信友直子さんの「ぼけますから、よろしくお願いします。〜おかえりお母さん〜(新潮社)」を読了しました。これは、ドキュメンタリー作家の信友直子さんが、アルツハイマー病を患った母と、彼女を献身的に支える父の老々介護生活を、監督としてカメラに収めた同名の映画を発表後に、新たに書籍として発行した本です。
実はボク、数年前にこの映画の上映会が長岡で開催される予定だった時に、チケットを買って見にいく気満々だったのですよ。映画の内容に関心があったのはもちろん、「自分の親の認知症を映像に収めて一般に公開する」っていう信友さんの勇気や決断にも興味があったのです。
ところが、その頃は全国的に「コロナ禍」真っ只中。アオーレ長岡で開催される予定だったその上映会は、中止になったのでした。なので映画の方はボクはまだ見ていません。映画よりも先に書籍の方を読んだというわけです。
母が認知症診断を受けて4年半、95歳から始めた父の家事が日々上達していく一方、母の認知症はさらに進行し、ついに脳梗塞を発症して入院生活が始まる。サービス利用が始まってほっとしたのも束の間、東京で働く著者に広島で暮らす父から電話が。「おっ母がおかしい」。救急搬送され、そのまま脳梗塞で入院した妻に、98歳になった父は変わらぬ愛情を注ぐが……。遠距離介護を続ける娘が時に戸惑い、時に胸を打たれながら見届けた夫婦の絆。
まぁこんな感じの内容で、実際に信友家で起きた事実や著者が感じたことを、赤裸々に綴ったのがこの本です。
第1章 母の異変
第2章 認知症と向き合う
第3章 我が家に介護サービスがやって来た!
第4章 家族にしかできないこと
第5章 介護は、親が命懸けでしてくれる最後の子育て
終章 父といつまでも
それぞれの章で、著者の思いや願い、葛藤、そして気持ちの中に湧いてくるブラックな感情も含めて書かれており、「こんなに正直に書いて良いの?」と心配になるほどでした。でも、だからこそ共感できるのでしょうね。ブラックな気持ちもぶっちゃけているけど、親に対する深い愛情と信頼も感じました。
それにしても、父親(夫)の献身的で愛に満ちた言動には、大きく心を揺さぶられました。家事を全くしなかった93歳の耳の不自由な父親が、一つ一つの家事を覚え妻に寄り添う姿を読み、夫の完成形(男としての理想的な生き方)を見た気がしました。すごいな。はたして自分にはできるだろうか?…と、やや不安になりました。
「こりゃぁ、やっぱり映画の方も見ておきたいな…」と思いました。