日本ほどiPhoneのシェアが高い国はない。当初は孫正義さんのソフトバンクによる独占販売が大成功。機種を新しくしても難しくない操作性やアップル、携帯電話会社の販売戦略があり、今でもそれは変わらない。iPhoneは電話機というよりも、SNS、動画や音楽を楽しむための端末。新製品の発表となれば、やはり日本での関心は高い。そのアップルが日本時間の14日未明、新製品「iPhone12」を発表した。ツイッターは実況に多くの関係者やファンが参加し盛り上がるという、いつもの「祭り」状態になった。期待通りの新製品、ではあるものの、残念な点、2点も、実は予想通りだった。■発表されたのは小型のminiからカメラ性能が充実したPro Maxまでの4種類。速報には「5G対応」の見出しが付けられたが、詳しく書けば「5G対応、でも日本版はミリ波非対応」。これが残念な1点目。5Gという言葉は浸透しつつあるけれど、5Gの電波は日本ではまだほとんど飛んでいないし、ミリ波をご存じの人は多くないはず。5Gの電波は、今4Gが使っている周波数帯に近い「sub6」と、それより高い周波数帯、「長波」「中波」「短波」などより波長が短い「ミリ波」の周波数帯を合わせて使うところに4Gをしのぐメリットがある。ミリ波は4Gに比べると高速で遅延も少ない。ただし、4Gの周波数帯より電波の届く範囲が狭かったり障害物の影響を受けやすくなったりするので、基地局を増やすなど新たな設備投資が必要だ。携帯電話会社は5Gにもっと力を入れたいところに、新型コロナウイルス、そして菅義偉首相の携帯電話料金を大幅に値下げしろという「提言」を突きつけられている。携帯電話料金は楽天モバイルの参入やMVNOなどで、現状でもかなり安くできるのだが、他の会社に転出する時に携帯電話番号を移す「番号ポータビリティー」(MNP)手数料の無料化などがようやく動き出したところで、「2年縛り」などで同じ会社と契約し続けてきた人に、その手続きのハードルはなかなか高い。ミリ波に対応して、ようやく5Gのメリットが最大級にもたらされるのだけれど、5Gは基地局も、そして端末もこれから。それでも端末の性能向上で5Gを今買うか、それとも5G自体の電波がまだまだ届かないし、ミリ波もこれからだから、ミリ波が進み、iPhoneも対応するまで現在の機種を使うか。迷うところだ。新製品の発表で、旧機種の値下げが進むだろうし、今春売り出したiPhoneSEの第2世代は、Androidより高めのiPhoneの中でも比較的安い。中古市場もにぎわうだろうから、「5Gは待ち」で、そちらを狙うという手もあるだろう。■もう1点の残念な点は、アップルの発表の中に、対応する携帯電話会社として、NTTドコモ、au、ソフトバンクはあったのに、楽天モバイルがなかったこと。1年間無料、米倉涼子さんのCMが流れている楽天モバイルは、iPhoneを発売していない。では、全く使えないかというと、「使えなくもないけれど、手間がかかる」のだ。楽天モバイルのホームページでは、動作保証外端末である点などが説明され、「誠に申し訳ありませんが、当社での対応が難しい状況です。ご利用はお客様ご自身の判断でお願いします」としている。つまり、自己責任。ドコモなど他の3社なら、ちょっと具合がおかしくても、近くのショップに行けば、とりあえず対応はしてくれるはず。でも、iPhoneを楽天モバイルのショップに持っていって「使えるようにしてください」は、できない。今後使えるようになるのか、アップルも楽天モバイルも明らかにしていないが、iPhone12発表後のツイッターを見てみても、迷っている人がかなりいるようだ。楽天モバイルでもiPhoneが公式に使えるようになり、4社の価格競争を進めた方が、結果として携帯料金の値下げにつながるような気もするけれど、どうだろう。いずれにしたって、値下げはしてほしい。でも、値下げの結果、災害時に携帯が使えない、というのはもっと困る。普段の生活でスマホに頼り切っているのだから。基地局をより頑丈にする、停電時のバッテリーを増やすなど、盤石なインフラ整備に影響しないといいけれど。※引用しました!