」と喝采を浴びること間違いなしと思っていたら、逆にあちこちから疑問や批判が噴出してしまったので、正直困惑しているのだと思う。今日「訂正」会見を行って事態収拾に走ったのは、早いとこ「なかったことにしないと大変なことになる」と火消しに大わらわだったのが、画面の表情からも見て取れるのだ。吉村知事の言うことには、ポピドンヨードが「コロナの予防に役立つとは言っていない」と内容を有耶無耶にして、なんとか乗り切ったと思っているみたいだが後の祭りで、彼の若きリーダーのイメージが「ガタ落ち」したのは間違いない。
では、彼の発表内容のどこが問題なのか、詳細を考えてみよう
a. まずポピドンヨードは、「唾液内のウィルス量を減らす」効果があるという
研究者によると41人の陽性者を対象にした治験の結果、ポピドンヨードでうがいしたグループでは、その唾液に含まれるウィルス量が減って、結果として回復傾向が促進された、と言っている。つまり、軽症者に対しては「早く治る」可能性がある、ということのようだ。ホントかなぁ・・・。
これは単純に、唾液に出てきたウィルスが「うがい」で流された結果、見た目に減っているだけじゃないの、って思ってしまう。正確に調べるのなら唾液じゃなく、体内にあるウィルスの量が「ポピドンヨードでうがいする」と有意に減少した、となって初めて「効果がある」と言えるわけだ。でも「うがいする」だけで肺の中にあるウィルスが減るとは思えないから、結局「何が言いたいの?」という話になってしまう。この研究の新しいところはコロナが治るのではなく、唾液の中に出てくるのを減らす「拡散防止効果」という切り口にあるようだ。この研究結果に飛びついた吉村知事は、「感染拡大の抑止効果がある」と大々的に発表した。
これは理屈で考えても「当たり前」のことで、何もポピドンヨードでなくても「水でも」効果は出るだろう、とすぐさま反論された。何しろ「うがい」するのだから、放って置いてもウィルス量は「うがいしない人より」減るわけだ。もしポピドンヨードの効果を証明するのであれば正しくは、「水」でうがいをしていた人と「ポピドンヨード」でうがいをしていた人とで、どちらが「ウィルスを拡散しないか」という実験をしなくてはならない。だが人によって違う体内のウィルス量を正確に量らないと、それで唾液中に出てくる量が「ポピドンヨードで減った」と言うことにはならないのではないだろうか。
もし体内にあるウィルス量そのものが減ると言うなら、これは「ノーベル賞レベルの大発見」であり、吉村知事などが出る幕では全然無い。つまり、どっちにしても「大した研究ではない」と言える。
2、何が言いたかったのか?
一般市民が政治家に期待することはただ一つ、「コロナに罹らない予防方法」ではないだろうか。もし感染してしまったら、その後は医療の仕事に任されるわけで、市民は感染した人のことなど「知ったことじゃあ、無い」のである。それが証拠に、世の中では今も「感染者叩き」が止まらない。もし、あなたが万が一コロナに感染したりしたら、その瞬間からそこらじゅうに罵詈雑言が飛んできて、悪意あるバッシングが投げつけられるのは必定だ。これが今のコロナという感染症に対する「市民感情の真実」である。だから皆んな、感染しない方法が知りたいのだ。ところが今回の研究の成果というのは、ポピドンヨードは陽性患者が「他人に伝染さない」ことに効果がある、と言っているのだから、まるで市民感覚からすれば「何ゆうとんねん!」である。
唾液に含まれるウィルスの量が減るというのだから、もともとウィルスを持っていない人=陰性の人には、何の効果もないのは自明のことである。研究者は、唾液に含まれる量が減ればその分免疫力で撃退しなければいけないウィルスの量も少なくて済み、結果として感染リスクも減る、という考えのようだ。だが、それがポピドンヨードの明確な予防効果につながるかどうかは、より慎重な比較検証が必要であろう。今回の研究を見るとそれほどの正確な実験を経て答えを出しているとは言えないようだから、良く言って「時期尚早」というのが医学界の真っ当な判断である。吉村知事は専門家に意見を聞かなかったのだろうか?
