あのとき
無限の未来が広がりをみせ
言葉のいらない時間が
確かにあったと 思うのだけれど
過ぎてみれば
ただの希望でしかなく
自己満足の時間を
過ごしただけなのだと
認めたくはない
自己愛の塊となって
傷つくことを恐れるあまり
確かめの時間を放棄して
それぞれの世界に回帰する
そうではない
そんなはずはない
あれは幻ではなかったのだと
呪文のようにひとり言しながら
何の手立てもないまま
跡形もなく崩れていくのを
見過ごしている時間の
恐ろしく怠惰な思いよ
完成形を見ることもなく
投げ出した
彫刻家の作品のごとく
無念だけが 空間に漂う