阿部暁子さんの「カラフル」(集英社)を読了しました。数か月前に新潟日報の書評に紹介されていた本を図書館に予約し、ようやく順番が回ってきた本でした。だけど順番が回ってきた頃には、書評に書かれていた内容やどこに惹かれたのかはすっかり忘れているという、いつものボクのパターンでした。
この小説のあらすじは、こんな感じです。
高校入学式の朝、駅のホームでひったくり犯を捕まえた荒谷伊澄は、犯人を足止めしようとした車いすユーザーの少女、渡辺六花(りっか)と出会う。伊澄と同じ高校の新入生で、弁が立ち気の強い六花に、伊澄はヤな女だな、と感じて...?夢を追い続けられなくなった少年と少女の再生と恋の物語。
…とまぁこんな感じ。高校生が主人公のガチガチの青春小説であり、恋愛小説。還暦を超えたジジイのボクは、遥か半世紀前の自身の高校1年生の頃を思い出しながら(ボクは男子クラスだったけどね)、読み進めましたよ。だけど、小説はいいですね。66歳のボクも、小説を読みながら想像の世界では16歳になれるんですからね。正直に言います。面白かったです。夢中になりました。一気に読んじゃいましたよ。あぁ!青春だ!カルピスだ!初恋の味!
この物語は、病気が原因で車椅子ユーザーとなった渡辺六花(りっか)と高校の入学式の登校の時に出会った荒谷伊澄(いずみ)の2人を中心とした青春小説です。高校生の学校生活に車椅子の生徒が混ざることによって起きる様々な出来事、戸惑いながらも真剣に向き合おうとする仲間たちの姿が、心地よく描かれています。何かよかったねぇ。みんな!頑張れ!って言いたくなりましたよ。
本文の中のいろいろな言葉も、ボクの心に残りました。そして心地よい読後感へと誘ってくれました。「神様は扉を閉める時、別のどこかで窓を開けてくださる」良い言葉ですね。ボクが中学生の時に、高校生だった姉が「サウンド・オブ・ミュージック」の映画を見て感動し、サントラ盤レコードをよく聴いていたのを思い出しました。その中の言葉だったそうです。うんうん、思い出してきた。
そうそう。本の題名の「カラフル」ですが、小説の中にこんな表現がありました。
この世界はカラフルだ。気が遠くなるほど色んな人がいて、誰もがそれぞれの事情と思惑を抱えて生きている。同じものはひとつとしてない。その中で自分と似た色を見つけて安心することも、まるで違う色に惹かれることもある。どこまでいっても交わることのない違いに孤独になることも、傷つくことも、違うということを認められず攻撃し合い、ぐちゃぐちゃの暗黒の色をあたりに塗りつけてしまうことも。
いろんな色が混じり合ったこの世界を生きていくには、一生懸命に考えて、話し合って、相手のことを考えて、でも自分の気持も大切にしていくことが大切なんだよな。「あぁ!もう一度16歳に戻って、人生をやり直したい!」って一瞬思いましたが、やっぱり面倒くさいな。残りの今の人生を、ジジイなりに精一杯生きようと思いました。