この一件で吉村知事は、専門家の意見をちゃんと聞いていない「素人」なんだ、とバレてしまった。所詮、ただの政治家に「感染症を根本から治すアイディア」なんか生まれて来る、などと期待する方がおかしい。もし多少とも「うがい」が予防に役立つのであれば、そういう神経質な人は当然「マスクも手洗いもソーシャル・ディスタンスも気を付けている」わけだから、その上でハッキリと効果を主張するのは容易ではない。つまり、今までの予防習慣ではコロナを防ぐことは出来ず、ポピドンヨードでなくては「完全に予防することは出来ない」位の、明確な医学的効果が立証できなくてはならない。それは多少とも医学のことが分かった人なら、実は「大変なこと」であることは知っているはずである。それが吉村知事が大々的に発表しちゃったので、それを聞かされた研究者も「ビビる」よねぇ。
c. 一般人が勘違いすると知っていて、わざと吉村知事は発表したのか?
吉村知事が、そこまで腹黒いとは私も考えてはいない。ただ、素人考えで「すげぇー発見だ!」と舞い上がってしまい、慌てて発表したら「早とちりだった」と頭を抱えている、というところではないだろうか。研究者の言っていることが仮に正しいとしても、陰性者がほとんどの一般人に発表するのは「大して意味がない」。それは内容から言っても分かることだと思う。一般人の大半は陰性なのだから、もともと唾液の中にウィルスを持っていない。むしろヨードを多用することで、自然に備わっている唾液の免疫力が「落ちてしまう」ことの方が、危惧される位である。
吉村知事は「無症状の無自覚感染者」がポピドンヨードを使用してうがいをすることによって、知らないうちに他の人に感染させることを防止できる、という効果を強調していた。そういう意味でなら、むしろ「うがい」を推奨する程度の一般的な話で発表すれば良かったのではないだろうか。数年前にコロナとは関係ないが、ポピドンヨードの「うがい効果」を検証した実験が行われて、「水」のほうが良いという結果が得られたことも、医学者の間では周知の事実である。それに研究者はポピドンヨードが「ウィルスを直接殺す」とは言ってないので、この発表については「全体的に、あいまい」とも言える。現時点では医学的には、ウィルスを侵入させない予防効果も、感染した後のウィルス拡散を抑制する効果も、何れもまだ「発表する段階にはない」と言えるようだ。つまり平たく言えば「民間療法」のレベルである。それを公人たる大阪府知事が公式の会見で推奨した、というのは、基本的には「権限の大きな逸脱」だと言えるであろう。
そもそも陰性の人が、ポピドンヨードでうがいすることによる「コロナの予防効果」は、研究者の言っている理屈から言っても「全然ない」のである(買い占めに走った人のほとんどは、その予防効果を信じて行動している)。結局、大慌てて薬局に駆けつけた人達は、吉村知事に乗せられ踊らされた「無知な怖がりバカ」と言うことになるのだろうか。
もし本当にコロナ重症化を阻止したいのであれば、まず入院している患者に直に接している「医療関係者」にこそ、関係部署を通じてアナウンスするべきである。これをしなかった所に吉村知事の「手柄を独り占めしたがる傾向」が見えた、と言えないだろうか。良く言えば、ポピュリストの面目躍如である。
穿った見方をすればだが、一般に向けて発表するのは「まだ早いかな」と一瞬躊躇したであろうが、 最近落ち気味の人気を「挽回しよう」という裏の誘惑には勝てずに、発表してしまったというのが真実だろう。ポピドンヨードで「うがい」しても「ウィルス量が減るだけ」なので、コロナが治るわけでは全然ない。唾液に含まれるウィルス量が減ったということが即、コロナの病状の改善につながるとは言えないことは、吉村知事も理解はしてはいたようだ。
