県立近代美術館(長岡市千秋)で行われた映画会で、映画「目の見えない白鳥さん、アートを見にいく」を観てきました。
この映画は、全盲の美術鑑賞者・白鳥建二さんと友人たちのアート作品をめぐる旅と日常を追ったドキュメンタリー映画です。「え〜っ?目の見えない方が『アートを見る』ってどういうこと?」というボク自身の単純な知的好奇心と、「ドキュメンタリー映画って独特の世界観があり、劇場映画とは違う面白さがあるよなぁ」という期待感、それに「タダで映画が見られる」っていうお得感の合わさった気持ちから参加を申しこみ、見に行きました。
恋人とのデートで初めて美術館を訪れた白鳥さんは、作品を前に語られる言葉を聞きながら「全盲でもアートを見ることはできるのかもしれない」と考えたそうです。それ以来さまざまな美術館へ通い始めた彼は、「自由な会話を使ったアート鑑賞」という独自の方法でアートを楽しむようになりました。そんな白鳥さんの20年間を振り返り、友人たちや美術館で働く人々、新たに出会った人々と紡ぎ出す豊かな会話を記録していった、ノンフィクション書籍「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」を基にした映画がこの作品です。
白鳥さんの日常生活を映像で追ったこのドキュメンタリーには、訥々した彼自身や彼の周りの人達が語る言葉や、実際に美術館でアートを鑑賞する様子など(新潟県の「大地の芸術祭」を訪れた映像も)から、ボクら映画を見ている者の心の琴線に響く言葉も多くありました。
ボク自身が一番心に残ったのは、インタビュアーから「(目が見えない状況下でのさまざまな取組は)とても時間のかかることですね?」と問われたことに答えた白鳥さんの言葉です。それは「逆にね、時間さえかければ大概のことはできるんですよ」という言葉。ついつい「タイパ」などと言って、時間的な効率を優先してしまうボクらの生き方や価値観を、大いに反省させられました。
映画の原作となった書籍「目の見えない白鳥さん、アートを見にいく」も読んでみたいなぁ…と思い、図書館に予約をしました。
なんか、ボクもね。「のんびりと何も考えずに美術館で過ごす時間」っていうのが、日常生活の中にあってもいいかなぁ…と思い始めました。