演劇知

劇的考察譚

映画「コーダあいのうた」考察

2022-03-30 10:29:36 | Weblog
映画「コーダあいのうた」考察

「映画館ならでは」との前評判を聞き鑑賞。後半から涙がとめどなく溢れる。以下考察。内容に迫る箇所あり。

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タイトルはChildren of Deaf Adultsと音楽用語で「楽曲において独立してつくられた終結部分」という意味をもつ「coda」のダブルミーニング。主人公のルビーが聴覚障がい者一家から独立した健常者であることを意味する。

テーマは障がい者と健常者の狭間にいる主人公の自己同一性の確立。またヤングケアラーの苦悩もそれに付随する。

障がい者を可哀想な描写・神聖化した描写といった「高尚」なものにせず、下世話な描写や感情の醜い描写といった「下劣」な部分もしっかりと織り込んでいる。

台詞に頼らない「言葉」の放出…表情や身振り・手や息の破裂音で「言葉」を観客に伝える。

湖で飛び込むシーンについて、ルビーの本音を表せる場所として湖が選択されている。湖の対比としての海。海は仕事の場であり本音を出せる場ではない。

合唱を父親が聴くシーンで音がフェードアウトし、父親のフランクの「音のない世界」に入る。感動のシーンに没入させない手法はブレヒトに通ずるものがある。映画館ならではの演出。

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