第一、体外に排出されるウィルスの量は「発症前が最大」だから、ポピドンヨードが効果があったかどうかは「検証しようがない」と言える。そうであるなら例え研究が間違っていたとしても、自分に批判が跳ね返ってくることはない「安全なパフォーマンス」だと計算して、発表に踏み切ったとも考えられる。つまり、「リスク・マネジメント」である。今日の釈明会見で、吉村知事は、PCR検査をしていない「無症状の市中感染者や陽性予備軍」の一般人が、検査して陽性と判明する「前に」うがいすることによって、ウィルスをバラ撒く確率が減る、という意図だと弁解していた。これはそれなりに筋が通っているみたいに聞こえるが、私には「苦しい言い訳」にしか聞こえない。やはりパフォーマンスが裏目に出たみたいと言うのは、本人も「うっすらと」気付いているのかも知れない。
結論:この話は、なかったことにしてしよう
このところの感染者急増に対して「有効な対策を思いつかない吉村知事」には、政治家としても相当な「焦り」があったのに相違ない。若くして一躍「時代のヒーロー」に躍り出た彼が、徐々に沈下していく自身の存在感を「一発逆転したい」と思ったのも無理からぬところがあっただろう。しかしその目論見はあっけなく頓挫して、逆に集中批判を浴びることになった。これは吉村知事のマイナスポイントである。こうなると彼の「他の対策」も、批判の対象にされてくる。例えば、ミナミ地区の飲食店への自粛要請などは、「何故ミナミだけ?」という批判が出始めている。大阪での彼の評判が今までは上々なだけに、ここが吉村知事の「正念場」だろう。
吉村知事は今回の失敗を心に深く刻みつけ、知事本来の仕事としての「優秀な部下」を使いこなしていくという「組織トップの王道」に立ち返り、地道に精進してじっくり成長して行ってほしいものである。まあ今回の例で言うならば、1回だけなら「勇み足」で許されるであろう。彼の心からの反省を期待したい。
またしても間違った健康情報に踊らされたバカが、わんさか買い占めに走って店頭から商品がなくなった、とニュースになった。毎回こういった事態が発生するたびに「バカは死ななきゃ治らない」って本当なんだな、と実感しているわけだが、今回は、その発信元が大阪府知事という「影響力の大きい人」だったから、問題になってしまった。そもそも吉村知事はコロナの抑止対策で人気が出た「時の人」である。その人が定例会見で「これは凄い!」と推奨したもんだから、普段から知事を崇拝している市民が、こぞって「コロナに効く」と勘違いして大騒ぎとなったわけだ。話を真に受けた市民が大勢いたからと言って、それで市民を糾弾するのは少々酷である。少し冷静になって今日の「修正会見」を観察したら、吉村知事は、功を焦って勇み足発言してしまったことを「何とか誤魔化そう」と必死に言い訳しているように見える。結局彼は、「ああ、やっちゃった」なわけね。
吉村知事と言えば、国の手ぬるい対策に比べ、庶民の側に立った政策を思い切って押し出して、一時はヒーロー的人気を博していた若き政治家だった。が、ここへ来て感染者急増がとどまるところを知らない状況で、いままでの、悪をやっつけるヒーロー像が「崩れて」きている、と危機感をつのらせていたに違いない。そこに都合が良いタイミングで、ポピドンヨードが出てきたという訳である。吉村知事が最初にこの研究結果を見つけたのかどうかはハッキリしていないが、発表の端々からは「自分の手柄だ!」と意気揚々だったことは分かる。彼の考えでは、これを発表したら「さすがぁ〜っ」と喝采を浴びること間違いなしと思っていたら、逆にあちこちから疑問や批判が噴出してしまったので、正直困惑しているのだと思う。今日「訂正」会見を行って事態収拾に走ったのは、早いとこ「なかったことにしないと大変なことになる」と火消しに大わらわだったのが、画面の表情からも見て取れるのだ。吉村知事の言うことには、ポピドンヨードが「コロナの予防に役立つとは言っていない」と内容を有耶無耶にして、なんとか乗り切ったと思っているみたいだが後の祭りで、彼の若きリーダーのイメージが「ガタ落ち」したのは間違いない。
では、彼の発表内容のどこが問題なのか、詳細を考えてみよう
a. まずポピドンヨードは、「唾液内のウィルス量を減らす」効果があるという
研究者によると41人の陽性者を対象にした治験の結果、ポピドンヨードでうがいしたグループでは、その唾液に含まれるウィルス量が減って、結果として回復傾向が促進された、と言っている。つまり、軽症者に対しては「早く治る」可能性がある、ということのようだ。ホントかなぁ・・・。
これは単純に、唾液に出てきたウィルスが「うがい」で流された結果、見た目に減っているだけじゃないの、って思ってしまう。正確に調べるのなら唾液じゃなく、体内にあるウィルスの量が「ポピドンヨードでうがいする」と有意に減少した、となって初めて「効果がある」と言えるわけだ。でも「うがいする」だけで肺の中にあるウィルスが減るとは思えないから、結局「何が言いたいの?」という話になってしまう。この研究の新しいところはコロナが治るのではなく、唾液の中に出てくるのを減らす「拡散防止効果」という切り口にあるようだ。この研究結果に飛びついた吉村知事は、「感染拡大の抑止効果がある」と大々的に発表した。
これは理屈で考えても「当たり前」のことで、何もポピドンヨードでなくても「水でも」効果は出るだろう、とすぐさま反論された。何しろ「うがい」するのだから、放って置いてもウィルス量は「うがいしない人より」減るわけだ。もしポピドンヨードの効果を証明するのであれば正しくは、「水」でうがいをしていた人と「ポピドンヨード」でうがいをしていた人とで、どちらが「ウィルスを拡散しないか」という実験をしなくてはならない。だが人によって違う体内のウィルス量を正確に量らないと、それで唾液中に出てくる量が「ポピドンヨードで減った」と言うことにはならないのではないだろうか。
もし体内にあるウィルス量そのものが減ると言うなら、これは「ノーベル賞レベルの大発見」であり、吉村知事などが出る幕では全然無い。つまり、どっちにしても「大した研究ではない」と言える。
2、何が言いたかったのか?
一般市民が政治家に期待することはただ一つ、「コロナに罹らない予防方法」ではないだろうか。もし感染してしまったら、その後は医療の仕事に任されるわけで、市民は感染した人のことなど「知ったことじゃあ、無い」のである。それが証拠に、世の中では今も「感染者叩き」が止まらない。もし、あなたが万が一コロナに感染したりしたら、その瞬間からそこらじゅうに罵詈雑言が飛んできて、悪意あるバッシングが投げつけられるのは必定だ。これが今のコロナという感染症に対する「市民感情の真実」である。だから皆んな、感染しない方法が知りたいのだ。ところが今回の研究の成果というのは、ポピドンヨードは陽性患者が「他人に伝染さない」ことに効果がある、と言っているのだから、まるで市民感覚からすれば「何ゆうとんねん!」である。
唾液に含まれるウィルスの量が減るというのだから、もともとウィルスを持っていない人=陰性の人には、何の効果もないのは自明のことである。研究者は、唾液に含まれる量が減ればその分免疫力で撃退しなければいけないウィルスの量も少なくて済み、結果として感染リスクも減る、という考えのようだ。だが、それがポピドンヨードの明確な予防効果につながるかどうかは、より慎重な比較検証が必要であろう。今回の研究を見るとそれほどの正確な実験を経て答えを出しているとは言えないようだから、良く言って「時期尚早」というのが医学界の真っ当な判断である。吉村知事は専門家に意見を聞かなかったのだろうか?
この一件で吉村知事は、専門家の意見をちゃんと聞いていない「素人」なんだ、とバレてしまった。所詮、ただの政治家に「感染症を根本から治すアイディア」なんか生まれて来る、などと期待する方がおかしい。もし多少とも「うがい」が予防に役立つのであれば、そういう神経質な人は当然「マスクも手洗いもソーシャル・ディスタンスも気を付けている」わけだから、その上でハッキリと効果を主張するのは容易ではない。つまり、今までの予防習慣ではコロナを防ぐことは出来ず、ポピドンヨードでなくては「完全に予防することは出来ない」位の、明確な医学的効果が立証できなくてはならない。それは多少とも医学のことが分かった人なら、実は「大変なこと」であることは知っているはずである。それが吉村知事が大々的に発表しちゃったので、それを聞かされた研究者も「ビビる」よねぇ。
c. 一般人が勘違いすると知っていて、わざと吉村知事は発表したのか?
吉村知事が、そこまで腹黒いとは私も考えてはいない。ただ、素人考えで「すげぇー発見だ!」と舞い上がってしまい、慌てて発表したら「早とちりだった」と頭を抱えている、というところではないだろうか。研究者の言っていることが仮に正しいとしても、陰性者がほとんどの一般人に発表するのは「大して意味がない」。それは内容から言っても分かることだと思う。一般人の大半は陰性なのだから、もともと唾液の中にウィルスを持っていない。むしろヨードを多用することで、自然に備わっている唾液の免疫力が「落ちてしまう」ことの方が、危惧される位である。
吉村知事は「無症状の無自覚感染者」がポピドンヨードを使用してうがいをすることによって、知らないうちに他の人に感染させることを防止できる、という効果を強調していた。そういう意味でなら、むしろ「うがい」を推奨する程度の一般的な話で発表すれば良かったのではないだろうか。数年前にコロナとは関係ないが、ポピドンヨードの「うがい効果」を検証した実験が行われて、「水」のほうが良いという結果が得られたことも、医学者の間では周知の事実である。それに研究者はポピドンヨードが「ウィルスを直接殺す」とは言ってないので、この発表については「全体的に、あいまい」とも言える。現時点では医学的には、ウィルスを侵入させない予防効果も、感染した後のウィルス拡散を抑制する効果も、何れもまだ「発表する段階にはない」と言えるようだ。つまり平たく言えば「民間療法」のレベルである。それを公人たる大阪府知事が公式の会見で推奨した、というのは、基本的には「権限の大きな逸脱」だと言えるであろう。
そもそも陰性の人が、ポピドンヨードでうがいすることによる「コロナの予防効果」は、研究者の言っている理屈から言っても「全然ない」のである(買い占めに走った人のほとんどは、その予防効果を信じて行動している)。結局、大慌てて薬局に駆けつけた人達は、吉村知事に乗せられ踊らされた「無知な怖がりバカ」と言うことになるのだろうか。
もし本当にコロナ重症化を阻止したいのであれば、まず入院している患者に直に接している「医療関係者」にこそ、関係部署を通じてアナウンスするべきである。これをしなかった所に吉村知事の「手柄を独り占めしたがる傾向」が見えた、と言えないだろうか。良く言えば、ポピュリストの面目躍如である。
穿った見方をすればだが、一般に向けて発表するのは「まだ早いかな」と一瞬躊躇したであろうが、 最近落ち気味の人気を「挽回しよう」という裏の誘惑には勝てずに、発表してしまったというのが真実だろう。ポピドンヨードで「うがい」しても「ウィルス量が減るだけ」なので、コロナが治るわけでは全然ない。唾液に含まれるウィルス量が減ったということが即、コロナの病状の改善につながるとは言えないことは、吉村知事も理解はしてはいたようだ。
第一、体外に排出されるウィルスの量は「発症前が最大」だから、ポピドンヨードが効果があったかどうかは「検証しようがない」と言える。そうであるなら例え研究が間違っていたとしても、自分に批判が跳ね返ってくることはない「安全なパフォーマンス」だと計算して、発表に踏み切ったとも考えられる。つまり、「リスク・マネジメント」である。今日の釈明会見で、吉村知事は、PCR検査をしていない「無症状の市中感染者や陽性予備軍」の一般人が、検査して陽性と判明する「前に」うがいすることによって、ウィルスをバラ撒く確率が減る、という意図だと弁解していた。これはそれなりに筋が通っているみたいに聞こえるが、私には「苦しい言い訳」にしか聞こえない。やはりパフォーマンスが裏目に出たみたいと言うのは、本人も「うっすらと」気付いているのかも知れない。
結論:この話は、なかったことにしてしよう
このところの感染者急増に対して「有効な対策を思いつかない吉村知事」には、政治家としても相当な「焦り」があったのに相違ない。若くして一躍「時代のヒーロー」に躍り出た彼が、徐々に沈下していく自身の存在感を「一発逆転したい」と思ったのも無理からぬところがあっただろう。しかしその目論見はあっけなく頓挫して、逆に集中批判を浴びることになった。これは吉村知事のマイナスポイントである。こうなると彼の「他の対策」も、批判の対象にされてくる。例えば、ミナミ地区の飲食店への自粛要請などは、「何故ミナミだけ?」という批判が出始めている。大阪での彼の評判が今までは上々なだけに、ここが吉村知事の「正念場」だろう。
吉村知事は今回の失敗を心に深く刻みつけ、知事本来の仕事としての「優秀な部下」を使いこなしていくという「組織トップの王道」に立ち返り、地道に精進してじっくり成長して行ってほしいものである。まあ今回の例で言うならば、1回だけなら「勇み足」で許されるであろう。彼の心からの反省を期待したい。
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